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夫婦?いえ、兄妹です!  作者: 竜華零
4/5

2-A

 ――――重い。

 奇妙な重みを感じて、目が覚めた。

 目を開けると、まず目に入ったのは新居の天井だった。

 外は朝になっているのか、カーテンからは柔らかな陽光が射し込んできていた。


 起き抜けのぼんやりとした意識で感じたのは、やはり「体が重い」ということだった。

 息が苦しいとか、金縛りとか、そういう類の感覚じゃない。

 ただ単純に、何かが上に乗っている、という重さだった。

 そしてそれが何なのか、わざわざ確認しなくとも理解できた。


「……重い」

「あー、酷ーい。そんなこと言うんだ」


 視線を下げると、美少女がいた。

 それとも、もう大学生だから美女というのが正しいのだろうか。

 しかし自分としては、彼女はいつまで経っても「幼い」という印象が拭えなかった。

 だから美少女で良いのだと、そんな意味のわからないことを考えてしまった。


 陽光に透けるさらさらの黒髪に、ぱっちりとした目。

 すっと通った目鼻立ちに、きめ細かで白い肌。

 華奢で、肩幅や腰など少し力を込めて抱き締めれば折れてしまいそうだ。

 そんな美少女の満面の笑顔が、起き抜けに見られるのだ。

 なるほど。重いと考えてしまう方が罰が当たるのかもしれない。


「重い」

「はああああっ!? ぐえっ」


 上に乗っていた妹を布団にくるんで、ベッドの端に転がした。

 まさに憤慨!、と言わんばかりに怒っていた妹だったが、今は布団の中でもがいている。


「こらーっ」


 と思えば、あっさりと布団を跳ね上げて来た。

 まあ、縛ったわけでもないから当たり前だが。

 妹は見るからにご機嫌斜めだった。きっとした目で俺を睨んで来たかと思えば。


「エプロン着けてるのに、お布団にくるんじゃダメでしょ!」

「ええ……」


 先に寝転んで来たのそっちじゃん……。

 喉まで出かかった言葉は、口には出さなかった。


「あっ」


 と声を上げて、彼女の方が離れてしまった。

 彼女は「大変!」と続けて声を上げると、ベッドから下りて。


「もうこんな時間! 遅刻しちゃうよ、お兄ちゃん!」


 と、いきなりバタバタとし始めた。

 クローゼットを開けた――それはもう、実に躊躇なく開けた――かと思えば、俺の着替えを引っ張り出したりした。

 もっとも、当の俺は頭を掻いて、実にのんびりしていた。

 それにむっとした表情を見せた妹だが、何かを思い出したのか、不意に破顔して。


「おはよう、お兄ちゃん!」


 と言って来た。

 俺はというと、やはり頭を掻いて「ああ」と応じるだけだった。

 この妹も、毎朝よくも飽きもせずに起こしに来るものだ。

朝起こしに来てくれるって、素晴らしいよね!

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