尻に敷かれる
親は言った。
「隣のおばあちゃんの家に遊びに行くのはもうやめなさい。」
「どうして?」
「・・・どうしても。」
別に、小学生の私にとって、優しいおばあちゃんだった。
行けば必ずお菓子とジュースをくれる。私のことを孫のように面倒を見てくれていた。
ただ、ひとつだけ。不思議なことがあった。
おばあちゃん専用の座布団。そこに座ることだけは許されなかった。座ろうとすると、鬼のような顔をして怒っていた。
「そこに座るんじゃなか!!!おじいさんの上に腰を下ろしていいのはアタシだけや。」
当時は、おばあさんにとって大切な座布団なんだという認識でしかなかった。
たしかに、普通の座布団とは違っていた。小さい軽石が入っているみたいにゴリゴリとした感触だった・・・。
「ねえ、それじゃわからない、どうして?」
「あんただって、覚えているでしょ。おじいさんとおばあさんの喧嘩。こういう言い方は良くないけど、あの家は普通じゃないの。だから、関わっちゃダメ。」
「でもケンカするほど仲がいいって・・・。」
「あれは普通の喧嘩じゃない。他人の事情に口を挟むのもおかしいけど、かかあ天下もいいところ。旦那をいつも尻に敷いて・・・今も。」
「おじいちゃんはもう死んじゃっているじゃん。」
「うん。そうだね。死んでからも、ずっと・・・。」
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