143話 源泉についた
僕たちは温泉都市ユバスラである依頼を受けた。
その依頼というのは、
【温泉が出なくなった原因究明と行方不明者の捜索】
である。
温泉がでなくなりその原因を突き止める為に数名が源泉に向かったのだが、その者達は行方がわからなくなったそうだ。
そして依頼を出し、その依頼を僕たちが引き受けたということになる。
「テオちゃんと一緒に自然の中を歩くのも久しぶりね!」
母上は嬉しそうに口にする。ルンルン気分でハイキングでもしているかのような気持ちなんだろうな。そんな風に思ってしまう。木々の隙間から降り注ぐ木漏れ日がなんとも気持ちのいいマイナスイオンを感じさせてくれるその山道は何もなければ楽しいハイキングになるとも言えなくもない。
「それにしてもこんなところで行方不明になるのでしょうか?」
ルイーズが口にしたことは、納得である。険しい山道でもなんでもない一本道。舗装とまでは言わないが普通に歩くには問題ない道だ。
「なにこの匂いクサイ、クサイわよ!」
鼻をつまんで不快そうに文句をいうフリージア。
「源泉に向かっているんだし硫黄の匂いがきついのはしょうがないよ。」
僕がそういうと
「フリージアさんのほうが臭いですです。」
「なっ!なんですってぇ~」
キィーっとしてリザをポコポコ叩くフリージア。リザもフリージアの扱いに慣れてきたようだ。
フリージアの場合、花の妖精族ということもありクサイというよりもいい香りだったりする。
そんな緊張感のかけらもない状態で源泉に向かい山道を進んでいく。
「待った!探索に引っかかった。」
僕がそういうと皆の足が止まる。
「グルルルル・・・。」
ハクトは身を震わせながら威嚇するかのように喉を鳴らす。
「ハクトの様子がいつもと違いますね。テオさん何がいるのでしょうか?」
ルイーズはこれまで見たこともないようなハクトの行動に戸惑っている。
「反応が・・・デカイ・・・。これってまさか・・・」
そういって考えていると、
「ドラゴンかしら?」
母上が頬に手をあて首をかしげながら何食わぬ顔で口にする。
「ギルドでも最近ドラゴンが騒がしいというようなこといっていたし、その可能性が一番強いと思うよ。」
僕がそういうとルイーズとリザは一気に険しい表情となる。ドラゴンとなるとこの世界での上位種である。そんな存在がいるとなるとこういう反応になるのも仕方がない。いやもっと狼狽してもおかしくないし、むしろ冷静なのかもしれない。
「ドラゴンねー。竜族の里も近くにあるしその里のドラゴンかもしれないわね」
今さらっと衝撃の事実をいいましたよ母上。僕そんな話聞いてませんが・・・。
「母上。それはどういうことですか?」
「???」
なにをいっているの?っとばかりの表情をしている母アメリア。
「竜族の里が近くにあるんですか?」
「あるわよ!もっと山の上の方まで登らないといけないけれど確かにあるわ。」
「なぜそれを早くいってくれないんですか?」
「それはテオちゃんに聞かれてないからよ。」
「それでも教えてくださいよ。」
「情報収集は冒険者の基本よ!」
「それならドラゴンの仕業というのは予想されていたんですか?」
「いいえ!竜族は基本人族に干渉しないの。お互いに不干渉という契約も結んでいるのよ。」
「となると竜族が進んで何かすることはないと?」
「そういうことね。」
「しかし、この反応やこれまでの情報を整理すると・・・やはり濃厚なのはドラゴンの関与。」
僕がそういうと母上は
「・・・。」
しばらく沈黙ののち
「もしドラゴンがかかわっているとしたらなにか別の力が働いてるかもしれないわね。」
そう口にする。
「ここで考えてもしょうがありません。まずはその場へ行き姿を確認しませんか?」
ルイーズがそう口にする。もっともだ。姿が分からないうちから議論したところで何の意味もない。
「それなら私が先行するですです。」
暗殺者リザはやる気に満ちている。普段はドジっ娘メイドであるリザ。
そういえば真剣に暗殺者として動いているリザを見るのは初めてだ。
リザは姿を消し反応があった場所へと移動する。
15分後
「戻りましたです。」
「どうだった?」
僕がリザの偵察結果を聞くと
「ドラゴン源泉に入っていたですです。」
「「「!!!!」」」
皆一様に驚いた。
「ドラゴンが源泉に?」
「はいです。真っ赤なドラゴンが温泉に入っていたですよ。」
「ドラゴンが温泉?聞いたことないわね。リザそのドラゴンはどんな様子でしたか?」
母上がリザにドラゴンの様子を問う。
「首と頭だけ温泉から出していたですです。」
「それだけ?なんでもいいわよ!ほかに気づいたことはない?」
