14話 とある訓練の1日
クリスが家庭教師として僕に訓練をつけてもうどのくらいたったのだろうか?
今日もいつも通り訓練を行っている。
「ほらぁ~テオくん私を捕まえてごらんなさ~い。」
「クリス先生ま~てぇ~」
「うっふっふぅ~ほら~は~や~くぅ~」
「あはは~!はやいよ~」
赤く輝く夕日が海を照らし二人の男女は浜辺で甘い時間を過ごしていた。
「んなことあるかい!!!!」
そう今行われているのはイシュタル家の庭にて、魔力を流すと重くなる服をきた僕がクリス先生を全力で追いかけるといった訓練中なのである。
クリス先生曰く。
「格闘術の修行は足腰が大事なのよね。そしてテオくんは格闘の才能は平均値。」
「肉体が強くなり魔法と組み合わせることでさらに強力にできる可能性があるわよ。」
ということだそうだ。もちろん組み手もやっているけど、『夕日を背に浜辺を走るゴッゴ』もとい、鬼ごっごが格闘術の訓練で大半の時間に充てられている。
魔法の訓練はというと本日はテオ専属戦闘メイドのリザと母アメリアが見学している。
「テオ様がんばってくださいです。」
「テオちゃんママが見てるからねー」
応援してもらっているしがんばろうと気合が入る。しかし今ちょっとした壁にぶち当たっている。
なにせ前衛魔法使い。どんな魔法を使えばいいのか?
例えば基本ともいえるファイアーボール(火球)。火の玉を遠くの的めがけて放つ魔法である。
僕の射程2m。うーん・・・どうしたものか?
「考え事してるときのテオちゃんもいいわね。そう思わないリザ、クリス。」
「はいです。」
「あら!いい男だわ。」
ちょっと外野うるさいんですけど。集中させてくれ。
・・・。・・・。
「!!!!」
「そうだ!これやってみよ。」
「あらあらあら~!テオちゃんどうしたのかな?ママ気になるわ!」
拳に魔力を集めて、炎をイメージして拳を燃やす。
ボッ!拳が炎に包まれる。
「あらあら~?」
「です!?」
「危ないわ」
母上、リザ、クリスはそれぞれビックリした声を上げる。
そして僕はそのまま拳を的へ向かって突き出す。
「テリャーーーーーーーー」
ドッカーン!!
「ケホッケホッ!」
「・・・。」
「どうだ?上手くいったか?」
殴り飛ばした的があった場所に視線を向けるすると、
これはなんということでしょう。先ほどまで立っていた的と青々としたキレイな芝生が消し炭となっているではありませんか?
クリスは僕に駆け寄り何をしたのか聞いてきた。
「これはどういうこと?」
「ファイアーボールを放つ為には飛ばす分の魔力も必要じゃないですか?それなら魔力を手に集めて拳を燃やして殴ったら飛ばす分の魔力を威力に回すことができていいんじゃないのか?っと」
「それにほら僕って『神の手』の加護があるじゃないですか?だから手は燃えない。」
「無茶しすぎよテオくん・・・。」
クリス先生は額に手を当て左右に首を振っていた。
「普通の魔法使いならね、自分の体に炎魔法かけると焼け死ぬわよ・・・。テオくんだからできることかもしれないけど、心臓に悪いし次からはやる前に言って頂戴。」
「クリス先生わかりました。」
落ち込みながらも視線を遠くで見ているリザと母上に向けると
「テオ様かっこいいですです。さすがですです。」
「私のテオちゃんだもの!このくらい当然よ!」
べた褒めしている様子を見てしまった。ちょっと恥ずかしいですお二人さん。でもありがたいことに元気を貰えた気がするのも確かなんだよね。
それにしてもこれ使えるかも。どうせ2mしか射程ないんだ。飛ばす為の魔力を全部威力へ。それならこういった使い方が良いのではないだろうか!?
今後の前衛魔法使いとしての方針が決まった一日となった。
これぞ青春!
そして母アメリア・・・ある意味最強の女性です。