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見た目は美少女、中身はおバカな女子高生の吹奏楽ライフ!〜オーボエを奏でる元野球少女〜  作者: 大橋 仰
コンクールへの道 編

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決戦前夜ー瞳の誓いー 中編

「なんだか眠れなくてね」

 部長が小声でつぶやいた。


「あっ、それじゃあ、アタシたちとおんなじですね」

 アタシがそう言うと、

「もう、ナツさんったら! 1年の私たちと、3年の鷹峯たかがみね部長とでは、明日の演奏の意味合いが全然違うでしょ!」

と、武者小路さんからお叱りの言葉をいただいた。


「いいのよ、武者小路さん。慣れてるから。私と夏子は同じ『ダブルリードパート』だから、ほぼ毎日顔を合わせてるし……」


「ご心中、心よりお察し申し上げます……」

「ちょっと、どういう意味よ!」

 まったく、武者小路さんは失礼な人だな。


「ひょっとして、武者小路さんも興奮してるの?」

 部長の問いかけに、困惑の表情を浮かべる武者小路さん。


「夏子は演奏会の前日になると、興奮して眠れないことが多いって言ってたから…… あ、ごめん。そんなわけないよね」


「確かに私はナツさんの親友ですが、人格を形成する精神構造は根本的に全く異なっているとお考えいただければとても幸いです」


「なんだよ! 結構似てるとこもあるじゃない! 二人とも財布持ってないとことかさあ!」

 それにみんなから『無自覚にボケをかますところが似てる』って、よく言われるよ?



「え? 二人ともお金を持たずに自販機コーナーに来たの? ふふっ、おバカとセレブって意外と行動パターンが似ているのかも知れないわね」


「武者小路さん、おバカって言われてるよ?」


「………………はいはい。私が『おバカ』で、ナツさんは『おセレブ』でいらっしゃるんでしょうね。まったく、ナツさんはいつも無自覚にボケをおかましになるんだから」


 ほら、やっぱり似てるじゃないの。って、あれ? アタシ、今ボケたのか? 無自覚にボケたのか? まあ、どうでもいいや、そんなこと。



 部長がホットココアを奢ってくれることになり、アタシたち3人は自販機の前にあるソファーに腰をかけた。


 ココアを飲みながら、鷹峯たかがみね部長が何気ない様子でつぶやいた。

「なんかね、ひょっとしたら明日で終わりかもしれないって思うとね…… 冷静ではいられなくなっちゃって」


 もし仮に、明日の四国支部大会で全国大会行きの切符を逃すと……

 3年生たちは明日で吹奏楽部を引退することになる。


「ちょっと、なに言ってんですか部長! アタシは明日で終わりだなんて思ってませんからね! 絶対部長たちと一緒に全国に行くんですから!」

 興奮気味にアタシは叫んだ。


「ちょ、ちょっと、ナツさん! 先輩に失礼でしょ!」

「ふふ、いいのよ。慣れてるから」


「あの… ご心中、心から——」

「もういいよ!」

 ちょっと早めにアタシはツッコんだ。



「ふふ、やっぱり夏子はそうでないとね。ねえ、武者小路さん、あなたはどう? 私たち全国に行けると思う?」


「この件に関しましては誠に不本意ながら、私もナツさんと寸分すんぶんたがわず同じ気待ちです。私も明日で終わりだなんて、まったく思っておりません」


「もし、自分が失敗しても?」

「はい。たとえ私が演奏をしくじったとしても、それぐらいで我が校吹奏楽部の全体評価が下がるとは思えません。それほど、先輩方の演奏技術、表現力は素晴らしいと思っています」


「……そうね。じゃあ私は、全国大会の会場付近の宿舎でも調べておくことにするわ。ありがとう、武者小路さん」

 そう言うと、部長はココアの飲み口に、そっと口を添えた。



 しばらくして——


 アタシたちが話をしているソファー目掛けて、のっしのっしと人影が近づいて来た。

 辺りは暗いけど、この人が誰かということはわかる。


 我が部一の高身長の持ち主、コントラバス担当、3年生の剛堂ごうどうほまれ先輩だ。

「なんだ、バカな会話が聞こえたと思ったら。お前たちだったのか」


「あっ、先輩、こんばんは!」

「剛堂先輩も、まだ起きていらしたのですか?」


「ああ。なんだか眠れなくてな。楽しかった吹奏楽部生活も、ひょっとすると明日で最後になるかも知れない…… なんて思ってな。私らしくないだろ? がっかりさせてしまったかな?」


「まったく…… ほまれは繊細なんだから。ボクには理解できないね」

 突然、剛堂先輩の背後から声が聞こえた。


「うわっ! ビックリした!」

 大柄な剛堂先輩の後ろに隠れて見えなかったのだが、その背後には、同じく3年生でトランペット担当の清風きよかぜすず先輩がいたようだ。



「こ、これは清風きよかぜ先輩! こ、こんばんは!」

 憧れの清風きよかぜ先輩の突然の登場に驚いた武者小路さんが、慌てて先輩に挨拶の言葉を向けた。


「ちょどいいところに来たわね——」

 鷹峯たかがみね部長が口を開く。


「——さっき後輩二人にココアを奢ったんだけど…… 私はウチのパートのおバカに奢るから、すずは自分のパートのセレブに奢ってあげることにしたら? というわけで涼、120円もらえるかしら?」

 損失補填するつもりか? アタシの感動も120円分返してくれませんか?


 いや、そんなことより、部長は重大な過ちを犯しているぞ。ここはひとつ、訂正して差し上げよう。


「部長、おバカとセレブが反対ですよ?」


 アタシがそう言うと、

「アンタ、そのネタ引っ張るわね…… あれ? ひょっとして…… 夏子、アンタ、セレブの意味を知らないの!?」

と、驚いておられるではないか。


「ちょ、ちょっと! それぐらい知ってますよ! シマシマって意味でしょ!?」


「シマシマ………… って何?」

と、部長。

「島が二つあるのか?」

と、剛堂ごうどう先輩。

嗚呼ああ、ボクは夏子の芸術性についていけない……」

と、清風きよかぜ先輩。


「あの、ひょっとして…… シマウマのことを英語で『ゼブラ』と言いますので、『セレブ』と『ゼブラ』を、その……」

 武者小路さんがつぶやくや否や——


「「「ああーーー!!!」」」

 先輩たちがどよめいた。そして——


「相田…… お前がそこまでおバカだったとは……」

と、哀愁(ただよ)う表情の剛堂先輩。


「夏子は言語的芸術性もバツグンのようだ!」

と、興奮気味の清風先輩。


「ボケるんなら、もっとわかりやすくボケなさいよ! アンタ、大喜利をナメてんの!?」

と、よくわからいことを言う鷹峯部長。


 正解は…… 剛堂先輩でした!

 アタクシ、シマシマ模様のパジャマを着たアタシが『セレブ』だと思ってました……

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