83話 ロンプオン村
ロンプオン村の入り口で入場検査を受けている。
なぜって?
僕がキャンピングカーのように内装を魔改造した馬車があまりにも珍しかったため必要以上に調べられているのだ。この世界にはないような珍しい造りと魔道具があったためどうやら怪しまれているらしい。
それにしてもなんだろう?この薄暗い空に低い気温。この地域いったいに不穏な出来事が起きているかのような空模様である。
「あの~もう村に入っていいですか?」
「ああ!すまない。あまりにも珍しい馬車だったので警戒してしまった。」
「いえいえ。」
これからは街に入ったりするときには荷馬車はアイテムボックスに入れたほうがいいのかもしれない・・・。張り切りすぎて改造したのをちょっと反省。
「テオさんやりすぎてますからね。」
「いやー師匠は規格外っす!」
「ん!おかしいスイッチがあった」
ウェンディーの言葉が一番胸が痛い。やる気スイッチが入ったんだよ。入ってしまったんだよ。
「まずは冒険者ギルドに行って依頼されたものを届けよう。」
「しゅっぱーつ!」
そそくさと話題を変え、聞こえてない聞こえてないそう思い込むことにした。
それに冒険者ギルドに行けば、嫌な予感がするこの空のことがなにかわかるかもしれない。正直今の時点でいい気は全くしない。僕の第六感によりビリビリと何かを感じ取るかのような胸のざわつきがあるのだ。
「ランベルグから依頼でお届けに来ました。」
そういうと
「ありがとうございます。私はロンプオン村の冒険者ギルドで受付を担当しております『ミラシュレーネ』と申します。以後お見知りおきを!」
そこには少し長くとがった耳。そうエルフ族で白く腰まである長い髪の美少女がいた。
「それでは確認させていただきます。はい!問題ありません依頼完了となります。ご苦労様でした。」
ニコリともせず淡々と仕事をこなす彼女は正にクールビューティーなのだ。
「ご・・・ごほん!!テオさん?」
「あはは!」
凝視していたのがばれてしまった。すかさず僕は道中そしてこの村に来て気になったことを聞いてみることにした。
「あのー最近この村の周辺ではなにかあったのでしょうか?」
「なにかといいますと?」
ミラシュレーネは聞き返す。
「ここに来るまで妙に気温が低かったですし、西の空はなにやら不穏な空気というか嫌な感じがしたんです。」
するとしばらく沈黙ののちに
「・・・。実は・・・」
「なにもわからないんです。」
どういうこと?
「最近この村の周辺の気温が低くなったのは村中の誰もが感じています。はじめはたまたまそうなのだろうと思っていたのですが、一か月以上そのような状態が続き、西のほうラミーレ平原のほうを見ると薄黒いなにかが空に発生しCランク冒険者に調査を依頼したのですが、、いまだに帰還せず報告がありません。その為今は何が起こっているのかわからない状態なんです。」
なるほど、調査隊を出しても報告がない。こうなると情報がないな・・・。
ここから薄黒いなにかがあるところまではおおよそ1日かかるかかからないかといった距離とのことだ。なのに一週間たっても帰還していない。そうなるとなにかのトラブルに巻き込まれている可能性が高いということか。
「それにしてもお気づきになるとはさすがBランクの冒険者様ですね。」
「いえいえ!なんとなくですよなんとなく。」
「しかし冒険者様にはそういったことは生きる為には必要なことですよ。危機を察知する能力は有用ですからね。」
そう言われると照れますよ。
「折り入って頼みがあります。ここから西にあるラミーレ平原の薄黒いなにかについて周辺調査をしていただけませんか?この村では高ランクの冒険者はいません。一番高いCランクの冒険者パーティーに調査を依頼しましたが帰還していません。そうなると依頼を頼める方がいないんです。」
「皆さまは3名はBランクおひとりはCランクとランクも十分な方々です。どうか調査依頼を受けていただけませんか?」
弱ったな。先を急ぐ旅ではないもののこの嫌な気配、体にまとわりつくような、満員電車のすかしっぺのようなただならぬ嫌な感じがあるんだよね。
ただもし海洋国家シーラから魚を輸送できるようになった場合、この村を通ることになるだろうし発展も予想される。
ルイーズ、レニー、ウェンディーそれぞれに視線をやると、全員首を縦に振りどうやら依頼を受けるのに賛成しているようだ。
「わかりました。その依頼僕たちが受けます。」
「ありがとうございます。危険かとは思いますが調査のほどよろしくお願いします。」
今日はロンプオン村に着いたばかりということもあり、正式に依頼を開始するのは明日から動くことにした。この村の冒険者ギルドは酒場と兼用しており、ここで食事をとることにした。
「今日のおすすめは・・・」
「ラム肉のはちみつ煮込み・・だと・・・。」
「師匠どうしたっすか?」
レニーは不思議そうに僕を見ている
「ん!?」
ウェンディーは首をかしげながら?マークが頭の上に立っているような状態だ。
「そんなに驚いてどうされました?」
ルイーズは普通にどうしたのか?疑問に思っている程度のようだ。
「いやごめんごめん!はちみつがあるとは思わなくて!」
いやーまさかの展開だった。するとルイーズが答える。
「ラミーレ平原は美しい草花が咲き誇っている地域で男女のデート先としても有名なんですよ。その花の蜜を集めたはちみつはこの辺りの地域では一般的に食べられていてお土産としても人気がありますよ!」
さすがルイーズさん!よく知ってらっしゃる。しかしこのはちみつ欲しいなどこにいったら買えるのだろうか?
