22.冷凍西瓜ポーション砂山を添えて
第二階層。
砂漠の大地が霜が降りたように白く凍っている。
草木1本生えることの無いその光景が、永遠を彷彿とさせるほど遠くまで続いていた。
あまりの広さに本当に地下かと疑いを持つほどだ。
勿論、洞窟内に変わりはないので辺りは暗い闇に包まれている。
猫は元々砂漠の生き物だけど、こうも寒いと厳しいものがあるよね。
凍てつきそうな肉球をたまに火魔法で温めながら進んでいく。
本当なら一旦第一階層に戻って策を練りたいところだけど、ダンジョンがそれを許さなかったのだ。
2階層に降りた途端、1階層への通路を鉄格子で封鎖された時は泣きそうになった。
てか、泣いた。普通に泣いた。
こんな鬼畜な仕様にしたのは誰だよって、作者にクレーム入れたくなったね。
まぁ、その作者を知ってる私からすれば腹立たしいことこの上ないのだけれど。
顔を知らないから顔見知りではないけど声は覚えた。
もしあの声で喋る人物に遭遇したら極上の猫パンチをお見舞いしてやろう。
◆◇◆◇
極寒に体力を奪われ、霜に晒された肉球も悲鳴をあげている。
喉が渇いた。
砂漠を原産とする猫はあまり水分補給をしようとしない。
そのせいで尿路結石になりやすい種族でもあるのだが、乾くものは乾くのだ。
これまでは水魔法を使って潤していたけど、諸事情でそれも不可なのです。
悲観することなかれ。なんとこの階層、後戻り出来ないのにつけ加えて魔法系統が一切使えないのだ。
私が持ってる魔法は4種類。
体を洗ったり、喉を潤したりしていた水魔法。
遠距離からの不可視攻撃として使っていた風魔法。
料理、近距離火力として使っていた火魔法。
後は未使用の闇魔法。
これらが全てが行使不可。
おぅ……。
痛手過ぎて辛い。
まだ1度も戦闘にはなっていないが、じきに厳しい戦いを迫られることは想像にかたくない。
でも、私、挫けない。
これまで上で散々やられて来たんだ。
まだやれる。
地に張り付く霜を舐めれば、溶けて水分にはなるのだろうけど、どうしても砂が混じる。
サバイバルでも、喉が渇いたときに水分を奪う食べ物は御法度だし、何より砂なんて食べる文化なんて持ち合わせてない。
鳥じゃあるまいし、石ですり潰さなくても私には立派な牙があるのだ。
誰に自慢するでもなくニィッと犬歯をチラつかせながら進む。
途方もなく歩いたが、まだ端には辿り着かない。
なんだか鬱になりそうだよ。
暗い気持ちを胸に押し込み、それからまた暫く足を動かしていると、ようやく何かが見えてきた。
蔓に実った黒いギザギザ模様のある球体。
言わずと知れた野菜、西瓜だ。
なしてダンジョンに西瓜?
確かに西瓜は、砂漠から鳥経由で運ばれたものだけど、ここは地下だよ?
わけがわからないよ。
最早ダンジョンマスターの頭を疑うレベルである。
かかりつけの医師に診てもらった方がいいね。きっと。
あまりにも怪しいので、スルーしたいところだが、ここまで歩いてこれ一つしか攻略の手がかりになりそうなものが無いのだ。否が応でも何かしら試さないと、また地獄の徒歩レースが始まる。私は疲れたんだよ。猫に睡眠時間削減させるなんていじめなの?
考えるよりも先に体は動き、西瓜を弄くり回し始めた。
コロコロ、コロコロ。
転がる西瓜を追いかける子猫。
なんとも微笑ましい光景に頬が緩みそうだが、忘れてはならない。ここはダンジョンである。
忘れてない?
私だけ?
あっそう。
ハッとして、楽しくなりかけていた心を戒める。
改めて観察。
よく確認すると、西瓜には南京錠がしてあり、どうにかすると宝箱のように開きそうだ。
躊躇うことなく爪で切断。
中には小瓶が一つだけ収納されていた。
ピンク色の液体の入ったガラス製のビーカー。
匂いは甘く、透き通った液体に害は無さそうだ。
鑑定!
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アイテム名:ポーション(呪い中和液)
作者:ウルト・ドラル
効果:受けた呪いを多少緩和する。
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なるほどわからん。
でも、害はないっぽいし飲んでも大丈夫だよね?
喉がサハラ砂漠なんですけれども、平常時に飲むと死ぬとかないよね?
ビーカーの口に詰められていた謎の蓋を抜いて、パッチテストしてみる。
まずは腕に1滴落とす。
毛むくじゃらなので肉球でゴシゴシ。
暫し経過観測。異常なし。
続いて唇に少量付着させて、経過観測。
異常なしっと。
少し口に含んでみる。
あ、口当たりいい。軟水みたいに軽くてほんのり花の蜜の味がする。
暫くしても問題なさそうなので喉を潤せる程度の少量だけ飲み、残りは1階層から持ってきていた水袋に移し替えて残しておく。
まだ、何とかやって行けそうだ。




