マンションを買った。
いやー、社会人9年目(独身)でいささか冒険し過ぎたかとな思ったのだけれども、会社の独身寮の「入居は30歳まで」という規定を前に、思い切った次第だ。
賃貸というのも考えたが、あくまで俺個人の感覚だが、賃貸はいくらお金を払っても自分の物にならないので、損をしている気分になって仕方がなかったのだ。
とは言え、安い買い物でなかったことは確かだ。
正直なところ、契約して引っ越してくるまでの間に何度も不安になり、後悔もした。
大きく残高の減った預金通帳とローンの年数を考えれば、嫌でも憂鬱な気分になってくるさ。
ただ今では、やっぱり思い切って買って良かったなあ、と思っている。
「おかえりなさい、お兄ちゃん!」
それは、エプロン姿でドアを開けて出迎えてくれる妹の存在が大きい。
実の妹と買ったばかりのマンションで同居。最初は抵抗もあった。
しかしこうして笑顔で「おかえり」を言ってくれる人がいると、仕事の疲れも吹っ飛ぶような気がした。
会社の寮にいた時は、仕事で疲れて帰っても暗く寂しい部屋があるだけだった。
「今日の晩御飯はハンバーグだよ」
それに何と言っても、妹は物凄く可愛いのだ。
ぱっちりした目に小さな顔、背中まで伸びたサラサラの黒髪、何より笑顔だ。
気立ても良いし、家事全般も得意で、妹が来てから生活面で不満を1つも感じたことはない。
そんな妹に「お兄ちゃん」と慕われて、嫌いになる男がこの世にいるのか? いやいない。
可愛い妹との同居生活。世の男どもにあえて言おう、羨ましいだろうと!
俺は勝ち組。絶対的勝ち組……!
……ただ。
ただ、たった1つだけ問題があった。
「やあ、羨ましい」
それは。
「仲が良くていいですね、新婚さんは」
それは、近隣住民が俺達のことを夫婦だと思い込んでいる、ということだ。
最後までお読みいただき有難うございます。
妹ってかわいいですよね。
私はこの作品で、それを皆さんに改めて知ってもらいたいのです(え)
それでは、また次回。