「すいません注文いいですか?」
「はーい!」
従業員さんを呼び
「ラム肉のはちみつ煮込みをください。」
「おいらも!」
「ん!おなじ」
「私にも同じものを!」
みんなおそろいである。
「ラム肉のはちみつ煮込み4つですね!少々お待ちください。」
「あとすいません」
「なんでしょうか?」
「はちみつを購入できるところはありませんか?」
「すいません今は一般の方向けに取り扱っているところがないんですよ。以前はボブ爺さんの雑貨屋に置いてあったのですが・・・。」
どういうことだろう?『今は』というのが気になる。
「どういうことなんですか?」
「ボブ爺さんははちみつが手に入らないといっていましたね。詳しい話でしたら、ここから出て十字路を右にまがって少しいったところにボブ爺さんの雑貨屋がありますので、直接お聞きになられてはいかがでしょうか?」
「そうですか!ありがとうございます。」
「おまたせしました。ラム肉のはちみつ煮込みです!」
きた。この香りまずいわけがない。
「それでは!いただきます。」
ラム肉にナイフを入れる。はちみつで煮込んでいるせいかすごく柔らかくスーっと肉にナイフが通る。あふれ出る肉汁に口からよだれが溢れんばかりに口の中でダンシングしているのがわかる。
ゴクリ・・・
口の中にラム肉を投入。
すると、口の中にラム肉の溢れる肉汁。はちみつの香りが口いっぱいに広がり鼻の奥から突き抜ける。柔らかい肉は噛むことをせずともトロリと溶け、草原を天使とかけまわるような幻を見せてくれる格別な味。
気が付いたら一瞬で平らげ僕らは夢見心地になったのだ。しばらくの間僕たちは『ラム肉のはちみつ煮込み』の美味しさの余韻を楽しんでいた。
美味しい食事が終わり、先ほど聞いたボブ爺さんの雑貨屋へ足を運ぶことにした。はちみつが手に入るなら手に入れたい。ことと次第によっては自力で調達する方法があるかもしれないからだ。
「こんにちは~!」
「いらっしゃいませじゃ」
そこには見上げるほど大きな人物がいた。頭はツルツルとまばゆいばかりに輝いており、白くて長いひげと眉毛。眉毛は長すぎて目が隠れるほどの立派なものであった。
「どうしたんじゃい?ここいらではみかけない顔じゃな。」
「はい冒険者のテオ=イシュタルと申します。こんなに大きい方を見るのは初めてでしてびっくりしました。」
「ほっほっほ!そうかいそうかい!巨人族は初めてだったかい。」
「お爺さんは巨人族なのですか?」
「そうじゃよ。昔はもっとデカかったが年と共に縮んだんじゃよ。」
いやそれでもデカいよ。4mはあるだろう?となると現役当時はどのくらいの大きさだったのだろうか?
「それで今日はどんな用事じゃ?」
っと大きさに見とれて用事を忘れるところだった!
「実ははちみつが欲しくて来たのですが・・・」
「・・・はちみつか・・・今はないんじゃよ」
「理由を伺っても?」
「そうじゃの今ははつみつの取れる量が少なくなっての~数が出回っておらんのじゃ!」
「とれなくなった理由はご存知ですか?」
「詳しくは知らんのぉ~」
白くて長い立派なヒゲを撫でながら答えるボブ爺さん。
うーん欲しかったのにな~
「そっか~あったら明日からの西の調査もがんばれそうだったのにな・・・」
ポツリと呟いた。すると
「おぬしたちは西にいくのか?」
「はい!私たちはギルドの依頼で西の薄暗い空の原因の調査依頼を受けています。」
ルイーズが答える。
「おぬしたちはそこそこ強そうに見えるんじゃがギルドランクはどうだ?」
「私はCですが他の3人はBランクです。」
「うむ!そういうことならば話しておいてもいいかもしれんのぅ~。」
僕の頭の上に乗っているハクトを見つけてそういうことを言っているボブ爺さん。
ボブ爺さんはなにやら意味ありげな言葉を発しゆっくりと語りだすのであった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
明日も18時追加予定です。




