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41【冒険者side】ボーギルとカシコ②


「開いたぞ。……と、どうやら、最後の部屋だったみたいだな」


「うーん? ここまでずっとアタシも【探索サーチ】の魔法を使ってたけど、隠し通路や扉は他には無かったわ」


「だよな。……よし、この中を探索するか。あ、入口に落とし穴が有るから気をつけて進んでくれ」


「分かってるわ。あら?」


 カシコは一瞬首を傾げ、落とし穴を飛び越えて部屋の内部へ進むと、突然、光や炎、水の塊や小さな風の塊のようなものをお手玉にしてポンポンと繰り回し始めた。


「どうしたんだ? 突然……」


「うーん、この部屋……【探索サーチ】の魔法だけが使えないみたい」


 ほう? 

 俺はニヤリと唇に笑みを浮かべる。

 瞳に魔力を込め、【鑑定眼】を発動させようとしたが、当然のように発動が阻害された。

 サーチ系が使えない、いや、使われたくないということは、この部屋には何かが、ある。


 俺の野生のカンはそれを告げていた。


 闘気を叩きつけ室内を警戒するが、姿の見えないタイプのモンスターは居ないようだ。

 

「カシコ、ここに【出戻移動リターン】の魔法陣を作れるか? 念のため、この瞬間移動魔法陣が外に繋がっているか確認しておきたい」


「任せて!」


 俺たちは、一旦、地下5階の魔法陣を発動させ、能力を確認する。

 それに魔力を流すと、報告通りカイトシェイドの旦那さんの家の目の前に移動した。


 ……と、再度、この部屋へと【出戻移動リターン】で舞い戻る。


「間違いないわね。この魔法陣は、Aランクパーティの報告通り。帰るためには便利だし、親切よね」


「ああ、逆に便利で親切すぎて気味が悪いくらいだな」


 普通、ダンジョンで、より危険度が高いのは往路よりも復路なのだ。

 荷物も増え、疲労も蓄積してくる復路を計算に入れることができない冒険者は長生きしない。

 自分たちのスタミナの三分の一が消費された時点で戻る決断を取れない愚か者は、その代償を身をもって払うことになる。


「ねぇ、ボーギル! この落とし穴……少し、深すぎない?」


「あん?」


 地下5階最奥の部屋に戻ったカシコが部屋の入口にポカリと口を開けていた落とし穴を覗き込んでいる。


「【光源(ライティング)!】」


 カシコの魔法が水中を照らし出す。

 確かに、彼女の言うとおり、この落とし穴は、このダンジョン内にある他の落とし穴とは違い、やたらと水深がある。


「ん? もしかして、これ……隠し通路かしら?」


 消えることが無い魔法の光で水中をかき回していたカシコが側面にいくつか、不自然な穴を発見した。


「なるほど……水中の隠し通路か。盲点だったな。カシコ『水中呼吸』で行ってみようか?」


「えー? 嫌よ。服が濡れるわ。……それより、時空魔法【亜空間吸引(メガ・ダイソン)】!」


 ぎゅぼぼぼぼぼぼぼッ!!!


 カシコの十八番、時空魔法だ。

 S級クラスの実力を持つ彼女だからできる力技である。


 その魔法で、みるみるうちに水量が減っていく。

 そして、現れたのは、いくつもの通路のような横穴だ。


「よし、降りてみよう」


「ええ、そうね」


 横穴は複数空いていたが、唯一、風の精霊が興味を示したのが、さらに地下へと潜るようなルートの通路だ。


「……ん? こりゃ、先に続いているようだぞ?」


 そこを抜けると、地下5階最奥の部屋とよく似た別の部屋だ。

 部屋の中央には例の外に出る魔法陣とは別の文様の瞬間移動魔法陣が鎮座している。


「……こっちは【鑑定眼】が使えるな。どうやら、罠は無いし、この魔法陣は地下6階に繋がっているようだぞ?」


 なるほど、これが正規の進行ルートか。

 これだけ手の込んだ隠し通路であれば、前に調査したパーティーでは気づかないのも無理はない。


「移動後、突然、戦闘が始まる可能性があるから注意してね」


「一応、ここにも【出戻移動リターン】を設定しとけ、カシコ」


「わかったわ」


 そして、前人未踏の魔法陣に魔力を注ぐ。


 すると、俺たちの目の前に現れたのは新たな階層、そして灰色の洞窟に薄っすら青い光を放つ古代魔法文字。

 そこには、こう書かれていた。


『これより先、命の危険アリ。進行は自己責任で』


「通路の奥、何か来るわ……【探索サーチ】によると、おそらく上位種のゴブリンが3体!」


「こりゃ、喰えないダンジョンだな」


「全くね」


 俺とカシコは顔を見あわせると、武器を構えて、奥の気配を切り裂いた。



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[良い点] 吸引力の衰えないただ偉大な魔法メガ・ダイソン!
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