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22 サローナ、開戦の計画をする 下<王都視点>

 サローナは虚報をジェフリスに伝えることにした。


 総督が自分こそが王だと舞い上がっているとか、副都が戦争の準備をしているかもしれないといったものだ。


 最初は信じていなかったジェフリスだが、そういった話を何度も聞かされていけば、少しずつ副都への不信感はつのっていった。元から副都のことは気に入らなかったので当然の成り行きだ。


 しかも副都を北都と呼ぶ事例が領主の間で現れ始めていたのはたしかだった。

 領主たちは副都を褒め称えるために北都と表現したのだが、王都の人間からすれば面白いわけはなかった。








 年が明けた。ジェフリスの王としての治世は5年目を迎えた。

 新年早々、ジェフリスはわずかばかりの側近を集めて、秘密裏に副都攻略についての会議を開いた。


 会議はサローナがなかば強引に開催させたものだが、会議を開くことを認める程度にジェフリスも副都と総督に不信感を覚えるようにはなっていた。


「副都に何の罪もないが、アルファードをそろそろ引きずり降ろさないとまずいとは考えておる。場合によってはアルファード討伐のための軍隊を送ろうとも思う。その是非を問いたい」


 議長役のジェフリスが言った。

 まだ本人の中でも軍を差し向けることは確定していないらしい。


 前代の王から仕える老臣が手を挙げた。

「総督殿が邪魔ならば、その職務を罷免すればよいだけのことです。軍隊を送るのはやりすぎでは……」


「たしかに罷免はたやすいです。ですが、あの方が副都に残れば結局、副都に影響力を持ち続けます。それでは意味がありません」


 積極攻勢派のサローナが答える。


「王妃、それならば罷免のうえで王都に召還をお命じになればよいのです。もし、それに応じないなら、反逆の意志ありと示すこともできましょう。兵を起こすのはそれからでも遅くはないかと……」


「ええ。そして、総督は絶対に召還には従いません。のこのこ帰ってくれば殺されるだろうと思っているはずですわ」


 事実、もしアルファード夫妻が警備もなしに帰ってくるなら、サローナはこれをどこかで殺すつもりでいた。


「召還に応じないのが確認できてから兵を集めては時間がかかります。だから、事前に兵を用意するのです。そのうえで罷免と召還を命じれば、彼が反逆者になりますから、あとは攻め込むだけです」


「おっしゃりたいことはわかりますが、兵を起こして圧勝することができなかったりした場合、陛下の権威に傷がつくおそれがございます。それを案じるのですが……」


「いいえ、むしろ武威を示さねばならないのです。陛下が前王殺しに関わったなどという流言が飛び交っている現状で、陛下の力を示さずにどうするのです!」


 そのサローナの言葉にジェフリスは立ち上がった。


「たしかに、アルファードを血祭りに上げてこそ、俺の力も示せるというものだ。王のメンツを回復せねばならん! 夏には北部の雪解けも完全に終わっているだろう。その時に攻め込む計画を立てるぞ!」


 こうして、王都ではアルファードを滅ぼすことが決定された。





 すぐにジェフリスは南部や中部の領主に、夏に向けて兵士の徴募をするように密命を下した。

 サローナが軍人から聞いた話でも、理屈の上では勝てる話のはずだった。


 ただ、実際に兵を集める準備に入っても、一部の軍人たちはジェフリスを諫めようとした。

 アルファード討伐が確定事項となった二週間後も、近衛軍に所属する二名がジェフリスに慎重になるように説いた。


「兵を集めるまではかまいませんが、討伐命令に関してはぎりぎりまで熟考されるべきかと。もし攻め落とせなかった場合、最悪、国が二つに分かれる危険も……」

「中部の領主はそこまで王家と結びつきが強いとも言えません。途中で裏切るおそれもあります!」


「お前らは軍人なのに、どうしてそんなに及び腰なのだ! たんに北部の精強な軍隊が怖いのなら、王都でふるえて待っておればよいわ!」


 近衛軍の直訴はあっさり退けられた。


 かつては副都に攻め込むまでは無理があると思っていたジェフリスだったが、今は完全にアルファード討伐のことしか考えていなかった。


(こんなことなら自分が即位するタイミングで総督と違う役職を与えておくべきだったな……。今、手を打たねば10年後には北部の人間は誰もがアルファードを副都の王、いや北部の王と思うだろう。そうなる前に消し去らねばならん……)



物語も佳境に入ってきたので、更新速度上げます! 次回は12時更新予定です!

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