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第1話

全5話 毎日6:00更新予定です。(全話予約投稿済です)




「モーラス子爵令嬢よ、よくぞ参った。此度は其方に「時を渡る魔道具」の開発をする栄誉を与える」

「はあぁぁ???」


 いきなり何言ってんだこの馬鹿国王!


「と、時を渡る魔道具の開発?...ですか?」


 つまりタイムマシンのようなものを作れってことか...


「そうじゃが」

「できるわけありません」

「其方は王国一の才女と聞いておるが」


 いやいやいや、そういう次元のことじゃないだろーが!!

 馬鹿だとは思っていたがここまでとは。


「恐れながら陛下、私にもできる事とできない事がございます」

「余がこれほど頼んでもか?」


 はぁコイツ(国王)と話してると疲れるわ。

 どうせ難しい事を言ってもわからないだろうし...そうだ!


「では陛下、私が国王になりますので、陛下は蟄居してください、そうすれば考えます」

「なっ無礼な!そんな事できるわけなかろう」

「だから、それくらい無理な事を陛下は申している、と言っているのです」

「むむむ」


 さすがの馬鹿国王も無理難題を言ってることに気がついたらしい。


 しかし...


「ええい!何をごちゃごちゃと言い訳をしておる。貴様は「やる」といえば良いのだ」


 ほらね、思い通りにならなかったら癇癪を起こす。子供か!いや、まだ可愛げのあるぶん子供の方がマシだな。


「......分かりました、ではどのような仕様の魔道具でしょうか?」

「それを考えるのが其方であろう」


 コイツ!...


「では10分時間が戻るものにします」

「それでは役に立たん」

「だからどのような仕様かとお尋ねしているのです」

「どのようなことにも対応できればよいではないか」

「では完成は50年後になります」もちろんテキトー発言です。

「何!それでは間に合わん」

「間に合わない?」

「え、いや、なんでもない」


 はは〜ん、これは過去に何か失態をして、それを無かったことにしようとしているのかも。


「なので、正確に仕様...何のために必要であるかを正確に教えていただかないと、時間も費用も増えるばかりでございます」


 馬鹿国王は黙ってしまった。


 そしてついに観念した国王は、理由を話し始めた。


「...実はな、フィリップが聖女システムの制御室の中に入った」

「えええええっ」

「でな、其方はフィリップの婚約者でもあるからの、その、何とかしてやれ。な!」

「............」


 コイツは、私がフィリップ王太子の婚約者になったことが嬉しい、とでも思っているのか...





 ー聖女システムー


 その昔、この大陸には瘴気が蔓延していた。

 瘴気は大地を腐らせ、植物を変貌させ、魔物を強化、増殖させる。

 そのため人類は滅亡の危機にあった。


 そこで女神様は、瘴気を祓い、国を覆うほどの結界を張る事ができる強力な力を持った「聖女」を各地に誕生させた。

 しかし、

 その力を独占しようとした愚かな権力者達によって、聖女をめぐる争いが多発。

 各所で起こる内乱によって、却って事態は悪くなってしまった。


 女神様は人間のあまりにもな愚かさに、滅びても自業自得とも考えたが、最後のチャンスとして、聖女に匹敵、それ以上の力を持った聖女システム(巨大な魔法陣のようなもの)を各国の要所に設置した。

 そして、そのシステムを権力者が独占しないように...

『聖女システムの制御室には誰も入ってはならぬ。各国の最高権力者は、侵入する者から制御室を守護することのみに尽力せよ。もし侵入を許した場合、国は滅び、その時の最高権力者とその一族には天罰が下るであろう。これは最後の信託である。これを後世に伝えよ、2度はない』

 との信託を全人類に下した。


 これが聖女システムとその歴史である。

 そして、300年の間守られてきた。のだが...



