1-B
丸いテーブルに、4人の男がそれぞれ対角線になるように座っていた。
彼らは皆同じ容姿をしていて、客観的に見分けることは不可能だと思われた。
便宜上、彼らをA~Cと呼称する。
「あ~……」
そしてAはというと、テーブルに肘をついてうなだれていた。
低い声で「あ~」と唸ることを繰り返していて、かなり深刻な空気を醸し出していた。
「あああああ~~~~」
Aは椅子に背中を預ける形で、思い切り天を仰いだ。
そしてそのままの姿勢で、彼は呻くように言った。
「可愛すぎる……!」
「わかる」「わかる」「ヤバイ」
Aの言葉に、他の3人も大きく頷いた。
「え、見た? 何あれ、後ろから追いかけて肘のところちょんって何? あざとい? あざと過ぎない?」
「あざといとは何だ貴様! あの子がわざとやっていると言うのか!」
「落ち着け! 気持ちはわかるが落ち着け! そんなことより、俺の背中に隠れた方を議論しよう! あれは人が死ぬ極めて危険な行為だ!」
「そんなこととは何だ! それをいうなら肘ちょんこそ人が死ぬだろうが!」
「ええい落ち着け! 全員落ち着け、いったん黙ろういったん!」
言い争いを始めた面々を、Dがテーブルを叩きながら止めた。
「まったく、そんなことでどうするんだ。今日から一緒に暮らすんだぞ。いちいち騒いでいたら身が持たん!」
「え、一緒に暮らす? 一緒に暮らすの!? 2人で!?」
「そうだよ! むしろ俺と妹以外が当たり前の顔してリビングにいたら怖いだろうが!」
「それは怖いな」「怖いな」「あまつさえ妹が連れて来た男だったらヤバいな」
「「やめろお前」」
「だいだいお前、あれだぞお前!」
心からぞっとした表情を浮かべる者がいる一方で、テーブルを叩いて――いい加減に叩かれ過ぎてテーブル、ではなく手の方が腫れそうだ――言った。
「新婚さんだぞ!」
一瞬、沈黙が広がった。
他の面々はお互いの顔を見合った後首を横に振った。
「冗談に決まってんだろ」「現実見ろ」「解釈違い」
「言い方に容赦がない! さすが自分! でも妹も俺のお嫁さんになりたいって言ってくれてたしー!」
「いったい、いつの話をしているんだお前は……」
「良いか? ここはな、兄として妹を諭すべき場面だ。そういう冗談は良くないぞと」
「点数稼ぎ乙」「でも正論だな」「だろ」「ちっ、しょうがねえな」
ようやく意見の一致を見たのか、4人は大きく頷いた。
そしてその結論は、滞りなく口を吐いて出ることとなった。
◆ ◆ ◆
「へえ~、可愛らしい奥様ですね!」
「でしょう?」
あ、やっべ。
今後はA-Bの2話時間差投稿の形になります。
せっかくなので新しい表現に挑戦したいと思ってます。