『思想の全貌』

『思想の全貌』

㈠

思想は、成程、思想の形をしているが、思想的というよりも、小説的であればあるほど、全貌が見えてくるというものだ。何よりも、思想は、自己実現という、一種の魔力により、形骸化された世界を、安定精神で、埋め尽くす様に運ばれていく。

㈡

絶えず自動す、自己観念の思想は、姿勢を変えれば変えるほど、その思想の詰まった容器の中に、一粒の水滴が落ちて、思想が芽生えると言えよう。形は、左程問題ではなく、やはり、思想の中身が問題視されるのは、述べるまでもないだろう。

㈢

思想の全貌を、一言で言うのは難しい。水平線に垣間見える、立体風景に於ける、諸事情によって、自己が自己足らんとする、衝動が筆記されたものが、思想だ。絶えず、形を変容させるが故、問題は複雑になって、外的視座を必要とするのは、確信を持った、中核にある思想の全貌だ。