表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/20

14. 呪法は最も美しい

書いたエッセイの伸びが凄まじくて嬉しいけど複雑です。(デイリーランキング17位でした)

暇つぶし用なので気になったら覗いてくださいって言う宣伝。


いつも見てくださってる方ありがとうございます!


6月5日16:27

誤字直しました!

14.





「着いたはいいがァ、お前どうやってカトレアへ入るつもりだ?」


瞋の意見は残念ながら最もだ。魔法都市は街全体が魔法で溢れている。一般的な地方都市より生活水準が格段に高いため、警備にも当然力がかかっているだろう。


「1度街に入ったら、後はローブのフードを深く被って顔を隠すつもりだ……長居をする予定は無いしな。入り方は色々あると思うが、1度偵察をしておきたい。」


外への警備が厳しいということは、つまり中へ入ってしまえばそうそう魔物と疑われることは無いということでもある。

何日も滞在となると怪しまれるだろうが、1日2日の話なら「ローブを着た気味の悪い男がいた」と噂される程度で済むはずだ。


「呪法を使う。この体でもできるか試さないといけない。」


瞋がへェ、と驚いたような声を上げる。それ以外に何も言っていないはずなのに、凄くうるさく感じた。


「戦闘手段がお前って訳には行かないだろ……あまり気は進まないが、剣を買う金が貯まるまではな。」


「じゅほうってなに?」


蝶蘭が頭から一杯のはてなマークを飛ばしていたので、わかりやすく説明しようとした。


「えーとな……」


呪法は俺が生み出した、魔法に呪いを練り込んだものだ。魔法の枠組みの中にあるものと言えるだろう……外道と言われても文句は言えないし、ほとんど魔力は使っていないが。


前世人間でいた時は、陰の魔力は毒になるので使うことができなかった。そこで純粋な魔力を作るために生み出したのが呪法だ。

周りに被害を与えてしまうので、使える場所は限られていた。


呪法は陰の力を内側から体外へ押し出しているようなもの。そうすることで影の魔力を影の力と魔力に分け、かつ体内に巡る魔力だけが残る。

影の力は相手の内側にべたりと纏わりつき、不快感をもたらす。それに魔法をかけることで、内側から魔法攻撃をしているような状態になるのだ。


なので、そもそもが陰の力は魔力に耐性のないものにとって有害であり、魔法を付与することによって耐性をつけても、体内に取り込めば同じ結果になってしまうのだ。

不快感や激しい頭痛、長期的に浴びれば死も覚悟する必要がある。


加えて俺の場合、影の力も呪われているのでそれ自体が非常に有効な攻撃になるのだ。


そして、耐性をつけていたものならこちらの加減で解くこともできるが、全く耐性のないものに一度呪法を使うと呪いが解けなくなってしまう。


呪力拘束───《彼岸(ひがん)の時》。相手に陰の力をねじ込み服従させる万能魔法だ。


魔法としての呪いであるため直接的な殺傷能力は高くない。しかしその代わり、心に働きかける力は強い。強制性が高いので、相手に言うことを効かせるという点で非常に危険な魔法だ。


これと対象になるのが、魔力解放───《涅槃の空間》である。こちらもワイバーンと交戦時に使った通り、危険過ぎる魔法である。

対極に位置しながら非常に似ているこの2つは、そのまま魔法と呪法の関係性でもある。


実際この魔法は、生み出した俺しか新たに(・・・・)かけることは出来なかった。呪いさえも手を焼いたというわけである。

もう遅かったことも、あったけれど。


「…………魔物の内側にある魔力を2つに分ける。そのうちの魔力でない方を攻撃に改変したのが、呪法と呼ばれるものだ。精神に強く働きかけるから注意しろよ。耐性がないと俺が死ぬまで永遠に支配を受けたままだ。」