「うーんとですね~。赤い体に目も真っ赤だったですです。」
それを聞いた母上は
「・・・。暴走しているの?」
ポツリとそう呟いた。
「暴走とはどういうことですか?母上」
「ドラゴンの目が赤くなる時は暴走状態なの。でもおかしいのよね。暴走中はじっとなんてしていない。破壊の限りを尽くすはずなの。それなのに源泉に入っている?おかしいことばかりね」
母上なりの推理が行われた。
「もしかして、誰かに洗脳、操られているのでしょうか?」
ルイーズはドラゴン自身の意志ではなく、誰かに操られている為に異常な行動をとっているのではないかと予想する。
「ドラゴンを洗脳するなんて普通できないわよ!花の妖精族屈指の実力者で天才のあたしの魅了だってよくて数秒よ。同系統で操る精神魔法はあるけどドラゴン相手ではもっても秒単位よ。」
知識だけは豊富なフリージアさんいい仕事してます。
「テオ様それと・・・」
「リザどうしたの?」
なにか言いづらそうにしているリザに声をかける。
「おそらくですが、源泉を見に行ったという人はもうこの世にいないですです。」
「!!なにを見たの?」
「真っ黒になった人の形をしたようなものが源泉の傍に複数あったですです・・・。」
そのことを聞いたルイーズは
「なんとも惨い・・・。」
と手で口を押えて絶句している。
「テオちゃんどうするのかな?」
母上が今後の方針を聞いてきた。
「ドラゴンを排除しないといけない。でも、源泉の近くで戦闘すると間違いなく源泉を破壊することになる。そうならない為にも別のどこか遠く離れたところに誘導することが最優先。」
そうこの場で戦い源泉を破壊してしまっては今回の依頼は失敗と同じなのだ。それに受付のファギーも言っていた。
『温泉が出なくなったらこの街は終わり。』だと。
今温泉が出ない原因を排除しても新たに原因を作っては意味がない。
「そういうことでしたらここはいかがですか?」
地図を広げてルイーズがある地点を指で指す。
今いる場所は、温泉都市ユバスラから西にいったザラス山脈。ザラス山脈は北から南に長く伸びる山脈であり、北にあるドワーフ王国から南へいったユバスラまで続いている山脈なのだ。
そしてルイーズが指で指した場所は、現在地からやや北へいった近くに村や街のない地点で源泉からも十分離れた場所である。
「うん!そうだねルイーズが指したこの地点で迎え撃とう。」
「はい!」
「ですです。」
「うふふ」
「いいわよ」
ルイーズ、リザ、母上、フリージアの順に肯定していく。ルイーズはなんだか少し嬉しそうだ。
「でも誰が連れてくるのよ?お世辞にも向いてる人はいないんじゃない?」
フリージアがまっとうなことを言ってきた。普段とんでもないことしか言わない彼女だが、たまにこういった真面目で的を得たことを言ってくる。
僕、ルイーズ、リザは近接主体。移動速度では、僕>ルイーズ(ウエイトコントロール時)>リザとなる。しかしルイーズは時間制限があり短い。リザだとドラゴン相手に一人で引き付けるとなると荷が重い。母上は遠距離だけど連れてくるとなると移動スピードが足りない。
フリージアは攻撃系の魔法は持ち合わせていない。
となると・・・。
「僕がいく!」
「テオさんが行かれるのですか?危険です。」
「いや攻撃は避けれるだろうし、的も大きいから魔法を投げれば遠距離攻撃で当てることもできるよ!?」
「そちらではなく自然破壊をしてしまいます。源泉が・・・。」
あっ・・・そっちね・・・。
源泉が危ないという意味ね。
引き付ける際に攻撃は必要だろうと考えたルイーズは僕の攻撃で源泉が破壊されるのではないかという心配で危険といったんだね。
少し落ち込むわ。
「あっすいません。」
ルイーズは何かに気づいたようで僕に謝って来た。
「大丈夫だよ!気にしないで。悪気がないのはわかってるから。」
優しくフォローする。これも紳士のたしなみである!?
気を取り直して配置確認。
「僕とハクトがペアになってまずドラゴンに攻撃して気を引かせる。リザは森の中で待機。ドラゴンが森に入ったら離れた距離で並走してほしい。目的地に誘導できないような道の外れ方をした場合、攻撃し気を引いて。」
「わかりましたです。がんばるですよ!!」
リザは両手の拳を胸の近くまで上げ強く握りしめ頷く。
「母上とルイーズは誘い出す地点で待機。姿が見えたら母上が遠距離攻撃。ドラゴンが近づいてきたらルイーズも戦闘開始だ!」
「うふふ!ママの見せ場ね。」
「わかりました。」
母上とルイーズはそう答える。
「フリージアは・・・まあお好きに・・・。」
「えっなに?なんだかあたしの扱い雑過ぎない?」
これからドラゴン誘い出し作戦が開始されようとしていた。




