終
~都内・建設中の某ビル~
月を雲が隠し、暗闇が覆う深夜の都心部。
「ブツは?」
「ここには無い。術師共にバレるからな」
「モノが無いなら金は渡せん」
「着いてこい。保管場所に案内する」
「罠じゃない保証は?」
「信じろ、としか言えんな」
「話にならん…」
明らかにカタギではない連中の不穏なやり取り。交渉が決裂したかのように会話が途切れる。
「…こちらもギリギリなんだ。身内に術師がいない以上、あれは宝の持ち腐れ。だが危険性は知っている。そちらこそ俺たちに危害が及ばぬようにアレを使う保証が?」
意を決したように発言する、おそらくは売り手側の幹部。その言葉に対して、やはり信じろとしか言えない現状に買い手側も言葉が詰まる。再びの沈黙。
「あの~交渉が決裂したなら、俺に売ってもらえませんかね~?」
惚けた声と共に一人の青年が入って来る。場は一瞬で緊張感が走り空気が張り詰める。男たちはそれぞれに武器を取り、中には拳銃や呪具を持った者もいた。そんな状況でも青年は揺らがない。
「そう興奮しないでください。そちらが手を出さないかぎり、こちらも何もしませんから。穏便にいきましょ?」
雲が途切れ、月明かりがビルの中を照らす。青年の顔も照らし出され、その正体がわかって男たちがざわつく。
「こ、こいつ白だ!」
「あの死神か!?」
「神に近い男ってやつか!!」
「妖怪の一団を従えているとか」
「呪いに蝕まれ、呪いを調伏し、呪いを操り神をも生み出した怪物。通称呪人、白タケト!!」
それぞれに叫び、構えてタケトを取り囲む。だが、タケトは表情ひとつ変えずに男たちに言った。
「俺を知っているなら話が早い。おとなしく提案、受け入れてくれません? 抵抗は無駄ですよ?」
「う、うわあああー!!」
一人の臆病者の暴走で戦闘が始まった。剣林弾雨の中、タケトがポツリと呟く。
「服、汚れないようにしないとなぁ~」
物語は続く
呪人・廻 https://ncode.syosetu.com/n0623ig/