22 ニンジン大量発生!
「か、カイトシェイド様っ!? に、庭に大木がいくつも生えていマスっ!! それに、マンドラニンジンが大発生デ……!!」
「ええっ!?」
翌朝。
ネーヴェリクが血相を変えて主寝室へ飛び込んで来た。
「……おぉ……これは……」
窓の外を確認すると、マンドラニンジンがうっそうと生い茂り、魔桑に至っては精霊でも宿りそうな程の大樹の様相を呈している。
確かに、昨日の夜中、ミリミリ、ミシミシと何かが軋むような音が外から響いていたなぁ、とは思ったのだが……これはすごい。
昼間なのに、ネーヴェリクが庭に出ても大丈夫なくらいしっかりと日差しを遮ってくれている。
「ベータ……これ、どうやったらこんな事になったんだ?」
「わ、わたくし共も……何故こんなことになったのか……」
奴隷たち一同、口を開けて目を丸くしている。
ダンジョン操作による畑への魔力供給量は標準的な分量のはずなんだが……?
日光が大好きな魔桑が急成長し、日影が出来たことで、マンドラニンジンも大発生した、ということか? それにしても成長が早すぎる。
「えーと、俺が渡した種を撒いて、水をやっただけ……だよな?」
「は、はい……水やりはアルファに任せたのですが……」
全員の視線がアルファに集中する。
「な、何だよ!? 俺は、別に、言われたとおり水を撒いただけだぜ!!」
「どこから汲んだ水を撒いたんだ?」
「どこって、テメェらの風呂の残り湯に決まってんだろ!」
「それだぁぁぁぁッ!!!」
ずびしっ!!
そうか~……二階の風呂は魔族用だし、今は俺とネーヴェリクしか使わないから年中無休かけ流し式ではなく、湯舟にお湯を溜めて、使い終わったら捨てるやり方にしていたのだが、そこの掃除と兼ねたのか!
あれは高濃度の魔素のカタマリみたいなものなので、そりゃ、異常に成長する訳だ。
つーか、こんなに急成長するもんなんだな。俺も知らなかったぜ。
「しかし、どうしたもんかな……こんなにたくさんマンドラニンジンばっかり有ってもなぁ……」
「それでしたら旦那様、冒険者ギルドへ売りに行ってはいかがでしょう?」
ベータ曰く、『冒険者ギルド』とは、各街に一つはある「何でも屋の元締め」みたいな組織だそうだ。
街内の困り事があれば『依頼』と称して幾ばくかの金銭と引き換えに、冒険者と呼ばれる何でも屋を雇うことができる。
人間の世界ではメジャーな施設であり、魔族の俺でも何となく、その概要は知っている。
『勇者』みたいなトンデモ人材が発生することでも有名で、高ランク冒険者は魔族にとっても危険な存在だ。
そこでは、素材の買い取り等も行ってくれるらしい。
「そうだな。こんなに有っても困るもんな……」
そういう訳で、俺は収穫したマンドラニンジンを売りに行くことにした。
以前ベータに注意されたのだが、動物を借りるのが面倒だったので、結局、俺とアルファとで荷馬車を牽いて行くことにした。
早く荷馬車を牽ける魔物も手に入れたいが、奴隷と二人で牽くなら、まぁ良いだろう。
今回、ネーヴェリクは屋敷でコアを守っていてもらう事にしたからそれほど目立たないはずだ。
ただ、オメガのヤツがアルファに引っ付いて離れようとしなかったので一緒に連れて行く事にした。