42話 レニーの戦い
「師匠、おいら勝つっす!負けないっす!」
レニーは心の中で何度もそうつぶやく。【テオVSクラウス】の一戦を控室で観戦していたレニーは勝者がテオだと知り、次の試合で勝利すればテオと戦うことができる。
だからこそ負ける訳にはいかない。
対戦相手はシスターのような頭巾を被っているブリッドという女性で、一回戦を見る限り、歌に魔法を乗せて攻撃しているかのような戦い方をしていた。普通の魔法も使ってはいたものの、歌となると目に見えない為、少し厄介な相手でもある。
レニーの戦いの火ぶたはもうすぐ開かれようとしていた。
『それでは二回戦第四試合を始めます。』
『美しい歌声で相手を魅了するシスターブリッド選手』
『猫の獣人!素早い動きで相手を攪乱させるレニー選手』
『勝利の女神はどちらに微笑むのかぁ~!!』
舞台中央で対峙する二人。
「よろしくっす!」
「よろしくお願いしやがります!」
『ブリッドVSレニー』
『試合開始!!』
レニーは気合が入っている師匠が見ていること、そして何よりこれに勝利すればテオと戦うことができること。その為には目の前の相手に勝つ必要があり、燃えないわけがない。
レニーは、獣人特有の身体強化魔法『アニマルブースト』を使い敏捷性をアップ。もともと高い敏捷性をさらにアップさせ、舞台上を縦横無尽に動きブリッドの隙を伺う。
ブリッドは身動きせず、両手を胸に当て
「る~ららら~」
ブリッドの天使のような透き通ったキレイな歌声が会場中に響き渡る。会場の観客はその美声に酔いしれているが、レニーは違った。
「くっ・・・なんすか・・・これ・・・。」
レニーは膝をつき耳を抑える。
「効果抜群でやがりますね。」
にこりと微笑みレニーをみる。歌声に魔力を乗せて戦っているのは一回戦で見ていたレニーだが少し違和感を感じていた。一回戦の時のブリッドの対戦相手は吹き飛ばされていた。
それに対しレニーは頭がクラリとなり片膝をついたにとどまった。
「不思議そうにしてやがりますね!」
ブリッドはそういった。
「これは人間ならば大して聞くことのない魔法でやがります。私は歌に魔力をのせ様々な性質の魔法を使うことができる。衝撃、誘惑、精神、そして今回は空気を震わせて鼓膜に働きかけたでやがります。」
「鼓膜っすか・・・。」
「獣人は人の何倍もの聴覚がありやがります。これを利用しない手はないです。さらにあなたは身体強化を使いやがりました。」
「・・・。くっ」
「理解したでやがりますか?たわいない魔法でも強化された獣人の耳には威力絶大でやがります。」
レニーは目の前がぐるぐると回り視点が合わない。ここぞとばかりにブリッドは歌による攻撃を再開する。意識朦朧となる中でレニーは耳を抑えながら耐え、師匠であるテオとの修行中の出来事を思い出す。
「レニーは水魔法による防御魔法使わないの?」
「??【アイスウォール(氷結壁)】じゃだめっすか?」
そんなやりとりをしたことがあったのだ。
その時、師匠に教えてもらったのは水の防御魔法の有用性についてだった。【ウォーターウォール(水壁)】という防御魔法は、常に魔力を流し続ける障壁魔法で下から上に向かって常に水が噴き出しているかのように流れている障壁魔法。
故に障壁が少し崩れたりしても魔力が続く限り再生をする生きた障壁なのだという。
硬さというのは強いわけではないものの、柔軟性があり、例えば光魔法の攻撃であれば水を通して屈折し直撃を避けることができたり、炎魔法は鎮火させる。風魔法は威力を分散させるなど、受け止めるというよりも受け流すといった表現が適切な防御魔法だと教えてもらったのだ。
また雑談程度に、音も弱めてくれると聞いたのだ。
尚、雷魔法には意味をなさない。
その日の出来事を思い出し、歌で鼓膜に刺激を与えているのであれば使えるかもしれない。確か村のおばあちゃんの知恵袋で濡らした布を耳に突っ込むと音を遮断する効果があるということを聞いたこともある。それならば今はやらないわけにはいかない。
レニーは意識が飛びそうになりながらも、魔法を唱える。
「ウォーターウォール(水壁)」
「なっ・・・なんでやがります!?」
いきなりレニーの前に水の壁が立ちふさがり驚くブリッド。しかしブリッドをその壁を見て鼻で笑っている。
「ふふふ!なにをやってやがるのですか?そんな水でなにをしたいんですか?硬い壁ならともかく私の声はそんな水など関係ないでやがりますよ。」
「どうやらばれてないみたいっすね。この壁があるのとないのとでは全然違うっす。」
レニーは心の中でそう呟き、
すぐさま制服の一部を破り濡らし耳に入れ歌が鼓膜に届くのを遮断することに成功する。完全とまでは言わなくとも少し我慢する程度で済む為戦闘に支障はない。
そしてこのウォーターウォールにはもう一つメリットがある。それはウォーターウォールから直接攻撃魔法を飛ばすことができるという点だ。魔力を流し続けるという特性上防御しながら攻撃という一石二鳥の戦法が取れるのだ。
「ここはやはりこれしかないっす。」
ブリッドはまだ気づいてない。自分が優位であることを疑っていない。しかし今この時優位性は完全にレニーへと変わっていたのだ。
「ウォーターサークル(渦巻龍流)」
うねうねと動く生き物のようにとぐろを巻きながらターゲットに向かっていく。
「!!!」
「なんでやがりますか!」
「なぜ攻撃が?」
困惑した表情のブリッド。まさかレニーが攻撃できる状態であるとは思ってもいなかったのだ。はっきりって油断をしていた。
たかだか水の壁で自分の歌による魔力の乗せた攻撃が負けるはずはないと。破られるはずはないと思いこんでいたのだ。
「きゃーーーー!」
ブリッドに直撃。ブリッドはそのまま場外まで押し出される。
『勝者レニー選手!』
レニーの勝利が告げられ大きな歓声が会場中に響き渡っている。この勝利によりレニーは師匠のテオへの挑戦権を手に入れることができたのだ。
準決勝進出者が全て出そろった。
ウェンディー、パメラ、テオ、レニーの4人が次の舞台への進出者となったのだ。
いつも読んでいただきありがとうございます。
準決勝進出者決定しました。
明日も18時追加予定です。