とにかく前世のことも含めて、蝶蘭が理解できるのはこの程度だろう。


「……ん、うん。わかったよーな、そうでもないよぉな。」


事実、これでも蝶蘭には伝わりきっていない。


「正直、何故魔物は陰の魔力なんていう混合物質で活動しているのか分からないんだ。瞋なら知っているかもしれないが……こいつが言うはずないからな。」


一応再び聞いてみるが、瞋は元気に嘲笑った。


「ヒヒヒ、確かに幾度も聞かれたが答えたことは無いな。」


「こんごうぶっしつ……」


異国の言葉であるかのような物言いに、思わず笑ってしまった。


「分からなくてもいい。瞋、後ろの木に止まっている大鷲をコールタールで捕まえろよ。魔力耐性があればいいが、なくても動物なら責任持って面倒を見てやれる。」


呪法の対象になるものはある程度の知能を持った生き物。近くを素早く探したが、ここにはその大鷲くらいしかいないのであった。


「仕方ねぇか……扱いの荒いやつめ、制御できるようになった途端に余裕綽々だなぁ。」


「安心しろ、昔も今もお前のことが嫌いだから何も変わってない。」


人間もその他の動物も、極限状況で能力を開花させる可能性がある。その鷲には見たところ魔力耐性が付いてはいなかったが、百分の一の可能性が実ることを信じよう。

俺たちに立ち止まっている時間はない。


「よくわかんないけど、あるといいね。」


一瞬縮まった後、目にも止まらぬ速さでスルスルと伸びていく瞋の体を見ながら(恐らく残像しか見えていない)蝶蘭がぽつりと呟いた。


「支配されるのは、とてもこわいから。」


叔母に洗脳されていた過去があるからこそ、切実な言葉だった。


「捕まえたァ!」


ヒヒヒ、と嬉しそうに悪寒の走る笑い声を聴きながら、俺は蝶蘭に尋ねた。


「呪法は、生き物を服従させるものだ。俺もあまり好きじゃない。それでも今はこの方法しかない。赦してくれるか?」


聞けよおい、と怒る瞋が見えないとでも言うように蝶蘭は応えた。


「蝶蘭は雹華についていくっていったよ。」


何も疑問に思っていない様子の蝶蘭に、ようやくまずいと気づいた。基準値を俺にするな。


だって、例えばそれが間違っていたとしても、か?

間違ってばかりきた俺に、それは重すぎるんだ蝶蘭。


重なり続ける過去の言葉を、はっきりと意識してしまった。


───『だから、だからどうか、「雹華!この鳥離しちまうぞォ!」


「………っあぁ、助かる」


キレ散らかした瞋の言葉で、思いがけず救われた。分離していてよかった……今心に攻撃されたら、正直まずかったかもしれない。


「戻ってきてくれ、さっさと呪法をかける。」


10分はここで立ち止まっている。瞋はぶつぶつと呪いを浴びせながらも何とか角の間に戻ってきた。

放り投げられた大鷲を受け止めれば、蝶蘭と同じ程はある。瞋の怒気に当てられてぐったりしていたので、蝶蘭が恐怖を感じなくてすんだ。


神様、俺のためじゃなくていいから、この子供の願いを叶えてあげてくれ。


「蝶蘭、降りれるか。危険だから離れていてくれ。」


蝶蘭が素直に頷いて充分離れたのを確認すると、しゃがみこんでゆっくり鷲を地面におろし、鷲の額の辺りに両手で三角を作る。


「呪力拘束───《彼岸の時》」


身体を包むように全身から噴き出した黄金色(・・・)の陰の力。

それらは三角に囲われた額へと1点へ収束する。


全てを押し込むと、蝶蘭が我に返ったようにぴょんと飛び上がった。


「きれいないろ……」


「すぐにそうとも言ってられなくなるぞォ。」


うっとりしていた蝶蘭に、瞋が吐き捨てるように言う。

返す言葉もない事実だ。


「ビィ……ビギャアアアアア!!!!!アア!!ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」


突如鷲が目を見開き、激しく抵抗を始めた。

想定の範囲内。だから俺はいつでも鷲を抑えられるように動かず待機していたのだ。


「だいたい20秒で拒絶反応……耐性はついていないか。ここからだな。」


1分で気絶すれば耐性なし、気絶がなければ耐性がついたと判断していいだろう。任務が終わり次第すぐに解放してやれる。

事務的な気持ちで接することが出来る俺は最低だ。悪魔だ。


暴れる鷲を押さえつけた。悪魔の身体能力向上がここでも発揮されるとは。


「ギャアアアアアア!ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」


「やっ……やめてあげて!」


蝶蘭は思わずといったふうに声を荒らげた。この苦しみようを見ればそうならざるを得ない。

けれど既に始まったことだ。呪法において、途中で止めるという選択肢はないのだから。


「こいつだけじゃないだろ、支配に苦しんでるのはァ……人間も悪魔も同じ、声をあげられないだけでよォ?」


この世の無常を見尽くしてきた瞋が、以外にも蝶蘭を諭した。……どちらかと言えば、馬鹿にしていると言った方が正しいか。

同じだからといって、それを強制していいってものではないのだ。


蝶蘭は納得できないというふうに青ざめている。


ところが瞋は俺が思ってもみないことを言った。


「俺はさっきお前が綺麗だって言ったことに反発したがな、間違ってねぇよ……」


───この魔法は世界でいちばん美しいと、俺は思う。


瞋にとって、支配は夢である。知ってはいたが、そんな肯定的な言葉を聞いたのは初めてだった。思わず目を見開いてしまったほどだ。

それでも結局これが美しいと思うのは、呪いだからだと思ってしまう。


蝶蘭は斬新すぎる視点に口を半開きにしていた。しかし、気が逸れたなら良かった。


俺は何も言わず大鷲を押さえつけ続ける。

だが、先程から様子がおかしい……呪法をかけた負荷で稀に死ぬこともあるが、まさか。


「……ギッ、……ギィギィ!」


大鷲は突如抵抗をやめ、従順な鳴き声を上げた。額には、輝く三角の跡が残っていた。


「?!!!!!おい、蝶蘭!」


「なぁに?」


「耐性がついた……100分の1の賭けに、勝ったようだ。」


蝶蘭の顔が綻ぶ。本当は止めたかっただろう、でも他に方法がないから言わなかったのだ。止めたら、俺は絶対にそれに従うから。


「鷲、悪いが少しだけ手伝ってくれ……苦しかったよな。」


鷲はこっくりと頷いた。


温度のない眼は、昔からよく見ていた。







人それぞれの痛みがかけるといいなと思って頑張ります。

見て下さってありがとうございました!今後もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