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堕天使達のミソロジー  作者: 天使天津
【一章】乖離、そして邂逅
2/3

#2 異端くんと堕天使

眠いです

 秋というには少し肌寒さが目立つ外気に、上着を着けてこなかった朝の自分を恨む夕方。

 朝よりも今の方が気温にすると高いのだろうが、風が吹くのと吹かないのとではこうも違うか……。

 高校生になってからというもの、こんな季節にも手を繋げる女の子の一人もいない。(というより中学生の頃からいないのだが。)

 女友達はそこそこいるのにな。

 この二年半、通学路の往復を共にするのはたった一人の男友達。

 それだけ長い間同じ道を同じように歩いていると、自然と会話もなくなるが別に気まずい訳じゃない。

 居心地のいい友達って、まあそういうもんだろう。


「お前、進路希望結局どうしたよ。」


「いや……なにも。」


「そうか。ま、お前だもんな。」


「おいどういう意味だよ?」


「どういう意味も何も、そのままだよ(笑)。」


「……それがわからないって。」


 何か話しかけてきたと思えば、いつもこう訳のわからない揶揄い方をしてくる。


 ジャイ・エㇺドュード[Ghi=Emdued]


 彼とは通常、朝と夕方の通学路だけ共にし、日によっては一言も喋らない。

 全友達の中では一番接触の少ない人間で。

 でも、おそらく距離は一番近い。

 そんな、まあ友達だ。

 もっとも今日に限っては、「通常」ではないのが……。


「そんなことよりもお前、今日あいつんち泊まりだから忘れんなよ。」


 いや「そんなことより」って。

 高三秋にもなって進路希望用紙が白紙の僕が指摘するべきではないのだろうが、自身と人様の進路、もとい将来を「そんなこと」扱いってどうなのだろうか。


「忘れてないよ、楽しみすぎて進路希望用紙に走らせるペンが動かなかったくらいだし。」


「……ネグ。お前やっぱり本当はバカだろ?」


「本当はも何も、ジャイ以外のみんなが俺を持ち上げすぎてるだけだろ。実際俺自身は俺のこと評価できるほどわかっちゃいない。」


「ふーん?......まあいいや。とりあえす俺こっちだから、また夜あいつんちでな。」


「おう。またな。」


「ん、また。」




 さてと。

 通学路だが、一人で歩く道は長い。

 距離にしてというよりは……うん。つまりそういうことなんだと思う。

 だから、母さんから届いたメールを確認してから引き返した道は短かった。


——————————————————

17:08      4G //////////


母さん

——————————————————



      [8月31日]


<「今日遅くなるのに鍵渡し忘れちゃったし」


<「今日はジャイくんにお世話になって!」



     既読「了解、お仕事お疲れ様。」>


<「╰(*´︶`*)╯♡」




——————————————————


 ジャイは色々事情があるらしく一人暮らしで、こういった時は大体お世話になっている。

 今日に至っては、もともと俺もジャイも友達の家に泊まりにいく予定だったし、尚更都合がいい。

 家で用意したいものもあったけど。


 学校を出てからかなり時間が経っているのが、空の色や影の傾き、肌寒さで感じられる。

 街道を走る車のヘッドライトが眩しく感じ始めたあたり、早くジャイの家に着きたいところだ。


 満ちきった後の少し欠けた月が遠く、そして厳かに感じられるような。

 建物に挟まれた小道の奥から覗くそんな景色になぜか気を取られていた。



 ______それが予感だったのだろうか。


 いや、「天の仕業」だったのかもしれない。


 夢うつつと少し浮ついた隙に、視界が塞がれ息苦しくなる。

 これはなんだ、袋か!?

 あまりにも突然の出来事に、声が出ない。

 暴れる俺の体を数人が押さえつけているような気がする。


 離せよ、おい!


 ……出ない、声が出ない?

 この声のつっかえた感覚、これは精神的なものというより……なんと表せば腑に落ちるかもわからない、言うなれば未知の感覚だ。

 ならせめて、この押さえつけられている腕を振り解くことができれば。


 ん?いや、押さえつけられていない?


