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夫婦?いえ、兄妹です!  作者: 竜華零
5/5

2-B

 そこはどこかの会議室。


「どう思うね?」


 ブラインドの隙間から外の様子を窺いながら、立派なスーツを着た男――仮にAと呼ぼう――が、低い声でそう言った。

 表情は、深刻そうだった。

 今後を憂いている、そんな表情だった。


 対して、デスクを挟んで立っている男――こちらはBと呼ぶが――は、どこか困惑している様子だった。

 Aと比べていくらか気弱そうに見えるのは、その困惑した表情のせいか。

 室内が暑いせいか、あるいは他の要因が原因かはわからないが、汗を流している。

 それがまた、困惑と気弱さを印象付けていた。


「は……そうですな……」


 懐から取り出したハンカチで汗を拭いつつ、Bは言った。


「可愛い、のではないかと……」


 ぴくり、とAの肩が動いた。

 それをどう受け止めたのか、Bはまくしたてるように続けた。


「……可愛い、かね」

「は、はい……! まずお兄ちゃんを起こしてあげようという優しさ。そしてベッドに潜り込んで来る悪戯心。私が起きた時の悪戯が成功した子どものような笑顔。可愛すぎますねえ……!」

「そうだな。確かに可愛い」

「そうでしょう。そうでしょう……! それに重いと言われて頬を膨らませましたな。あれは反則技です! 私が会社に遅刻しそだと慌てる顔も反則技でしたな! それに何と言っても最後のおはようが」

「馬鹿者!」

「……!」


 不意の怒声に、Bが両肩を上げた。

 Aは気を鎮めるように嘆息すると、背中を向けたまま言った。


「確かに可愛い。しかし大学生にもなって、他人の、しかも男のベッドに潜り込んでくるのは不味いだろう」

「し、しかし兄妹ですし」

「お互いにもう良い年齢だ。慎みを持つべきだし、弁えるべきだろう。ここは兄として、毅然とした態度で臨むべきだ」

「な、なるほど……」


 ぐうの音も出ない正論に、Bは汗を拭きながら頷いた。

 肩越しにそれを見たAは満足そうに頷くと、再びブラインドの隙間から外を眺めた。

 その表情は決意に満ちていた……。


  ◆  ◆  ◆


「お兄ちゃん、明日も起こしてあげようか?」

「ぜひお願いします」


 やっべ。

言えるわけがないんだよなあ(え)

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― 新着の感想 ―
[一言] お疲れ様です(^^) ノンフィクションっていうジャンルがあったらよかったですねぇ。
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