1話
俺は田中。どこにでもいるサラリーマン。
毎日夜は22時過ぎまで残業して帰る日々。
楽しみといえば家の近所に居る野良猫と戯れること。
今日も日課のコンビニで弁当を買って帰った。
アパートの側まで行くと茂みから顔馴染みの三毛猫が現れた。
「にゃー」
「ただいま。良い子にしてたか?」
足元にすり寄ってくる猫にしゃがんで首元を撫でる。
「お腹空いたよな。ほらご飯だよ」
茂みに隠れているお皿を取り出し小袋に入っている猫用のドライフードを出す。
この猫はお行儀が良い。
普通の野良猫なら袋を開けた瞬間猫パンチが飛んでくるだろう。
だがこの子は大人しく座って待ってるのだ。
最後の一粒までお皿に乗せると猫の前に置いた。
猫はこちらを見てひと鳴きする。
「良いよ良いよ食べな」
ドライフードを食べ始めた猫をニコニコと眺める。
そんな最中真っ暗な夜に地面から光が溢れた。
「なんだなんだ?!」
目を開けていられなくなり目を瞑る。
そして思った。もしやこれって異世界召喚か!と。
光が収まり期待するように目を開ける。
そこはいつも通りのアパートの前で、変わったところは可愛がっていた野良猫がいなくなっていたというところだ。
「お前が行くんかい!!」
「……帰るか」
虚しくなった俺は家に帰った。