 私はルナ。モーラス子爵家の長女です。現在18歳

 実は私、元現代日本人の転生者です。

 前世では最先端技術の研究者をしていました。

 この世界には魔法があります。

 でも、この世界の魔法というのは、私が前世で読んだ本で出てきた、攻撃魔法で魔物を倒す...というような強力なものではありません。

 火魔法はロウソクの炎くらい。水魔法は目薬より少し多いくらい。はっきり言ってショボいのです。


 そこで、私は前世の知識も合わせて研究して、現代の家電製品のような魔道具の開発に成功したのでした。

 その功績が認められ、若くして王城に新しく建設された魔法道具研究所の、所長兼開発責任者に任命されました。


 予想外だったのが、私の能力を取り込みたい王家によって、フィリップ王太子と婚約させられた事。


 父親の子爵は入り婿で、母が亡くなると待っていたように、私のひとつ下の娘がいる愛人と再婚。

 当然正当後継者である私は邪魔者。まあよくある話です。

 子爵では爵位が合わないため、私は会った事はありませんが王弟閣下が養女にして、婚約は成立しました。でも家名はそのままだからモーラス子爵令嬢のままなのだけれど...よくわからん。

 たぶん王弟閣下の後ろ盾がある、というだけなのだろう。

 王家も子爵家とは縁を切りたかったのか、大金を支払って私との関係を完全に断ったとの事でした。

 子爵としても、邪魔者は居なくなくなるし、大金が手に入ってホクホクでしょう。

 全くどうしようもない人たちです。しかし、モーラス家と関係ないのに私の姓もモーラス。爵位は低いから言うこと聞け、って事かな。まあどうでもいいや。


 困ったのが婚約者の王太子。

 傲岸不遜を絵に描いたような人物。頭は悪いがプライドだけは高い。

 父親(国王)と同じで怒鳴ればいいと思っている。

「俺様は王太子だから何をしても許される」と本気で思っている。

 だいたい「俺様」って、何様なんだろうね。典型的甘やかされボンボンって、自分で言っているようなものなのにね。


 イザベラ公爵令嬢という愛人がいる。

 まあ愛人がいるのが救いですね。あんなのに付き纏われたら、たまったものじゃないわ。

 お金が欲しい時だけやってくる。

「王太子の俺様よりお前の方が金持ちなのが気に食わん」らしいですよ。

 これは研究資金だから、私のものではない、と何度言っても理解しない。いや、出来ないのかな。




「とりあえず早急に開発に取りかかります」


 嘘です、そんなもの真面目に作るわけないでしょ。


「うむ」

「それで開発費用の方はどうしますか?」


 それらしいことを言っておかないとね。


「財務長に、今出せるだけ全てと言っておく」


 ええええっ大丈夫なの?これから色々起こるよ、厄介なことが。


「このままですと、恐らく数ヶ月で結界は消失するでしょう。万が一の時のため、民の避難などを考えますか?」

「其方が早く完成させれば良いだけの話であろう。余計な噂がたってもいかん」


 そう言うと思った。

 どうやら国王の頭の中ではもう完成する事が決定しているらしい。


「それでは直ちに取り掛かります」やらないけど。

「うむ、頼んだ」


 そんなもの出来るわけないだろうが!こうなったら開発費貰ったらとっとと国を出よう。



 私は恐らく最後となるだろう完璧な淑女のカーテシーをして、謁見の間から去った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 平気で無茶振りしてくる国王陛下もヤバいですが、暗愚で尊大な上にトラブルメーカーな王太子も相当な問題児ですね。 王族がこんな問題児揃いだと、臣下や国民は苦労するでしょうね。
[一言] いやぁぶっ飛んだこと言う王様だね(;'∀') こんな人がトップでこの国大丈夫なのか(;'∀') でもって、こうなったら王様にはシュタゲのタイムリープマシン的なモノで妥協してもらおう(ぇ
[一言] あ、あの〜 タイムマシンって、偉い科学者ができる派とできない派とわかれて、大げんかしているジャンルですよね!? 魔法でも禁忌とされている無理ゲー分野では!?
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