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50 因果は巡る!


「ふっ……木の手甲だと!? 愚かな! ふはははは!! これを見よっ!」


 男が首にかけているネックレスから禍々しいまでの魔力が放たれている。

 なるほど。

 オメガを操り、アルファと互角の肉弾戦を繰り広げることができるってスペック高いヤツだな、とは思っていたが……魔法の能力部分は借り物って事か。


 ……あれ? でも、あの目玉みたいなデザイン、どっかで見たことがあるな……


「ケッ……気味の悪ぃ目玉だ」


「これは『邪竜眼』! 魔龍王マドラ様より俺様が直々に賜った魔力増幅アイテムだ!!」


 あぁ、マドラのヤツが持ってた悪趣味なアイテムだったのか~……どうりで。見覚えがあるはずだ。

 マドラのヤツ、魔法みたいな細かい作業は苦手だから、ああいうアイテムを結構ため込んでいたはず。


 つーか、マドラの部下しりあいに、こんな性格が破綻した人間……居たんだな。

 もしかしたら、コイツの嗜好の歪み方はあの魔王並かもしれない。

 ……なんか、意外だ。


 だって、マドラのやつ、どっちかというと「せんりゃく? なにそれ、おいしいの? 戦い? 正面からぶっ叩いて、ぶっ潰すよ?」が大正義の、おあたまが気の毒な脳筋バカだし。


 ……でも、冷静に考えたら、今の四天王だと、最古参がアイツなんだよな。

 もしかしたら、意外と顔も広いみたいだし、馬鹿のフリができる賢い奴なのかもしれない。


 こんなにずる賢い暗殺計画を練れるようなヤツと付き合える知能は無いと思っていたけど、少し考えを改めよう。

 まさか、あれだけの魔道具を貸し与えておいて、存在をすっぽり忘れる程バカではあるまい。

 

「なぁ、オメガ……」


「な、なに?」


「あの気味悪い目玉、眠らせてやれよ。多分、お前なら出来るぜ?」


 俺は、隣で震えているオメガの背中をポンポンと優しく叩きながら、ニヤリと笑う。

 あの目玉ネックレス、魔力増幅効果は目を開いていた時だけだったはず……


 その間にも、アルファとゲドーダの戦いは続いている。


「はぁぁっ!!」


 がいんっ!!


 アルファが手甲でヤツの剣戟をはじき返す。

 その隙に、身体を捻り、ゲドーダの顔面へ渾身の蹴りを叩き込む。


 しかし、ゲドーダのヤツはその一撃を、顔を反らせて避ける。

 驚きのインナーマッスルだ。


 うん、やっぱりコイツ……本質は魔法使いじゃ無いな。


「……チッ!」


 どうやら、至近距離は埒が明かないと思ったのか、ゲドーダのヤツが大きく距離を取る。


「焼け死ね! 地獄の業火よ……炎魔法【地獄煉ヘルファイア!】」


 ゲドーダの声に合わせ、首飾りの目玉が発光した。


「くそっ……!」


 魔法攻撃に対してはそれほど耐性がないアルファは、回避一辺倒だ。

 距離を取られると、なかなか攻撃手段が無い。

 これを延々とやられたら、多分、アルファが持たない。


 さて、どうしたもんか……俺が手を出したら、アイツ、ぶち切れそうだもんなぁ……


 その様子に、オメガがゆらり、と立ち上がり、ぼんやりとその手をゲドーダの首から下がっている目玉型のネックレスへと向けた。

 すでに怯えた様子も止まり、いつものぼんやりとした表情のまま少し首をかしげ、その力ある言葉を紡ぐ。


「……ボクがやってみるね。……【強制睡眠(ネムレ)!】」


 バツンっ!!


「な!?」


 唐突に、目玉型ネックレスが不自然な音を立て、その瞳を閉じる。

 その瞬間、ゲドーダの周りに溢れていた魔力が掻き消えた。


「うおおおぉぉぉっ!!」


 その隙を見逃さなかったアルファ渾身のストレートがゲドーダの顔面に吸い込まれる。


「へぼらっ!!」


 吹っ飛ばされ、地面に数バウンドして転がるゲドーダ。

 立ち上がろうとするも、どうやら打撃が軽い脳震盪を起こしているらしく、足がカクカクと震えていてまともに立ち上がることができないようだ。


「ま、待て……! お、俺を殺したら、この魔道具を通じて、魔龍王マドラ様に伝わるぞ……!」


「だから何だ? テメェのやったこととは関係ねぇだろ?」


 アルファが、落ちていたゲドーダの剣を拾うと、そのまま剣先をカラカラ……と音を立てて引きずりながら近づいていく。


 ……カラカラカラ……


 その無機質な音が、ゲドーダの生存時間が刻一刻と零れ落ちていっている音に聞こえた。

 

「待ってくれ! ち、違うんだ、俺はマドラ様に……魔族に頼まれて無理矢理やらされていたんだっ!」


「嘘つけ。脳筋バカのマドラがこんな複雑な手を考えられる訳ないだろ。」


 あ、思わず声に出てしまった。


「ほ、本当だ、信じてくれっ!! ……そうだ! だったら、あの奴隷、アイツはお前の好きにして良いぞ! 気味悪い目をしているが、昼と夜とでは別の楽しみ方がぶぉっ……」


 ごしゃっ、と。

 アルファの蹴りがゲドーダの口にめり込む。


「テメェのその汚ェ口、二度と開かねぇようにしてやるよ」


「おごぉぉぉぉ!!? ふごぁあああアアアッ!!」


 ドシュッ……


 断罪の楔がゲドーダの身体を上から下に貫いた。


 あー……今、ダンジョン・エリアを町中に拡張したばっかりだから、死亡ボーナスポイントは追加されないんだよな。

 ちょっと勿体なかったか……。


 でも、まぁ……ゲドーダは、な。

 あの手のタイプを空白期間が終わるまで生かしておく方が怖いから、これで良いか。


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