カミカクシ備忘録
東京から来た小学2年生の少年は、山で祖父とはぐれてしまった。
ここは熊本、菊池の小さな山。
「こんなに迷うほどの山ではないのに」
少年はカブトムシを探すのに一生懸命になり
ついつい細い山道から外れてしまった。
少年は、霧に包まれた。
霧が晴れると、目の前にひろがる、両手を広げた大人が3人ほどならんだかのような大きな道。
見上げれば先が見えない大きな木がずらりと道に沿って規則的に並んでいる。
この道をまっすぐ進めば祖父に会えるのかな。
進めども、進めども景色は変わらない。
しかし5分も歩いたころだろうか。
目の前に広がる黒い池。
立ち止まる少年。
近づいてくる黒い池。
池が、近づく?
少年はわが目を疑った。
近づいてきた黒い池。
それは実際には小さな黒いカエルの集団だった。
カエルが苦手だった少年は一目散にもと来た道を必死に走っていった。
すると霧にまた包まれ…
少年は元来ていた山に戻ってきていた。
少年を見つけ、ほっとする祖父。
それから数十年たち、元少年はその山に行ってみた。
そこで見つけた不思議な石碑。
削れて読めない、不思議な文字。
神隠しにあいかけたのか、
それとも、違う世界に迷い込んだのか
いまだに答えはでないけれど
今も変わらず、その山は存在している。