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1. 人間にツノは生えていたか

ゴールデンウィーク終わったってデマに決まってる

1.




 起きろ、と誰かに呼ばれた気がした。だが残念なことに、その要望に応えてやることはできない。俺はもう死んでいるのだ……いや、特段残念でもなかった。俺はあの時できる最善をして守りたいものを守り切り、破滅に追いやりたかったものを殲滅した。自分、という犠牲を払いはしたが。

 けれど、おかしなことに意識が浮上していくのを感じる。あまりの気持ち悪さに思わずやめろ、と言ってしまった。


「……は?」


言ってしまった、だと?なんで、死んだのに声が出る。いや、声が出たということを認識していることがそもそもおかしい。

 一度そう思ってしまうと、俺の世界は一気に形を確かにしていった。続いて開いたのは視覚。嗅覚。触覚……。

 


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ┈┈





「………………」




あまりの混乱に1度意識を失っていたようだ。気持ち悪さを堪えてゆっくりと全ての感覚を確かめる。

目に飛び込んだ夜の空を塞ぐ高い木々と、新緑の青い匂い、肌を刺す冷たい風。あまりの情報量に頭痛を覚えながらも飛び起きた。辺りは既に薄暗く、どうやら日が落ちてから二時間は経ったようだ。


「何が起きてるんだっ?!」


 取り敢えず自分の体を触りまくる。ついさっきのことのようにも、遠い昔のことのようにも思う前世の自分の最期。体がバラバラになった記憶があったが、ちゃんと立つことができる。着ているのは下着の上にフードのついた大きいローブ。目が二つ、鼻と口が一つ、耳も目も、足も二つ……。そこまでいって、足元に何かが描かれていることに気づいた。


「悪魔召喚のいん……?」


 悪魔は人への殺意が他のどんな魔物よりも高く、加えて知性も持ち合わせる。もしこの近くに悪魔がいるとしたら、この混乱した状況で勝つのは難しいだろう。

ただ、召喚された悪魔は人間と契約を結ぶまで印の外からは出られない––––基本的には召喚者が契約するのが一般的で、悪魔を召喚する奴は大概碌でもないため結局危険である。

 

 悪魔召喚はその術自体が既に高度で大量の魔力を必要とするから、大人数で印を結ぶことが多いはずだ。たくさんの頭のおかしい魔術師と戦うのは勘弁、けれど一人でこの印を結び切ってしまうような人間を辞めた魔術師とも会いたくない。


「なんてことだ……!せっかく第二の人生を与えられたのに、もう死ぬのか?!」


 前回の自分の人生は(半分自分から望んだことなので何だが)、平均寿命と比べても随分短かった。加えて俺の場合は魔力が人よりかなり高かったのでもっとずっと長く生きれただろう。

 きっとこれは、神が俺にくれたチャンスだったのだ。それなのに。思わず頭を抱えてしまった。手にグサリとツノが突き刺さる。

「あぁ、そうだツノ生えてたんだった……」

 久々に生きているから、思わずそれを忘れていた。








 ……あれ、人間って、ツノあるっけ。

 その時ようやく、俺は自分の体の様々な異常に気付いたのだった。



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