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転生魔法使いは射程2メートル  作者: ひでんのたれ
妖精の国編
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93話 歯がゆい想い

レニー、ウェンディー、ルイーズは覚醒した『アンデットシュピンネデビル』を前にして無力感を感じていた。

テオ一人の手に任せなければならないことになったからだ。


3人は決して弱いわけではない。


そんな彼らであっても覚醒した『アンデットシュピンネデビル』との戦いは無謀とも思えるほどに力の差があったのだ。


テオの説得により、この場を離れることを決めた3人はテオの使い魔であるハクトを連れて螺旋状に続く階段を登っている。


下の方からは戦いの音と思われる激しい音が聞こえ、時折足元に揺れを感じさせるほどの振動が起こっている。


「テオさんは大丈夫でしょうか?」

ルイーズは心配そうな表情で口に出す。


「師匠は大丈夫っす。そう信じてるっすよ」

レニーは真剣なまなざしで答える。


「ん!勝って戻ってくる。」

ウェンディーも同様に答える。


「お二人はテオさんと同じ学園を卒業されているとお聞きしました。先ほどテオさんが全力じゃないというのはどういうことなのでしょうか?」


「ルイーズさんは師匠の魔法をどう見てるっすか?」


「そうですねー近距離で魔法を放っていて、的確に急所を狙っているように見えます。他の魔法使いが遠距離から攻撃するのに変わった戦い方をする方と思っています。テオさんは格闘の才能もおありのようですし、そういったスタイルなのかな?っと。」


「そうっすね!それは合ってるっす。でも師匠の場合、そうしないといけない理由があるっすよ。」

レニーは答える。


「ん!それ弱点教えることになる。意味ないけど。」

ウェンディーはなにやら深い意味があるような言い方をしています。


「それはどういうことなのでしょうか?教えていただけませんか?」


レニーとウェンディーはお互いに視線を合わせ頷く。


「ん!ルイーズなら大丈夫」

「っすね!」


そういってレニーとウェンディーが説明してくれました。


テオは、魔法の射程距離が極端に短い。全属性を操ることができるが、射程は『2メートル』。その短い射程をカバーするかのように魔法の威力は『100倍』。

一般的な魔法使いが使うように魔法を放つと周囲が焼け野原になるほどの大惨事となる威力の範囲攻撃魔法となるとのことです。

それが決して範囲魔法ではなくても、手を抜かなければすべてが範囲攻撃になると教えていただきました。


「それではこれまで自主訓練の際に一人で行かれていたのは?」


「師匠が周りの人を巻き込まない為に一人で練習することはあるっすよ!」

「ん!大惨事!巻き込まれて吹っ飛ぶ。」


「そうだったのですね。」

もう少し詳しく聞くと、テオさんは普通に魔法を使っているつもりでも初めて使う魔法は威力が大きいところからスタートし、それだと周囲に影響を及ぼす為、威力を小さくするように訓練をされているとのことです。


他の魔法使いは、今使っている魔法の威力から大きくすることの訓練をするのに対し逆の訓練だとレニーとウェンディーが教えてくれました。

もちろん威力をさらに高めることもされているらしいですが・・・。


強すぎる力を抑える訓練。


「お二人はテオさんの本気の魔法を見たことがありますか?」


「本気かどうかはわからないっすけど、ファイアーボールで周囲数キロ焼け野原になったのは見たことあるっす。」

「ん!もう少しで巻き添えになるところだった。」


・・・?ファイアーボールで周囲数キロが焼け野原?

なんですか?その威力・・・。


ファイアーボールは確か初級魔法で、魔法使いが一番最初に覚える魔法の1つだったと記憶しています。


でももしそれが事実だとすれば、あの場に私たちがいることは足手まとい以外のなにものでもないですし、私たちがあの場を離れるのはテオさんにとっても一番よかったのかもしれませんね。


「でもなんだか悔しいですね!」


「・・・?どうした?」

ウェンディーが聞き返す。


「本来ならば私もあの場でテオさんと一緒に戦いたかったです。すべてをテオさん一人に任せてしまって、もっと強かったら一緒に戦うことができたのではないか?前じゃなくてもせめて隣に立っていたかったと悔しい想いだけが沸いてくるんです。」


「ん!それわかる。私も一緒。でも、まだ弱い。だから今は泣かない。落ち込まない。強くなる!」

ウェンディーが悔しそうな表情をしながら答える。


「おいらは師匠に追いつけるようにこれまでと同じがんばるっすよ。師匠はすごいっすから必死に追いかけるしかないっす。」

レニーがそう答える。


「そうですね。今腐っていてもしょうがないですね。私もお二人を見習ってテオさんに追いつけるように、せめて隣に立てるように励むしかありませんね!」


ルイーズ、レニー、ウェンディーの三人は意思を共有し、これまで以上に己を鍛えさらなる成長を見せることとなる。


階段を登り地上に向けて足を進めている3人と一匹。

テオが戦っている下の方から激しい音と振動が続いている。

次の瞬間、

地下からまばゆく強い光が地上に向けて射されていく。


「こ・・・これはなんですか!」

「眩しいっす。」

「ん!何が起きたの?」

眩しい光は数秒ほどで止む。


するとその後、地下から感じられた激しい戦闘音とも思われる音は消え、禍々しい気配も消えていた。あの重苦しい空気をまったく感じることができないようになった。


「これってもしかして!」

ルイーズはレニーとウェンディーを見て口に出す。


「師匠がやったっすね!」

「ん!間違いない!嫌な気配消えた!」


「「「やったぁー」」」

階段を登っている最中ではあるもののテオの勝利を確信し大きな声で叫び3人と一匹は抱き合って喜んだ。


「あとは地上に戻りテオさんと合流しましょう。」

「そうっすね!」

「ん!里の様子も気になる。」

そう、地下にいる為今里がどのような状態になっているのかわからない。

暗くなった空が晴れていれば、里の危機も脱したと言えるしもしそうでなければまだ危機は続いていることになるからだ。


「私たちが今すべきことは一刻も早く地上に戻り、状況確認ですね。」

「そうっすね!地上に戻ったときに師匠を安心させてあげるっす」

「ん!褒めてもらう」


私たちは地下で戦ったテオさんのことも気になるけれど、一刻も早く地上に戻り現状把握するという選択を取ることにしました。


きっとこれがテオさんがもしこの場にいたら、その選択を取ると思うから。

今私たちができることはこれ以外にない。


「テオさん地上で待ってます。どうかご無事で!」

地下深くに目をやり、心の中でそう伝えるルイーズ。


地上に戻り空を見たルイーズ達。

その空はなんとも輝かしい蒼穹の空であり、彼女たちを祝福するかのような輝かしさを感じる気持ちのいい空であった。

その空を見て3人は視線を合わせ胸を撫で下ろし、その場でテオの帰りを待つことにしたのであった。


それから20分ほど経ったであろうか?


「みんなお疲れ!」


なんともお気楽な声で声をかける人物が祠から出てきた。

そうそれはテオだ!そのテオの姿をみたルイーズは、テオに抱きつき


「よかったです。生きていた。心配しました。」

そういって涙を流し抱き着いている。


「心配かけたね。でもちゃんと討伐してきたよ!」

テオの服はところどころ破けたり溶けているなどその激戦を物語るには十分な姿であった。


いつも読んでいただきありがとうございます。

今回はテオ以外の3人がテオと別れた後のお話でした。


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