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66 マッチョ神官と生臭ボウズ


 ま、実際、俺はダンジョン・エリア(ハポネス)の外では一切魔法は使えないしな。

 嘘は言っていない。


「ほほほ! 私のスキル【嘘発見】にも反応が無いと言うことは、彼は嘘をついてはおりませんな!」


 だが、その言葉を聞いた二人の神官の反応は何故か真逆だった。


 生臭ボウズの方は勝ち誇ったような厭らしい笑みを浮かべ、マッチョ神官の方は、苦虫汁を口に含んだかのような困惑の表情だ。


 なんだ? どういうことだ?


「ほっほっほっ……! やはり私の言ったとおり、マチョリダ殿の部下が拾って来た小汚いガキが言うことなど、当てにはなりませんな!」


「アブラタンク殿! 恐れ多くも天使様に失礼な事を申すでないぞ!」


 どうやら、マッチョ神官の名前がマチョリダ、生臭ボウズの名前がアブラタンクと言うらしい。


「第一、おかしいと思ったのだよ。本来ならばココ、中央神殿・光の間に降臨なさるはずの天使様が、なぜ、あんな街から離れた森の中にいらっしゃったのだ!?」


「ふん、アブラタンク殿のような我欲に塗れた輩が闊歩する伏魔殿になど、清浄なる天使様が降臨されたいと思う訳があるまい! 我ら神官こそが、真に欲望を脱ぎ捨てスゴピカ様への信仰心を示さねば此度のイレギュラーが通常のものとなりましょうぞ!」


 ええええ……?

 何か、俺たちそっちのけで二人で口喧嘩を始めちゃったんですけど……


 なんとなく二人の話す内容を一言でまとめるとこうである。


 ズバリ!

 今回、現れた天使を『天の御使いである天使様』として教会が認めるか・否かで、揉めている! だ。


 どうやら、今回の天使、教会としてはかなりイレギュラーだったようだ。


 まず、見た目も能力も幼すぎて弱すぎる点。

 本来、天使とは、まだ経験のない若い勇者や聖女を守る義務があるはずなのに明らかにそれが難しい。

 次に、本来は勇者か聖女を具体的にーー「○○という街に生まれ、××をしている、誰それの子・▽▽」みたいな感じで指名するはずが、『カイトシェイド』の名前しか分からないと言っている点。

 そして、降臨地点が今までの天使たちとは異なる点。

 さらには、天使であれば簡単にこなせるはずの「聖水づくり」ですらままならない点。


 そこに来て、この「修行に命を懸け、クソ真面目で融通の利かないマチョリダ派」と「権力を笠に着て贅沢三昧、腐敗の味をしめているアブラタンク派」の間の権力闘争が勃発中らしい。


 問題の天使様を見つけたのはマチョリダ派。

 このイレギュラーな天使を正式に『神の御使い』として認めさせれば、当然、そちらの派閥が組織の上層部を支配できるらしい。


 そのため、マチョリダ派は勝手に『天使降臨』の宣言を出し、カイトシェイドの名を持つ人間探しを積極的に行っている。

 ウチの領主当てに手紙を出したのも多分、こっちの一派だろう。

 一応、正式にそれっぽい勇者か聖女が見つかれば『御使い』としてゴリ押しすることも可能なようだ。


 逆にアブラタンク派は候補者たちに難癖をつけては突っぱねているらしい。

 つまり、俺が肩入れするならアブラタンクの方である。


 ……でも、何か、嫌だな……コイツに肩入れするの……

 だって、例の天使様とやらを『小汚いガキ』と罵りながらも、御使いとして認められなければ、自分の性奴隷おもちゃにしたいっていう欲望が、言葉の節々から見え隠れしてるんだよな。

 本当にコイツら聖職者なのか?


 二人の口喧嘩はヒートアップの一途をたどっている。

 あのー……神殿内のマウント争いとか……心底どうでもいいんで、すみやかに帰らせてください……


 つーか、ルシーファのヤツ、何考えてんだ!?


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[気になる点] ん? ルシーファだって確信したのかな?
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