49話 アリーチェの苦悩
卒業コロッセウム編最後となります。
「「「お疲れ様ー!!!!!」」」
「「「カンパーイ!」」」
テオ、クラウス、レニー、パメラ、ウェンディーはコロッセウムの打ち上げを、王都で人気の宿屋兼お食事処の『金の窯』で行っている。
「「「テオ優勝おめでとう!」」」
「みんなありがとう!」
お互いにお互いの健闘を称え長かった卒業コロッセウムの終わりを実感する。そしてこのあとどういった進路をとるのか?
決勝トーナメントに出場すれば一回戦で負けたとしても優秀だと認めらる。テオ達5人は当然認められるのは間違いない。
王都での精鋭とも言われる魔法師団への入団も希望すれば容易になることができる。むしろエリートコース出世街道まっしぐらといった好待遇なのも間違いない。
そしてそこには貴族や平民といった差はなく、実力が全てなのが魔法師団の特徴でもある。
クラウスが口に出す。
「みんなは卒業後どうするんだい!?」
「おいらは師匠についていくっす。」
「ん!!」
レニーとウェンディーはそのように答えた。
「ではテオはどうするんだい?」
クラウスが質問する。
「僕はもうこの学園に入る前から決めているよ。いったことあると思うけど冒険者になってこの世界のすべてをこの目で見たい!」
僕のこの決意は揺るがない。自由こそ最高の贅沢なのだ。それにしてもレニーとウェンデーは本当にいいのだろうか?
二人の実力なら魔法師団にも入ることができるのに・・・。
僕は二人に再度確認してみるが、「ついていくっす。」「・・・いっしょ」と肯定だった。
そういうことなら二人の意思を尊重しよう。
「私は・・・」
パメラが口を開く。
「私は・・・魔法師団に入団するわ・・・。」
「本意ではないけれど、家庭の事情もあるからね・・・。」
なんとも歯切れの悪いパメラがいる。
「パメラは伯爵令嬢というのもあり自由な選択は難しいからな。俺も第一王子としての仕事が待っているしな。」
クラウスがいうことも最もなのだ。
なるほど、貴族というのは大変である。僕も一応貴族だが、子爵家三男ともなれば平民と大して変わらない。家を継ぐこともできないし自分で道を探すことができるのだ。
しかし伯爵令嬢のパメラや第一王子のクラウスは別である。家同士の体裁など様々なしがらみがあり自由に冒険者というのも難しい立場なのだ。
「テオ達と一緒にいたほうが私も魔法の腕もあがりそうだから本当は一緒にいきたいんだけどね・・・。」
「それにハクトのモフモフが・・・モフモフが・・・」
パメラさん・・・むしろハクトをモフリングできないことのほうが大きいのではないでしょうか?絶対そうだよね?モフモフ重視だよね?
白くて角があるウサギで僕の使い魔でもあるハクトは目を潤ませながら、パメラのほうを見つめている。この魅力とまなざしに購えるはずはない。
パメラはハクトを抱き、モフモフタイムに入ってしまった。
「そっかー二人とは別になってしまうんだね。ちょっと寂しいけど・・・。」
「っす!」
「・・・ん」
僕とレニー、ウェンディーはそれぞれそのように答える。
残り僅かな学生生活をこの5人で楽しく過ごしていきたい。そう決意した一日となった。
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数日後、ここは、アリーチェ=ヴィトベートの私室である。
彼女は魔法師学園の実技教師であるが、頭を抱えて悩んでいる。
「う~ん・・・う~ん・・・。」
「どうすればいいのでしょうか?」
アリーチェは悩みに悩んでいた。それはある3人の進路であった。
その3人とは、テオ、レニー、ウェンディーである。
コロッセウムで優秀な成績を修めると、魔法師団や魔法研究所や魔道具制作組合など国が運営している機関に入ることとなっている。もちろんそれは希望すればということなのだが、そこに行きたい者ばかりなのだ。
優秀なものを国の機関でさらに育成する。それが国の為になることであり誉れなのだが、まさかの優秀者3名が『冒険者』になりたいという事実。
これがアリーチェの悩みであった。
「う~ん!?なんで冒険者なのでしょうか?国の機関がいいでしょうに・・・。」
上からも色々言われるし、頭が痛いわ。
しかし、こればかりはね~あまりにも強要しすぎて、彼らがこの国を嫌になった場合、優秀な子たちを手放すことこなる可能性もあるでしょ~。
でも、このまま冒険者となり在野に放たれると他国で雇用される可能性もある。バルジリア王国とのつながりをせめて持たせたほうがいいんじゃないかしら?
学園長と相談したほうが良さそうね!学園長と相談した結果、爵位を与えるという方法が最も分かりやすく確実ではないのか?という結論になった。
貴族の中では一番下。
上位から
■公爵
■侯爵
■辺境伯
■伯爵
■子爵
■城伯
■男爵
■準男爵
■騎士伯(←ここ)
※公爵より上は王族である。
『騎士伯』
3人は優秀である為、この旨を伝えれば恐らくは通るのではないか?ということである。爵位があれば少なくとも他国も簡単には手を出しづらいしコロッセウムでの成績を考えると少しでも優秀な人材を確保したい国としては、この提案は受けてもらえる可能性が高い。
もし冒険者として実績を積み上げていけば、結果によってはさらに上の爵位を与えてもらうこともできる。
今できることといったらこれが最善かしらね?うんうん!
この旨を3人に知らせると、レニーとウェンディーはビックリしていたけれどテオくんは冷静だったのよねー。
国の管理下に置かれるのか?とか冒険者ができるのか?支障はないのか?など疑り深いのなんのって。
「基本的には自由でいいのよ!もし国から依頼がある場合には、冒険者ならギルドに登録するわよね?ギルドを通じて依頼という形を取らせてもらうわ。」
「下級貴族であれば下手に権力争いにも関わらなくて済むし、様々な国を見て回るのなら、最低限国の後ろ盾もある。」
「悪くない話でしょ?」
とそのことを聞いてからなんとかテオくんは渋々と了承してくれた。
それから2日後、国への申請は通り3人は『騎士伯』へと叙勲され、テオ、クラウス、レニー、パメラ、ウェンディー達は魔法師学園カーデリアを卒業し、新たな一歩を踏み出すこととなるのであった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
コロッセウム後のテオたちへの処遇が決まりました。
次回から新章突入です。




