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11 ナイト・マーケット


 まず、最初の一つ目はそのまんまの意味だ。


 次に、このサイズの屋敷に住人が二人だけ……というのは、人間の世界では珍しいらしい。

 普通は、召使い等が複数名住み込みで働くことが一般的だそうだ。

 そのため、奴隷を『召使い』としてこの屋敷ダンジョン内に住み込ませることは、俺たちが魔族とバレないためにも都合がいい。

 人間の一部には魔族を毛嫌いする奴がいるからな。


 ま、相手が誰であれ、意思疎通できる程度の頭が有り、利害が絶対的に対立しない場合は、むやみに敵対するより、友好関係を築く方が簡単だと俺は考えている。


 次に、妖魔族である俺は雑食性だが、ヴァンパイア族であるネーヴェリクの食事のためにも、数名の奴隷は確保しておきたい。魔王城と同じような魔族用万能栄養剤を作るための魔王樹をダンジョン内で生み出すのは、もっとダンジョンのレベルが上がらないと無理だ。


 最後のメリットは、単に俺たちが二人で買い出しに行きやすい、というだけである。

 昼間にネーヴェリクを連れ出すのは、もう少し彼女を成長させてからでないと……ちょっと心配だ。

 夜のうちに、彼女にもこの街の概要程度は把握させてやりたい。


「す、すごいデス……! そんな有利な点がたくさんあるなんテ……!」


 ちなみに、奴隷の金額はピンキリだが『読み・書き・そろばんが完璧で魔力量も高く、なおかつ見目麗しい処女』とか注文を付けなければ、二束三文の奴隷もザラだそうだ。


 じいちゃんの遺産である宝石類は全部売り払ってしまったが、金貨がまだ結構残っているので、おそらく仕入れに問題はないだろう。


「よし、じゃあ、行くぞ」


「あ、カイトシェイド様、ダンジョン・コアは、このままここに置いておいテ良いんデショウか?」


「ああ、構わない」


 もう少しダンジョンが成長すれば、無防備なコアだけを放置する、なんて真似は出来ないが、今はまだ殆ど何も手を付けていない状態に近い。

 たとえ、今すぐ破壊されたとしても、すぐに再度作り直せるし、この程度の原状復帰は簡単だ。


 そんな訳で、俺たちは家を購入する時の不動産屋に勧められた『ナイト・マーケット』へと繰り出したのである。




「これはこれは!! いらっしゃいませ、カイトシェイドの旦那様!……不動産屋のデベロよりお話を伺っております! なんでも、新しいお屋敷で働くための奴隷が必要とか?」


 俺とネーヴェリクが教えて貰った店へ入店すると、かなり良い身なりの脂ぎった中年男が、えびす顔で両手を擦り合わせながらすり寄って来た。


「……なぜ、俺がカイトシェイドだと分かったんだ?」


 俺は、初めて会ったその男に冷たい視線を送る。

 俺はまだ、見ず知らずの人間に名前を覚えられるようなマネはしていないはずなのだが……?

 すこし、胡散臭そうだと思った感情を表に出してしまったかもしれない。

 ネーヴェリクが俺を庇おうとするのを左手だけで止める。


 流石に、こんな……ぜい肉まみれの運動不足が人の形を取り、豪華な服を着ているような男に負けるとは思わないが、此処はダンジョンの外。

 今の俺の戦闘能力は、その辺の成人男性と大差無い。


 多少は警戒しておいた方が良い。

 

「ははは、それはもちろん、カイトシェイドの旦那様のような端正なお顔立ちの御仁、一般の商人であれば、見間違えるはずもございません」


「か、顔?」


 意外な答えに、思わず俺とネーヴェリクは顔を見あわせた。


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