99 【魔王side】そのころの魔王城⑨
「ふん……なんともあっけない男よ」
ぐしゃっ……
魔王サタナスはボロ雑巾よりもぐちゃぐちゃになったシシオウの死体をつまらなそうに踏み潰した。
散々泣きわめいて命乞いをする様や、本来仕えていたはずのミーカイルのスキルやら性癖やらを無理矢理にシシオウの口から暴露させたのは実に楽しい見世物だった。
その拷問シーンは映像と音声を記憶することが出来る魔水晶に保存してあるから、お礼代わりにミーカイルに送り付けてやってもいい。
ついでにヤツが探しているという守護天使を壊した時の映像も一緒に付けてやろう。
「くくく……せめてもの余からの贈り物よ」
おそらく、二つの感動巨編に、心の琴線をかき乱され、興奮で胸を焼き焦がし、滂沱の涙を流すはずだ。
しかし……
シシオウのヤツはこの手の拷問に対しての耐久力が無いのか、案外あっさりと壊れてしまったのは予想外だった。
「数年は持つと思ったが……まぁ、良い」
サタナスはシシオウの身体からえぐり出した魔核を握り締め、にんまりと嗤った。
ルシーファ、マドラ、シシオウ……と、これで、高位魔族3体分の魔核が揃った事になる。
サーキュのヤツは行方が知れないが、これから行う魔術に関しては、3体分の魔核で十分だ。
また、3体の魔族の心臓を喰った事で、彼等の特殊能力のいくつかと記憶の一部などの情報も得ている。
「……すでに、あの先代魔王が神上がりしてから……それ相応の刻は過ぎておるはず。そろそろあの憎たらしい小男への加護も切れておろう」
忌々しいことに、先代魔王は自身の子孫らが仲違いしないよう、お互いがお互いを決定的に破壊できないような加護をかけて逝ったのだ。
ただし、その呪いであっても、これだけの質を持った魔核と、己の力を使えば破棄が可能なはずだ。
魔王サタナスは、魔王城の床に、殺した3体の高位魔族の血で魔法陣を描く。
その中央にその魔核を置くと、徐々に己の魔力を注ぎ込み始めた。
膨大な量の魔力に反応し、魔核が、メロ、メロと青い炎を上げはじめる。
と、同時に魔法陣に禍々しい光が渦巻きだした。
マドラの記憶情報によると、どうやらカイトシェイドのヤツは自身のダンジョンを創り始めているらしい。
「ダンジョン・クリエイト」しか使えるスキルの無い無能男の事。
ダンジョンを創り出している事はある意味、想定内。
だが、いくら未熟で小さいとは言え、ダンジョン作成は空間支配の一種。
しかも、その主である魔族を、この場へ無理矢理呼び出す事は、普通の召喚魔法では不可能だ。
そこで、この3つの魔核が意味を持って来る。
……これらを代償とすることで、強制的にカイトシェイドの本体を己の目の前に、加護を打ち消した状態で呼び出す事ができるのである。
「くくく……ははははは!! 時は満ちた! さぁ、戻って来い、カイトシェイド!!」
魔王軍四天王と呼ばれた部下の内、3体分の命を使い捨てる事になるのは、多少、勿体ない気がしなくもなかったが、あの程度の力の魔族など、他にもいるだろう。
次はシシオウの上司だというミーカイルを己の下にしてやってもいい。
「余にひれ伏し、絶望し、そして滅ぶがいい!! 【強制召喚】カイトシェイド!!」
ゴォウッ!!
魔核が燃え尽きると同時に、ひと際大きく魔法陣が輝いた。
その瞬間、カイトシェイドの本体が、はるか遠くハポネスのダンジョンから強制的に転移して来た。
「くくくくく……ハーッハッハッハ……んは?」
だが、魔法陣の中央に鎮座していたのは一つの樽。
「な、なんじゃ?! これは……!?」
それは、間違いなく、カイトシェイドの本体だ。
ただし、大量に切断され……何故か腐りかけの左手の山。
「ルヴオオオオオオオオッッッ!!!!」
魔王サタナスの発狂したような叫び声が、さびれた魔王城に響き渡った。
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