デザートアチーブ4
砂丘をいくつも超えて、数時間行軍を行った。
機械の体は疲れ知らずと言われるが、意外とそんな事はない。
寒暖差が激しい砂漠なら尚更だ。
急激な冷却によりボディが軋み、燃料の燃焼効率が落ちる。
走っていたのは最初だけで、後は無駄にエネルギーを使わないように効率よく歩いていた。
ようやく基地の灯りが見えてくる。
はるか後方では、時折高射砲の音や何かの爆発音が時折聞こえている。
「見えてきましたよー!小さなお友達!……起きてますか?」
機械的な一定のリズムの歩行により、 はガミマルの上でうつらうつらと船を漕いでいた。
「んお……?起きてる……」
目をくしくしと擦り、大きな欠伸をひとつ。
そこまでしてもまだ眠いのか、真白な狼の耳が垂れている。
「宿舎につけばベッドに潜り込めるので!もうちょっとの我慢ですよー!」
その言葉に少し怒ったのか、ゴンゴン。とガミマルの頭を叩く。
「んー……起きてるってば……」
は少しむすっとしているようだ。
そんなやりとりをしているうちに、基地の入り口、宿直室で大きく手を振っている人物が見えてきた。
「おお!手を振ってくれてますよー!こちらも振り返してやりましょう!!」
金属の腕を大きく振る。大きな風切り音が鳴った。
はガミマルの頭の上で、頬杖をついている。 手を振るのも億劫なのか、代わりに白く立派な毛並みの尻尾をパタン、パタンと揺らしている。
「んー……うあー……」
また、ひとつ欠伸をしてから、大きく伸びをした。
宿直室の前まで来ると、恰幅の良い正規の軍服を着た男が2人ににこやかに出迎える。
「よお、ガミマル! 早い帰りだな、どうせまた何かをやらかしたんだろう!」
男は小銃を肩にかけ、双眼鏡を片手に腕組みをしていた。
近寄ってきて親しげにガミマルの肩をバシバシと叩くと上に乗っている に気づく。
「おっと、これはお嬢さん。見ない顔だな。ん?いや。あれ?俺が忘れてるだけか?」
そういいながら をジロジロと見る。
「んー……守衛のメイソン。知ってる……はず」
の取り出した所属のタグを見せると、メイソンは目を丸くする。
「はっはっは!人の顔を覚えるのも俺の仕事のはずなんだがな!悪かった!」
そう言ってからメイソンは宿直室へと入っていき、鍵をチャラチャラと鳴らしながら出てくる。
「おかえり!2人とも!とりあえず疲れを癒すといい!中佐には明日の昼にでも会いに行け! 帰還記録は明日の朝にしておくからな!」
基地の正面玄関と言うには頼りなさすぎるフェンスが横に滑っていく。
「ありがとうございます!では、お言葉に甘えますよー!」
「ん……助かる」
1機と1人はメイソンに礼を言い、宿舎へと向かうのだった。