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76 アブラタンク派を断罪しよう!


 カシコちゃんが【風魔法】で、厳かな印象の音楽と、爽やかな気分になる花の香りを広場中に広げてゆく。

 それに併せ、ルシーファのヤツが懐から取り出した小さな白い花をまき散らす。


 なお、これ……元は女性用のトイレに飾られていた花である。

 このために、花弁だけをカシコちゃんが毟り取って来たのだそうだ。


 その白く小さな花びらが風に舞い、広間に広がる。


「「「おおおおお……」」」


 たったこれだけの事なのに、巻き起こるどよめき。

 何でも、前回だか、前々回だか知らないけど、花弁をばら撒いた天使ヤツが居たんだと。


 しかも、その時任命された聖女が、大魔王を封印しているらしく、この行動は縁起が良いと伝承があるそうな。

 ……あほくさ……と、思わなくも無いが、多くの同族を取り纏める以上、それなりに演出が必要なのは、俺もルシーファのヤツもよく分かっている。


 ほら、一応、俺達『魔王軍四天王』でしたし?


 神官たちが静まったのを確認して、厳かにルシーファのヤツが口を開く。


「いと高き天にまします、我らが父・スゴピカ様の命を受け、わたくし、光の天使ルシーファは、勇者・カイトシェイドの守護天使となることをここに宣言いたします」


「「おおおおおお……!!」」」


 堂々とした態度に凛とした声色。

 流石、ルシーファ……コイツ、こーいう演説、得意だったもんな……

 ちゃっかり一人称も「わたくし」とか言ってるし。それだけで雰囲気ちょっと変わるもんな。


 まさか、これが、空も飛べないヘッポコ天使とは誰も思うまい。


「そんな……! では、何故あのような小汚いガキ……ごほん、あのような幼い姿で降臨されたのです!?」


 アブラタンクのヤツが脂汗交じりの蒼白な顔で叫ぶ。

 その様子を、ルシーファは、慈愛の微笑みを浮かべて口を開いた。


「今回、わたくしは、通常より幼い姿・異なる降臨場所・そして勇者への情報も、数少ないものしか伝えませんでした……ですが、これは()()()()()()()()()()()()()()()によるもの……」


「な、なんと……」「おお……」「だが、何故そんな……?」


「我らが父・スゴピカ様は憂いておいでです。聖地とも呼ばれているこの『中央神殿』が、真の教えを忘れ去っていることを……」


 そう言って胸元で手を握り締め、俯くルシーファ。

 長いまつげに光が反射して、ちょっと涙ぐんでいるように見えなくもない。

 光の加減で虹色に輝くプラチナブロンドの長いストレートヘアが無駄なくらい絵になっている。

 

 神官達の中には何やら感動で瞳を潤ませているヤツまで居るぞ。

 ……なるほど、カシコちゃんのナチュラルメイク術はすごいな。


 そのルシーファの一言に、マチョリダ一派が鬼の首を取ったように口々にアブラタンク派への不満を一斉に口にする。

 

 曰く、「修行の場に異性を連れ込んで祈りを忘れ連日いかがわしい行為にふけっている」

 曰く、「神殿の運営資金を横領し、私腹を肥やしている」

 曰く、「賄賂を贈らない生真面目な神官達に難癖をつけ僻地へと異動させている」


「ええい!! そんな事は出鱈目だっ!! 全部嘘だ! 何が天使だ! 第一、私の【嘘発見】のスキルでは……ッ!」


 ああ、そう言えば、アイツそんな能力が有ったな。


「貴様のスキルなど信用できるか!」「そうだ、そうだ!!」「天使様が嘘を言うはずがない!」「スキルが有るからって、自分の都合の良いよう捏造しているんだ!!」


 しかし、案の定……神官たちから信用されていない。

 せっかくのレアスキルだって言うのに……これが信用されたら、この茶番はアウトだったはずなのに。

 うん。日頃の行いって大事ダネー。


「くっ……た、確かに私の行動が誤解されやすいことは承知しております」


 アブラタンクはしゃらり、と宝石だらけの杖を握り締め、叫び声をあげる。

 おお、どうやら、コイツもこっちの茶番に乗った上で論破しないとダメだと気づいたようだ。


「しかしながらッ! 組織の運営とは奇麗事だけで進むものではございません! 金で態度を変える商人共! 欲望が満たされねば神をも愚弄する愚民共! そんな輩の欲求を多少なりとも満たしてやらねば! 信仰で腹は膨れぬのです!!」


 信仰で腹は膨れない、って部分だけは同意できるな。


「それに、この『カイトシェイド』は、ハポネスとか言うふざけた街でしか魔法が使えない、と! そんな輩を恐れ多くも誉有る『光の勇者』などに任命したところで、どうやって東西南北に居を構えていると言われる魔王共を倒すのです!」


 よし! その言葉を待ってたぜ!!



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