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⑥
胸の内に潜めた轟々たる恨みは己が悪魔故。
膨らんだ負の感情は彼女が触れる頬を通り、そしてどういう訳だか恨み辛みが落ち着いてしまう。
パタパタと頼りなく、水滴が落ちるだけだ。
「…もう、寝るのか。」
どんどん弱る彼女に、縋る声が出た。
もう格好つけてなど居られない。
『えぇ…。寝るだけよ。』
消えやしないから、安心なさいな。
「少しも安心できねぇんだよ、アホ天使。」
どうやら長年、数百年も続いた喧嘩の軍杯は、彼女に上がったようだった。
あぁ、そうだよ。
俺はお前の為ならすぐにでも膝を折って汚すさ。
ただの、弱い男だから。
最初から最後まで、彼女は受け入れる・・・・・天使で。
最初から最後まで、俺は奪う・・悪魔だった。
壊れる前に。
いっそ、いっそお前の魂を取り込んで。
そのままお前以上に苦しんで死んでしまいたい。
…しかし、殴られるのは勘弁。
こんなにも女々しい俺の裾を掴むのは、お前だけだよ、シューマ。俺がとち狂って翼をもがないように、願っておいてくれ。