デザートアチーブ2
トーチカ、トーチカである。戦場における防御陣地。日影がある。
「日影がありますよー!!」
先程よりも倍のスピードで走る。トーチカの入り口を確認し、砂煙を巻き上げながらトーチカへと飛び込む。今は誰もいないようだ。
辺りを見渡すとジェリ缶が視覚センサーに飛び込んでくる。
「ふははー!水があります!冷却冷却!!」
ジェリ缶に入った水を自身にぶち撒ける。
途端に水蒸気が上がる。まるで焼けた石に水をかけたような状態。トーチカ内はさながら蒸しサウナである。
「これで一息つけますねえ!」
空になったジェリ缶を壁に放り投げる。大きな音を立てて壁に立てかけてあったスコップやら箒やらが崩れ落ちる。
ジェリ缶自体も床に落ち、少しヘコんだようだ。
「冷却水も補給しないと!!」
左の首元にあるキャップを外してからジェリ缶を逆さまに肩に抱える。
「ゴポンッゴポンッ」という音と共に水が機体内へと流れ込んでいく。
そのジェリ缶も放り投げ、壁に設置されている棚を漁る。
「それではオイル、オイルと」
後ろ手に不要な物を投げて棚を物色するが、お目当てのオイルは見つからない。
「ギュゥウン…」という何やらおちこんでいるようなモーター音が鳴る。
「……クソアンドロイドが」
後ろから声が聞こえた。そしてガチャリという銃弾が薬室に装填される音。
「おおっと……。これはお邪魔しましたー!」
振り返らずにトーチカの前面、射撃を行うスリットから外へ飛び出す。が、腰の辺りが引っかかる。
「ちなみにお伺いしますが、あなたの旗の色は何色ですかー!!」
つっかえた胴体を捩る。が、取れない。
「緑と赤だこのボケが! お前をバラバラにして燃料を絞り出した後にギッチギチのスクラップにしてやる!!」
「ああー!やはり敵さんでしたかー!!」
数点の部品をパージする。腰回りに少しの猶予ができ、すっぽ抜けるように機体が外に飛び出る、
と同時に銃声がトーチカ内で鳴り響く。
「どわあ!!あっっぶない所ですよ!!」
2、3回ほど転がってから体勢を整えて走り始める。
後ろを振り返ると敵側の乾燥地帯用迷彩服を着た敵の姿をセンサーに捉える。
「ふふは!勝負を挑もうと!?それは無謀というものですよー!本機の方が!!」
丸腰である。無駄な消耗を避けるため、全ての武装を数キロ後方の砂漠に捨ててきた。
「では、本機と追いかけっこと洒落込みましょうか!」