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2.22

時間すこし巻き戻りますが

2.22 隙間sssです。



 ──ピコン。


 午後11時過ぎ。入浴を終えた結衣子が自室に入った瞬間、狙い澄ましたかのように携帯が鳴った。濡れた髪をタオルで拭いつつ充電していた携帯を手に取り、思わず落としそうになってしまう。そこに、和泉の名が表示されていたからだ。


『みてみて、猫拾っちゃった』


 そんなメッセージと共に画像も送られてきている。開けば、灰と白のまだら模様の仔猫がおすわりをしてきょとんとこちらを見つめていた。


(! かわいい……っ)


 ピンと立った三角の耳。

 愛くるしい黒目。

 ふわふわの毛並み。


 結衣子はあふれる感情を抑えつつメッセージを送り返した。


『とってもかわいいですね。今日拾ったんですか?』

『うん、車の下で震えてたんだ。寒いし保護できてよかった』


 また一枚、猫じゃらしのような玩具で遊んでいる仔猫の写真が送られてくる。小さな前脚を真剣に振り上げている姿がなんとも一生懸命で、可愛すぎた。


『ほんとにかわいいですね、うらやましいです』

『七瀬さんも猫好きなの? そうかなーと思ったから送ったんだけど』

『はい、好きです。動画とかよく見ちゃいます』

『わかる。めちゃくちゃかわいいよね』


 明日動物病院に連れて行って、飼い手が見つからなければそのまま和泉が引き取るそうだった。

 そんなやりとりをしている合間にも、ぽんぽんと仔猫の画像は送られてきて。結衣子の口元はほころびっぱなしだった。

 

『そういえば知ってた? 今日は【猫の日】なんだって』

『知ってます。ネットで見ました。にゃんにゃんにゃんだから【猫の日】なんですよね』

『そうそう。なんか運命だなーとか思っちゃった』


(運命……)


 巡り合わせ。いっしょにいるべくして出会ったひと。その相手が和泉だなんて。


「いいなあ、猫ちゃん……」


 思わず本音がこぼれでる。


 見返した写真のなかの仔猫は、少し筋張った、大きなあの手に顔を撫でられ、気持ちよさそうに擦り寄っていた。


「…………」


 恋は盲目と言うけれど。きっと先生はこの子にもいつもの甘い笑顔を向けているのだろうと思うと、少しだけ嫉妬してしまう。


(ダメだなあ、私)


 さすがに、苦笑がこぼれた。



 でも、和泉を好きだと自覚してからはずっとこうだった。毎日が楽しくて、毎日が苦しい。どうしよう、どうしたらいいんだろうと悩み続ける。彼の仕草、言葉ひとつに揺り動かされてしまって。


 でも、どうしたらいいかなんて、本当は知っていた。

 勇気をだすか、諦めるしかないのだ。


(それなら私は)


 想い、またため息をこぼす。


 ────いつか、いつかは。






読んでくださってありがとうございました

ฅ^ ̳• ·̫ • ̳^ฅ♡

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