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24 シスター・ウサミン


「だけど本当に凄い量ですね」


 ……と、俺たちの後ろから僧侶のような服を着た少女が声をかけてくる。


「本来、こういう薬草類の群生場所の情報は冒険者様個人の財産だと承知しているのですが、ここまで見事だと、ウチの冒険者の子供達に群生場所を教えてあげたくなっちゃいます」


 少し諦め交じりの笑顔でそうつぶやく僧侶の少女。


 「冒険者の子供達?」


 見れば、彼女の年の頃は10代後半程度……冒険者ができるような子供が複数居るにしては、かなり幼い、といっていい。

 まぁ、胸部装甲はサーキュ並みに立派だが。


「あ、す、すみません。わたしはシスターのウサミンと申します。外北町の孤児院で働いております」


「フン、外北町って事は、獣人共のたまり場の貧民街スラム地区じゃねーか」


 アルファが胡散臭そうに少女を睨んだ。


「す、すいません!」


 獣人と言われてよくよく彼女を見てみると、シスターらしき帽子の下に白く長い耳のようなものが見えた。瞳の色も赤い。これは典型的な兎獣人の特徴だ。


 ふむ。獣人か……。

 良いなぁ……ウチに何人か住み込んでくれないかなぁ……


 ダンジョンは中に存在している生命体の種類が増えれば増えただけポイント・ボーナスが付くのだ。しかも獣人は魔族と同じで、種族ごとに別種類カウントされるから、人間と比べて単体のポイント数は低いものの、ボーナス・コンボが美味しい。


「いえ、構いませんよ。美しいお嬢さん。このマンドラニンジンはウチの庭で収穫したものです」


「まぁ!? お庭で?」


「よろしければ、子供たちと一緒に収穫の手伝いをお願いできませんか?」


「ええっ!?」


 出来れば、可能な限りバラバラの種族を大量に引き連れて来て欲しいものである。

 庭で小一時間も作業をしてもらえば、ダンジョン・ポイントに反映されるからな。

 子供が多いなら、簡単な菓子くらい準備してやれば、夕方くらいまではダラダラと滞在してくれるかもしれないぞ。


「おい!」


「何だよ、アルファ?」


「良いのか?! 獣人なんかを屋敷に招いちまって!」


「何だ? 悪いのか?」


 人間族と獣人族は、それなりに対等の関係だったと記憶しているんだが、地域によっては人間の方が立場が強いとか、その逆とか……色々あるんだろうけど、この辺りは、別に獣人が蔑まれている雰囲気は無いはずだ。


「……っ! 勝手にしろ!!」


「それでは、正式にお願いしても構いませんか? 実は、庭でこのマンドラニンジンが大量発生してしまっていて、対処に追われて困っているんです、シスター・ウサミン」


 にこりんっ!

 俺は、可能な限り下心が見えないように、人に好かれやすそうな笑みを浮かべて彼女を勧誘する。


「ええっ、い、いえ、その……まさか、お庭だとは思わず……し、失礼をいたしましたっ!! それは、勝手に採取する訳にはまいりません」


 だが、突然、俺が親しげに話しかけてしまったせいか、彼女は、顔を真っ赤に染め、わたわたと俺から離れて行こうとする。


「あっ……! お待ちください、シスター・ウサミン!」


 あークソ、こういう時、サーキュみたいに【魅了】が使えれば楽なのに!

 しかし、俺にその手の才能は無い。

 何とか、打算と相手へのメリット提示で丸め込まなければッ……!


 しかし、他人の家のモノを勝手に取って行くわけにはいかない、か。

 冒険者という種族は他人の家(ダンジョン)の中のものは、基本的に勝手に持っていく生き物だと思っていたのだが……違うヤツも居るんだな。


「査定が終わりました! こんな上質なマンドラニンジンは初めてですよ!」


 俺たちの会話を遮るように、ギルドのお姉さんが算定価格を教えてくれた。


「す、すごい……普通のマンドラニンジンの倍の価格ですよ!」


 シスター・ウサミンが真紅の瞳を輝かせる。

 ふむ……倍か……


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