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02 最弱四天王の部下


 背中辺りまで伸びた絹のような細く柔らかく真っ直ぐな銀色のストレートヘアを自然に耳へと流している。

 困ったようなハの字眉に、垂れ目で、どこかぼんやりとした浅黄色の瞳。

 細く薄っぺらい華奢な肢体を漆黒のメイド服で包んでいる。


 彼女……ネーヴェリクは、俺、唯一の部下だ。


「カイトシェイド様は、小粒じゃないデスっ!!」


 本来、気弱なはずのネーヴェリクが、ぷるぷると震えながら大声を張り上げていた。

 祈るように胸の前で組まれた手は、強く握りしめすぎていて、血の気が無い。

 

 その様子は、まるで処刑台に乗せられた乙女。


「フフッ……! 雑用係の部下は見た目も酷いし、おつむも悪いのね」


 普段から俺を雑用係としか見ていないサキュバス・クイーンのサーキュがここぞとばかりに馬鹿にした様子で口撃を加える。

 それに同調するように、その周囲のサキュバスたちが騒ぎ出した。


「見てよ、あの肌の色! まるっきり人間だわ!」

「レッサー・ヴァンパイアの癖に、羽や尻尾、ツノはおろか、美しい紅血色の瞳も、牙すら無いなんて……ホント、あの子は出来損ないだわ」


 魔族は『魔族らしい見た目』を重視する傾向がある。

 ヴァンパイアの不死性は持っているネーヴェリクだが、角や羽すらないという『人間らしい』彼女は、それだけで蔑まれるのだ。

そしてその見た目の問題はネーヴェリクだけでなく、俺も同じだった。


「あ~ら、だからこそ、四天王最弱様の部下にはお似合いなのよ」

「くすくすくす……」


 そのため、こうして四天王の部下にまで直接馬鹿にされるのだ。


「ほ、本当は、カイトシェイド様はお強いんデスっ! ただ、今は『分身体』ガ、いろんなコトを一緒にやっているカラ、弱く見えるだけデス……!」


「……分身体?」


 シシオウが片方の眉を跳ね上げ、ネーヴェリクを睨みつける。

 その威圧に、普段でさえ下がり気味の眉をさらに押し下げて、ネーヴェリクは震える声で頷いた。


「そ、そうデス」


「フン、それに力を分け与えているせいじゃ、とでも申すつもりか? で、何をしているのじゃ、その『分身体』とやらは」


「えと、あの、お掃除とか、排魔水管の整備とか、魔法文字を書いたりとか、虫取りとかデス! ……あと、お料理や、お洗濯も……」


 ……ぶっ……くくく……くすくすくす……


「さ、流石、四天王最弱ですね……カイトシェイド! ぶふっ!」


「ふふふ、その部下も言うことが違いますわね、わたくしの腹筋にこんな攻撃を加えてくるなんて……ふふふ!」


「……くくく、何で貴様のような奴が俺たちと同じ肩書とは……くくくくく」

 


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