 地面にうつ伏せになるように、後ろにまわされた腕は硬く動かない。

 が、その腕に圧力は全くと言っていいほど感じない。

 本当に「動かない」という表現そのままの感覚。

 こんなの辻褄が合わないだろ。


「そうね、「シタ」じゃ辻褄の合わないことがが、今あなたの身に起こってるのかしらね。」


 おそらく前方だ。

 まるで侮辱のように地べたに寝かされた俺の頭上から、女性の声が返答してくる。

 現状声を出せない、俺の思考に対して。


「とりあえず、質疑応答は後よ。もっとも、こちらから質問したいことの方が山ほどあるのだけど。」


 早くここから切り上げたいという様子なのだろうか。

 当たり前だろう、いくら小道とはいえまだ暗くなりきったない時間。

 それに大通りからすぐ覗けるような場所だ。

 この状況において、割りに短い時間で俺がこうも冷静に思考できるのも、そう言った条件のおかげだ。

 目の前に居るであろう「彼女ら」からしてみれば、今すぐ片付けなきゃいけない状況……


 という訳ではない、かもな。


「そう、正解。別にここが大通りだろうが今がお昼間だろうが、私たちにとっては関係ない。バカな君なら、そんなこととっくにお見通しって感じ?「異端くん」。」


 異端くん……?

 さっきの女性とは違う、少し幼げな、少女のような声と表せば良いだろうか。

 残念ながら、僕には彼女(キミ)らに「異端くん」と呼ばれるその所以がわからない。


「あら、それは本当に残念ね?そうなると、これからちょ〜っと痛い目に遭っちゃうかも。恨むならそうね…….やっぱりやめた。適当な人間、恨んでなさい。」


 その言葉とともに、俺は気を失った気がする。




 そして次に目を覚ました時、俺の目の前には重たそうな鉄格子。

 これはまるで、いや。いかにも


「監獄だ。……声、出たな。」


 手を伸ばしてギリギリ手の届かない小さな窓(穴?)から入り込むこれはおそらく月明かり。

 朝昼を跨いだのか、それとも数時間しか経っていないのか。


「今は9月1日の午後だな。」


 鉄格子の外から、これまたいかにも「看守」のような男が声をかけてくる。


「イメージより乱暴だと思えば、そんなさしたものでもない疑問にも答えてくれるお人好しでもある。ますます訳がわからないな。」


「おいおい格好つけなくていいんだぜ異端。嬢ちゃんたちがお前を捕まえた時は大層取り乱してたらしいじゃねえか。」


「ああ、まあなんせ人間だからな。


______凡魂の。」


「ほう?その言い草はもう気づいてんな、自分の置かれた状況に。」


「……なぜなのか、がわからない以上自信を持ってはいないけどね。」


 目の前の看守男がじっと俺の目を見る。

 そしてそれに引き込まれるように、俺も相手の目を注視してしまう。

 ガタイのしっかりした体格にある意味似つかわしくはない、かなり綺麗な柄をしている目だ。


「まあ、理由がわからないというのは嘘ではないらしいな。」


「なるほど、今のは俺が嘘をついていないのか探ってたって感じか。」


「お前そこまで読めてよくもまあ自信がないなんていえたもんだな。」



 「にしても理由がわからないとなると厄介だのどうのこうの」と、ぶつぶつ独り言が始まる看守男。

 すると、今伝えにきた本題を伝え忘れたことに気づいたと言った、何か思い出したような様子で


「そうだ。明日の昼に裁判所で審問が行われる。呼びに来るから、それまでには起きといてくれよ。なるべく力でなんとかってのは避けたいしな。」


「審問っていうのは、いわゆる「異端くん」である俺に対してか?」


「まあそういうことだな。……なあ、異端よ。なんでお前が異端なのか、やっぱり勘づいてんじゃねえのか?」


「残念ながらそれは本当にわからないよ。ただ……」


「ただ?」


「ん〜……本当になんで俺が君達(・・)に異端なんて呼ばれるんだろうな。凡魂の人間なんか、ある意味全員が異端だし。」


「おいもう煽るのもいい加減にしろよ。頭はまわる癖にバカの真似すんな、覚醒前なら力の差が歴然なのはてめえなら判ってんだろ。なあ?




異端特魂(ヘレティック)」野郎が。」



 やっぱりな。



「知らないって言ってるだろ。出会い頭から乱雑に扱ってくれやがって、この______




「堕天使」どもが。」


眠かったです

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