05 四天王、最……弱?
まさか、俺から同意の言葉が出るとは思わなかったのだろう。
魔王がぴくり、と眉を動かした。
「俺も、ココの連中には、ほとほと愛想が尽きました。」
「……ほう?」
停止していた『分身体』が徐々に立ち消えて行くのと同時に、分けていた力が俺に戻って来るのを感じる。
俺はネーヴェリクを抱きかかえると宣言した。
「俺は、ココを出て行きます!」
その言葉を聞いた魔王が、一呼吸置いてから噴き出した。
「ハハハハハ!! 貴様の能力は『ダンジョン』が無ければ何もできないではないか!!」
魔王の言葉に、線の細い青年風なルシーファは、ゆっくりと自分の髪をかき上げ、メガネを整えると、小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「ふふふ、魔王様のおっしゃるとおりですよ。貴方のスキル『ダンジョン・クリエイト』は、この『魔王城』という特殊ダンジョンの中でしか活用できないクズスキルではないですか? ダンジョンから一歩でも外に出てしまったら、その『分身体』とさほど変わらない程度の力しか無いうえに、『ダンジョン内瞬間移動』『分身作成』も使えなくなりますよね? ……ああ、確か『回復魔法』ですらダンジョン内の住人限定でしたっけ?」
イヤミな言い回しでねちねちとこっちの弱点をあげつらうルシーファ。
「うふふふ、雑用しか能の無い掃除夫が、曲がりなりにも栄えある『魔王軍四天王』を名乗るなんて、そもそも間違っているんですわ」
「くくく……あの強さを持つシシオウ殿ならば、俺様も四天王として認めることはやぶさかではないが……貴様程度は、俺様の部下の尻尾の毛で叩き潰せるぞ?」
いつの間に回復したのか、サーキュにマドラまでが俺をからかうように蔑む。
「マドラ様、此処はわたくしめにお任せを……! 魔王様に逆らった事を悔いて死ね! 雑用係が!」
マドラが「自分の部下の尻尾の毛でも俺を倒せる」と豪語したのを受け、部下らしき竜人野郎が、裂けた口を笑みの形に歪め、俺に飛び掛かって来た。
びゅわッ!! ばきゃッ!! ドンッ!
「「「な!?」」」
俺は、大振りな動きで尻尾を叩きつけようとした竜人野郎の攻撃を躱すと、すかさずその巨体を蹴り飛ばす。
俺の1.2倍はありそうな身体が軽々と吹っ飛び、首から上が謁見室の天井へとめり込んだ。
「……え?」「……嘘だろ、おい……」「カイトシェイド様の『分身体』って、いつも、もっと……ひ弱じゃ……」
ザワザワと、魔族達が信じられないモノを見る目で俺を見つめる。
だが、今、ここに立っている俺は『本体』
この瞬間も、数百体にのぼる『分身体』が統合されつつあるのだ。
しかも、相手は俺を馬鹿にしきっていて、かなり雑な身のこなしだった。
「ふ、ふざけるなっ!!」
自分の部下がぶっ飛ばされた様子を目の当たりにしたマドラのヤツが怒りに顔を赤く染めると、バトルアックスを振り回しこちらへ突撃してくる。
おいおい!? こっちは意識の無いネーヴェリク抱えて両腕塞がってんだぞ!?
ビュッ、ザザッ! ガリガリッ!
「うわっ!? おっと、よ、ほいっと」
だが、ヤツのエモノは、かなりの重量武器。
最初は少し驚いたが、攻撃の軌道は案外単純。「薙ぎ払う」か「叩きつける」の2種類だ。
軌道さえ読めれば、避けるのはそれほど難しくない。
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