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見た目は美少女、中身はおバカな女子高生の吹奏楽ライフ!〜オーボエを奏でる元野球少女〜  作者: 大橋 仰
短編集

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武者小路さん家にお呼ばれ 後編


 武者小路さんのお母さんを先頭に、アタシたちは武者小路さんの部屋を目指して長い廊下を歩いている。

 それにしても、この廊下どこまで続いてるんだろう、などと思っていたところ——


 あっ、あれは!

 アタシは、デッカい鹿の頭を見つけてしまった。

「スッゲー! 見てアンズ、鹿だよ、鹿の燻製くんせいだよ!」


「……うん、立派な剥製はくせいだね」

 アンズが素早く修正してくれた。

 流石はアンズサマだ。


「そう、それだよ! アタシ、鹿なんて小学校の修学旅行で行った宮島でしか見たことないよ!」


「中学の修学旅行で京都と奈良に行ったでしょ? 奈良公園にも鹿はいたよ?」

 チラッとアタシたちの前を歩く武者小路さんのお母さんの様子をうかがいながら、アンズが控えめな声で応えた。


「あれ、そうだっけ? あ、思い出した。アタシ、奈良公園で鹿せんべいを食べたんだった。ねえ、武者小路さん知ってる? 鹿せんべいって、あんまり美味しくないんだよ?」


「私の記憶が正しければ、奈良公園の鹿せんべいとは、鹿が食べるものだと思うのですが?」

 武者小路さんが首をかしげながら、エレガントに答える。


 少し躊躇ためらった様子のアンズであったが、意を決した様子で口を開いた。

「その…… ナツったら、調子に乗って鹿の真似をしてたの。そうしたら観光客の人が面白がって、鹿せんべいをくれて……」


「そうそう。そしたらさあ、せんべいを取られた鹿が怒ってアタシに突進してきたんだよね」


「え、それからどうなったのですか?」

 武者小路さんは興味津々といった様子だ。


「ん? 別に何も。アタシが鹿とせんべいの取り合いを始めたら、警備員みたいな人が驚いて飛んで来たぐらいかな。あ、でもその警備員みたいな人はすごく怒ってたね」


「担任の先生は泣いてたけどね……」

「もう、アンズってば。それは言わない約束でしょ、アハハハ!」

 アタシはお腹を抱えて笑ったんだけど、アンズは『しまった!』と言いたげな顔をしている。


 あっ、今まで黙ってアタシたちの前を歩いていたオカーサマが突然立ち止まり、そして振り返った。

「さ、最近の女子高生の会話って、とてもバイオレンスでエキセントリックなのね。やっぱり今どきの若者はみんなそうなのかしら……」


「いえ! あの…… ちょっとヤンチャで、少し風変わりなのはナツだけで、篤子さんはとても普通だと思います!」

 アンズの声が少しうわずっている。

 何故だ?


「え? でもサチさんだって、前の年に鹿とせんべいのぶん取り合戦をしたって言ってたよ?」

 サチさんだって、アタシと同じようなモンだと思うんだけど。


「あの、ちょっとヤンチャで少し風変わりなのは、ウチの中学の生徒だけで、篤子さんはとてもノーマルだと思います!」

 すかさずアンズが修正を試みる。

 大事なことでもないけどもう一度言おう。何故だ?


 ここで、またもや首を傾げた武者小路さんが、疑問の言葉をアンズに投げかける。

「あら、でもアンズさんもナツさんやサチ先輩と同じ中学の出身でしょ? アンズさんはとても常識的な方だと思いますよ? 流石に常軌を逸脱するような行動をとられるのはお二方ふたかただけなのでは?」


 すべてを諦めたような表情をしたアンズが、武者小路さんの問いに答えるため重そうな口を開いた。

「…………トロンボーンをやってるモモコも同じ中学の出身なの。モモコは鹿せんべいをお土産に買って帰って、おうちの人に食べさせたって言ってたから……」


「そうそう。次の日、学校に来たモモコは、『もう! みんな、なんで教えてくれなかったのよ! 普通、鹿せんべいっていったら、有名なお土産だと思うじゃない!』って、わめいてたよね。あ、言っとくけど、アタシはちゃんと鹿のエサだとわかった上で食べてたからね?」


「知った上で食べるのと、知らずに家族のみなさんに食べさせるのでは、どちらの方が罪深つみぶかいのでしょう」

 真剣な表情でつぶやく武者小路さん。


「オモシロ具合で言うなら、アタシはモモコに負けたと思ったね。ねえ、アンズはどっちの勝ちだと思う?」


「まあ、モモコの話を聞いて、担任の先生も爆笑してたから……」

 うつむき加減で答えるアンズ。


「担任の先生がお幸せそうで、ホッといたしました」

 そう言うと、武者小路さんは朗らかに笑い、アンズは苦笑いを浮かべた。


 ここで、今まで黙ってアタシたちの話を聞いていたオカーサマが、

「ね、ねえ篤子。あなた…… 高校生になって、随分変わってしまったのね……」

 と、言ったんだけど——


「もう、大袈裟ですよ、お母様。ナツさんは人を楽しませることに何よりの喜びを感じておられる素晴らしい方で、アンズさんはそんなナツさんの良き理解者でいらっしゃるとてもお優しい方ですのよ。私はそんなお二人とお友達になれて、とても幸せですの」

 すごく幸福そうな笑顔でそう断言した武者小路さん。


「そ、それならいいのですけど…… それではわたくし、これで失礼しますね。お二人とも、どうぞごゆっくり……」

 心なしか、生きる意欲をゴッソリと奪われたような顔つきで、武者小路さんのお母さんは廊下を引き返していった。


「なんだかゴメンね……」

 またもや小声で武者小路さんに謝るアンズ。


「いいんですよ。ああ見えて、ウチの母は順応性が高いので」

 フフっと笑いながら、武者小路さんも小声でつぶやいたのだが……


 いったいこの二人は、何の話をしているのだろう?

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