73話 謁見と開戦
バルジリア王国とトーライ帝国の会談が終わったその日の夜。
ある屋敷での出来事である。
「うまくいったようでなによりです。フィランダ様」
「当たり前だ。儂を誰だと思っておる。あんな若造に言いくるめられるわけなかろう。」
この男は何もわかっていない。だからこそ利用価値がありますね。
「この男権力だけはあって頭が悪くて使えますね」
その不気味な男はフィランダに聞こえない小さな声でつぶやいた。
「どうした?なにかいったか?」
「いえいえ。それでは次はバルジリア王国第一王子の暗殺ですね?」
「そうじゃ!それがかなえばまた儂の懐は潤う。ふっはっは!笑いがとまらんなぁー」
金の亡者とも言えるような醜い笑い声が屋敷に響き渡る。
「そうでございますなー!これもフィランダ様の徳の致すところでございます。」
「そうであろう。」
はっ!なにいってるんだこの豚野郎。お前は単なる虫けらだ。操られていることにも気づいていない自分の力でできていると勘違いしている愚か者だ!
まあいいでしょう。使えなくなれば捨てればいい。所詮お遊びですから。
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トーライ帝国皇帝ロンドパル=トーライ謁見当日。
バルジリア王国から会談の為にトーライ帝国へとやってきたクラウス一行。
会談はつつがなく終わり、あとは謁見をしささやかな懇談会を催す予定となっているのだが、実はトーライ帝国は、この日の正午に内乱に入るという報告を反乱軍からの情報でわかっているのだ。
謁見は正午少し前。罠だと知りながらも、謁見の場へと向かうことになるクラウス、レニー、ウェンディーと少数の護衛達。クラウスの暗殺を目論む帝国はどういった手にでるのか?危険を承知で敵の罠へと足を踏み入れるクラウス達の運命やいかに!
「ん!何か起こる。知ってると緊張する!」
ウェンディーの言う通りだ。罠だと分かっているのに向かうのは愚策なのかもしれない。しかしアドバンテージも確かにあるのだ。それは罠だと分かっているからこそ万全の準備を整えて向かうことができる。そして相手がそれを知らないという点だ。
「皆聞いてくれ。今回皇帝謁見ということもあり、謁見の間に入る際には武器を預ける必要が出てくる。」
「故に剣術など武器使用に卓越したものを連れてはいけぬ。その者達は城の外で待機。」
「行くのは武器を必要としないレニー、そしてプー太をぬいぐるみだと思わせることができるウェンディー。さらにハクトは小さなサイズのままでホーンラビットと思わせるようにして連れていく。そして格闘才能がある護衛から5名となる。」
「「ん!(っす)(はい)」」
「外で待機するものは内乱が起こる故、まずは己の身の安全を最大限確保せよ!」
「いいな!!」
「「御意!!!」」
さてあとは俺も含め心の準備、覚悟をキメなければならないな。バルジリア王国第一王子として死ぬわけにはいかない。
そんなことを考えながら遂に皇帝との謁見となった。
謁見の間はシーンと静まり返っている。そこには昨日会談を行ったときにいたフィランダ公とフィランダ公の秘書兼執事とかいうマーティーという男がいる。
その他周囲に槍を持った兵が10名ほど左右に控えている。
「こちらはトーライ帝国ロンドパル=トーライ皇帝陛下である。」
傍に控えているフィランダ公がそのように読み上げる。
「ロンドパル皇帝陛下お目にかかれて光栄にございます。私はバルジリア王国第一王子クラウス=バルジリアでございます。」
「うむ!面をあげよ!」
「この度、トーライ帝国とバルジリア王国の会談を行いより良い方向へと両国が協力していくことを確認することができうれしく存じます。」
「そうであるな!お互いの国の発展の為協力せねばなるまいな。」
「はは!ありがたきお言葉でございます。」
そんなことは一切思ってないだろうに、舌が良く回るものだな。
「故に、おぬしたちには帝国の為、犠牲になってもらうとしよう!」
「!!!」
きた。この場で暗殺をするつもりだな。
「者ども出会え!こいつらは反乱軍の一味一人残らず処刑せよ」
フィランダが合図を告げる。
そういう口実できたか。これならばこの場の者以外の兵士は、俺たちがバルジリア王国から会談にきた使者だとはわかるまい。
その合図で、まず謁見の間にいた兵士10名ほどが槍を俺たちに向ける。そして、入り口の扉からは総勢50名ほどだろうか?多くの衛兵が集まって来た。入念に暗殺準備をしていたようだ。
「こ・・・これはどういうつもりですか?皇帝陛下」
わかってはいるものの敢えて驚いている演技をしておこう。
「陛下言うまでもありません。ここは儂におまかせを!」
「ふっはっはー!かかりおったな愚か者どもが!クラウス殿下あなたが死ねばバルジリア王国とトーライ帝国で戦争が起き、帝国は豊になるのだ!あなた方の土地も我らの者となり、その土地の人間を奴隷として売り払えばさらに潤うのだ。」
「ふっはっはぁ~!!!」
こいつは下衆すぎる。醜い欲望の塊じゃないか。
「なるほど。そういうことなのですね。ならばこちらも容赦する必要はないようですね。」
「レニー、ウェンディー遠慮はいらん。やってしまえ!」
「やったっす!いいとこみせるっすよ!」
「ん!!ここクサイ!汚い!気持ち悪い!すぐ終わらせる」
珍しくウェンディーの口数が多いな。さすがにあの言葉を聞いて思うところもあるのだろうか?
「おいおいお嬢ちゃん!おとなしくしていれば可愛がってあげるよ。」
「そんな汚いぬいぐるみじゃなくてお兄さんが可愛がってあげるから今なら死なずにすむぞ!こっちへおいで。」
兵士の一人がそういいウェンディーのぬいぐるみ(プー太)を掴み床に落とす。
「あっこれ・・・ヤバイっす。」
「みんなウェンディーの後ろに下がれ!」
俺は慌てて護衛の5名に声をかける。そうこれは緊急事態なのだ。
この場の敵兵士を倒すどころではない。もしかすると城そのものが崩壊するかもしれない。全力を出してもいいといった。そしてこの状況。
「本当の敵は味方にあり」
この言葉がふさわしい状況になるのは目に見えているのだ。
パンダのようなぬいぐるみの魔道具プー太。そのプー太をバカにされ床に落とされたウェンディーはこの先あの力を使うこととなるのだ。
「ウェンディーヤンデレモード」が発動する。
いつも読んでいただきありがとうございます。
遂に始まったトーライ帝国での内乱。
そしてもう一つ絶望とも言える状態が謁見の間ではじまる。
そうそれはウェンディーの【ヤンデレモード】!




