28 接待用ダンジョンを創ろう!
寝室では、久しぶりの『分身体』を作成する。
その目的は『接待用ダンジョンの作成』だ。
今いる人間たちへの対応は俺『本体』が引き続きやった方が良いだろう。
幸い、まだこのダンジョンは幼いから『コア・ルーム』を独立させることができない。
魔王城と違って、『本体』である俺がダンジョン内に居さえすれば『分身体』は最初の指示通り働きを続けることができる。
「一応、地下5階までで良いだろう。人造モンスター作成、通路、罠、仕掛け扉などの設置を頼む。3階までは一泊二日、5階までくまなく踏破するなら二泊三日程度で良いだろう」
溜まっているダンジョン・ポイント的に、あまり凝った罠は難しいが、単純な落とし穴や回転扉、隠し部屋をいくつか……程度でも意外と時間を使ってもらえるものなのである。
むしろ、真っ先に簡単な罠を一つか二つ仕掛けて、残りの部屋や通路の三分の二は罠もお宝もモンスターも『何もない』くらいでないと、知能がそこそこある人間種の油断は誘えない。
最初に一発パンチをかまし、『何もない』区間でさえ警戒してゆっくり進んでもらい、そろそろ警戒が緩んで来た所で、再度罠かモンスターを配備することで、結果として踏破時間の延長にもつながる訳なのだ。
そこに、先に進むための謎解き扉でも1つか2つあれば、接待用としては十分。
効果的な抹殺用ダンジョンを作るには、もう少しポイントをためてからの魔改造とすべきだろう。
「ただし、まだ地上と地下を繋げる必要はない、頼むぞ」
俺は分身体にダンジョンの作成を任せると、適当なポーション類を準備してネーヴェリクの元へと『ダンジョン内瞬間移動』をした。
「おい、ネーヴェリク」
「うわっ!? テメェ、突然背後から声をかけてくんな!!」
「なんだ、アルファも居たのか?」
「ハイ、どうされマシたか? カイトシェイド様」
ちょうど、病室らしき部屋の準備を整えたネーヴェリクが微笑む。
「あ、これ、薬な。適当に並べておいてくれ。それと今夜、モンスターを仕入れに行きたい。付き合え」
「ハイ、喜んデ」
「ちょっと待て!? 何だ、モンスターを仕入れるって!? 何をする気だ、テメェ!!」
作業を手伝っていたらしいアルファがいきり立つ。
「まぁ、実験用の素材ってトコロだな」
俺の生み出せる人造モンスターは『スライム』だけだ。
しかも、悲しいかな、雑用根性。
何故か俺が創ると、排泄物処理等に有能な『スカベンジャー・スライム』とか、掃除専用『クリーン・スライム』とか……そういうヤツに進化しちゃうんだよなぁ……
となると、外部から仕入れるしかあるまい。
幸い、モンスター捕獲用の罠は、結構ストックが有るし、黒の森にはモンスターが多いらしい。
「あ、そうだ、アルファ。お前も手伝えよ、モンスターの仕入れ」
「ハァァっ!? ッざけんなぁぁ!!」
でもなー、ダンジョンの外で活動する場合、ぶっちゃけウチで、今、一番戦力があるのがコイツなんだよな。
「ホラ、飴ちゃんやるから!」
「そんなモンで釣られる訳ねぇだろうがぁぁぁっ!!」
他の奴隷たちは結構喜ぶんだけどな……この夢限甘露草入りの飴。
一応、魔王城に居た時に作り貯めておいたヤツだから、眠気覚ましと集中力増加と魔力回復効果は筋金入りだぞ?
「アルファさん、ネーヴェリクからもお願いしマス……!」
「ッ!……くっ」
お? コイツ、やっぱり女子供には弱いのか?
ネーヴェリクが気弱そうなハの字眉を押し下げて、じっと浅黄色の瞳で奴を見つめる。
ネーヴェリクの懇願モードは、なんか、こう、聞いてやらないと気の毒になるんだよな。
突っぱねる事もできるんだけど……
「う、うるせぇよ!! 何で……俺が」
「……そう、デスか……ご無理言ってしまって、ごめんなサイ」
ぺしょ~ん。
「うぐッ……」
……と、こんな感じで、断ると、こっちがすごい悪者っぽい気持ちになるんだよな。
アルファのヤツが葛藤しているのが手に取るようにわかるぜ。
「カイトシェイド様、ネーヴェリクだけでも、がんばりマス……!」
「あーもう!! 手伝えば良いんだろっ!! 手伝えばッ!!!」
ふっ……チョロい。