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呪人《カースマン》  作者: さばみそ
第一章
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憂忍《ういじん》

今日も今日とて朝からみっちり修行三昧。神社の裏山を借りて、夕方からは霊や妖怪の探索&識別訓練。そして日中の今は師匠との組み手の真っ最中だ。マヤも学校が終われば見学に訪れていた。さて、力を発することと使いこなすことは全く意味が違う。結局のところ、どんなに強力な力も相手に当てる技術がなければ宝の持ち腐れだ。その辺は『生まれたての悪霊』の話しと同じだなと、タケトは心の中で自嘲じちょうする。

とはいえ、超一流の人間からの一週間付きっきりでの修行だ。最近はずいぶんと様になってきていた。現に組み手をしながらも会話が可能なくらいには成長していた。

「そういえば、浄霊師じゃなくて霊滅師です?」

素朴な疑問だった。文字を見れば違いはなんとなくはわかるのだが、ちゃんとはっきりさせたいと思った。なにしろ、これからそれを生業にしていくのだから。

「協会に登録するにあたっての識別のため、だな。お前は霊を滅することは出来ても、浄霊や土地の浄化は出来ないからな。実は、祓いや滅する力よりも、意外と浄の力のがレアだったりするんだぜ?」

ヒジリがちょっと自慢気だ。今までは二人に自分の仕事の話しをすることすらなかったのだが、師弟関係になったからか、もう踏み込んでしまったからなのか、ちゃんと話しをしてくれることが嬉しかった。

「ま、どうせ暫くは協会には行けないし、いずれは浄化浄霊も教えるつもりだから覚悟はしとけ」

そう言われて背筋がゾッとするのであった。


夕方、マヤが合流する。飲み物と軽食を届けてくれて、自然と組み手を止めて休憩時間になる。特製のタマゴサンドが身体中に染み渡る感覚に、タケトは毎日感激していた。サンドイッチが美味しいからというよりも、半分近くが化物になった自分でも美味しいものを美味しいと感じられることに対して。そんな理由もあるようだ。厳しい修行の途中でも笑顔になる二人を見て、師匠として、叔母として、ヒジリは安心する。

「だいぶ使えるようになってきたな。そろそろ実戦、経験しとくか?」

唐突な提案に驚く二人。その様子にヒジリは呆れ顔になった。



次の日の夕刻、とある村へとやって来た。その村の外れ。石階段をバイクで一気に駆け上がる。タケトはヒジリの背中に必死にしがみつく。そもそも幹線道路でもものすごい速さで、タケトは風切り音で何も聞こえず恐怖で景色を見る余裕もなかった。そのうえでのアクロバット走行。登り終わってバイクから降りるとフラフラになっていた。

(なんか… 途中でパトカーの音が聞こえた気もするけど… 気のせい、だよな…?)

一抹の不安がよぎるが、ひとまず忘れることにした。ふと辺りを見回すと、そこは寂れた神社。手入れが行き届いていないらしい。

「落ち着いたか? 昨日、依頼を受けてな。過疎で消滅寸前の年寄りばかりの村だが、放ってはおけないだろ」

高名な浄霊師ではあるが、こういう情に厚い面もあり、金にならないような依頼も多くやってくる。あまりに遠い場所だったり、忙しい場合は近くにいる弟子に『お願い』することもあるらしいが、基本的には自分で受けた仕事は自分でやるのが信条なのだ。

「依頼内容は… 最近、化物が彷徨うろつくようになったから退治してくれってやつだ。探索と討伐で一石二鳥の訓練が出来る仕事だな。頑張れ」

ヒジリは腕組みしてそう言った。なるほど。老人ばかりの過疎の村。神社がこの状態も致し方ないだろう。それが原因なのでは?とも思えるのだが…

(あれ? 頑張れ?)

「あの、師匠は?」

「私は村を結界で守って待ってるよ。探索途中で村に入られたら厄介だし、失敗した時のことも考えてね」

失敗。その時は… 背筋に悪寒が走る。恐怖を振り払うように全身を震わせ、肩を回し、気合いを入れる。

「では、いってきます!」

おう、頑張れと軽く手を振って村の方を向き、結界を張り始めた。小さな村ではあるが、そうとうな広さ。師匠の桁外れな力に逆に呆れてしまうタケトだった。

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