75 茶番劇を始めよう!
どぉんっ! どごんっ! ばがぁんッ!!
「うわぁっ!?」「な、何だっ!?」「天使様のお部屋が……!」
俺が張った防御結界の真上では、ルシーファのヤツがわずかに光を放って祈りのポーズで待機している。
なお、部屋の壁や天井を叩き壊しているこの魔法はカシコちゃんのものだ。
うまい具合に俺達には瓦礫が掛からないように吹き飛ばしてくれている。流石、S級。
俺は、ボーギルから借りた魔法剣を腰に佩いて、宙に浮くルシーファのヤツに跪く格好で、セリフの番が来るまでは待機。
ぶっちゃけ、これからやるのは狂言演劇だ。
演目は「天使降臨と勇者誕生、そして腐敗し極論化した上層部の断罪」だ。
多少、魔法を使う関係上、ダンジョン・エリアから外に出れない俺。
成長にほぼすべての魔力を使い尽くしているので、発光くらいしか使えないルシーファ。
そんなハリボテも良いところな俺たちをそれっぽく演出するのは魔法担当カシコちゃん。
台本・脚本はボーギルだ。
ルシーファに至っては【飛行】すら自力では無理なので、俺の防御結界の上に浮いてるっぽいポーズで、ちょこんと座っているからな?
まぁ、カシコちゃんの爆撃による風もあるし、不可視結界だから、ぱっと見はちゃんと飛んでいるように見えるけれども……
俺は、そっとボーギルから借りた剣に手を添えた。
なお、この剣、エンチャントと言って、色んな魔法を剣に乗せて属性剣を作れるというものらしい。
おそらく、今頃、ボーギルのヤツが神殿中を駆け巡り『天使様が覚醒なされた!』『天使様の寝室の見える広間へ集まれ!』と声をかけまくっているはずだ。
ダンジョン・エリアは動かせない以上、神官共をこっちに集めるしか方法が無い。
まぁ、でも、これだけ派手に、ぼっかん、ばっこん、やってれば、遠からずマチョリダ一派もアブラタンク一派も現れるに違いない。
その目論見通り、すっかり見通しが良くなった天使様のお部屋の手前の大広間にぞくぞくと神官たちが集まって来ては、光り輝く天使様(笑)を目にして息を吞む。
そして、誰かが「天使降臨!?」と呟いた声がさざ波のように広がり、現れた神官たちも、俺と同じようにルシーファに向かって何か祈るようなしぐさをしてから、跪き始めた。
「ええい! これは一体……ッ!? ま、まさか!!」「一体何事……ッ!? おおっ!! これは……!」
左右からナイスなタイミングでアブラタンク一派とマチョリダ一派が現れた。
その顔に浮かぶ驚愕の色は同じだが、片や絶望と敗北の眼差し、片や喜びと勝利の笑み……と、対照的な感情を浮かべている。
「控えよ! 天使様の御前であるぞ!!」
俺は、呆然と立ったままだったアブラタンクとマチョリダを一喝する。
「は、ははぁっ!!」
場の雰囲気に飲まれ、一斉に跪き頭を下げる神官達。
これで、役者はそろった。
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