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呪人《カースマン》  作者: さばみそ
第一章
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捻裂鬼《ひねさき》

タケトはその日、学校を休んだ。というか、強制的に休まされた。師匠となったヒジリが自身の部屋に結界を張り

「私が帰るまでここから出るな。トイレは諦めろ」

と言って出ていった。

(各方面にいろいろやらないといけない、とか言っていたが…)

マヤが部屋の外の廊下から声をかける。

「叔母さんね、有名な政治家さんとも知り合いでね、けっこう政治的なパワーも強いんだよ。だから、いろいろ口裏を合わせたり… なんなら超パワーで何かしらやってるんじゃないかな?」

マヤも同じく休まされていた。しかし、危険性を考慮して結界の中には入れない。もし呪いが進行して、彼女を襲ってしまったら… そう考えれば当然のことである。

「ほんとにすごいよねぇ。昨日言ってたDNA鑑定も、日本トップレベルのチームに最優先でやれって『お願い』したからあんなに早く結果が出たんだって。もうヤバいよね!」

叔母に見せられた写真の青年の顔を思い出し、続けてトンネルでの化物の姿を思い出し震える。彼女なりに気を遣っているのだろう。いつもよりテンション高めに話しかけている。タケトの不安を取り除くように。このような事態を引き起こしてしまったせめてもの罪滅ぼしに。そう思うと恐怖は薄れ、そんなマヤの行為に(これで少しは懲りてくれよ?)と半分呆れた顔で、半分慈しむような顔でふっと一息つく。

その後は扉越しに背中を合わせ、いつものように他愛もない話しをして時間を潰す二人であった。

ヒジリが帰宅したのは、話しのネタも尽きた夕方だった。


「すまん。だいぶ待たせてしまった。まぁ、無事で何よりだ」

そう言いながら股間を見るヒジリ。

(そっちの心配かよっ!)

と心の中で突っ込む二人であったが、そちらの心配が最初ということは、身体の方は大丈夫ということなのだろうと安心もする。ふと、ヒジリの肩に目がいく。いつの間に飼っていたのだろう、見たことのない小動物が乗っていて、こちらの様子を伺っている。

「じゃあ、移動するぞ」

そう言って外に出るヒジリ。誰かに見られたらという不安があったが、遅れたらどんな罰を与えられるかわからない。普通に歩いているように見えて意外に歩くスピードが早いヒジリに必死についていく。

到着したのは近所の神社だった。息が切れているタケトとマヤを見て、ヒジリが軽く呆れる。小動物も心なしか呆れた顔に見える。もちろん、ヒジリの身体能力が異常なのだが。

「なんともないな? よし、外すぞ?」

再度確認し、ヒジリはタケトの包帯を解く。こんな場所で大丈夫なのかと焦ったが、神社には人払いをお願いし、結界を張ったから問題無いとのことだ。霊力に依るものだろうか、普通の包帯と違いまるでひとりでに外れていくかのようにハラハラと地面に向かって落ちていく。次第にあらわになる呪いの捻れ。悪化こそしていないが、昨夜のままの異形である。

「確認だ。お前が叫んで、バチンと音がして、化物が離れたんだな?」

確認事項の意味するところがわからなかった。が、しっかりと思い出して「はい」と返事をする。

「私が化物を攻撃したのは鎌で口を切り裂いたのが最初だ。お前の言う化物をはじいた『バチン』は私ではない。お前の攻撃だ」

俺の攻撃? とタケトは困惑する。何しろ彼にはそんな記憶はない。恐怖で叫んだだけなのだから。

「条件を満たしたことでの強制的な呪いの譲渡。あの時、お前の頭1/3と左腕は既に呪われて化物と同化していた。逆に言えば、その分の呪いの力はお前のモノになっていた。きっかけはわからんが、あの一瞬、お前はその力を発動させたのだろう」

呪いの力。捻裂鬼ひねさきの力を発動させたことで、化物の力を相殺。弾き返したということか。

「つまり、お前はその呪いの力を使いこなせる可能性があるということだ。使いこなせれば私以上の対霊攻撃能力を得られるし、うまくいけば呪いを内側に押し留めて見た目も元通りになるかもしれない」

あくまでも可能性の話しだ。特に後半は希望の域を出ない。しかし、その希望は一般人の妄想ではなく、百戦錬磨の使い手の経験則に基づいたもの。日常に戻れる可能性はゼロではない。タケトとマヤは抱き合って喜んだ。それを見て呆れるヒジリ。それを見て二人も冷静になり、顔を赤らめて離れるのであった。

「んじゃ、修行を始めるぞ。とりあえず、その左腕で一発撃ってこい!」



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