116話 真打登場!?
「大漁だ!祭りだ!」
思わず僕は叫びだす。
「師匠!これで野望の一つが叶うっすね!」
レニーが答える。僕とレニーはこのスクイッド(イカ)を食することをこの国に広めようと考えていた。
海を覆いつくすほどのスクイッドは確かに驚異である。
しかし、『たこ焼き』はあるのに『イカ焼き』がないのは許せない。
オクトパスは食べるのに、スクイッドが気持ち悪いから食べない街の人たちになんだか釈然としない。
それならば、僕が、いや僕たちがスクイッドを広めようではないか!
とこれまで影で時間があるときにレニーと一緒にスクイッドを使った料理を考えていた。
そして今回のスクイッド襲来はなんとも都合のいい展開である。街の人たち、一般市民にとっては災厄以外のなにものでもないが。
「なんとかひと段落ついたみたいですね。」
ルイーズはやや疲れた表情で答える。
「・・・ん!弱かったけどあの数反則。多すぎた!」
ウェンディーもお疲れ模様である。
フリージアは・・うんこういった場面だと空気だよね。戦闘能力は基本的に低いし、精神系魔法中心。しかも一度に一人となると活躍の場はない。
倒したスクイッド回収で活躍してくれたといったところ。
「あたしはがんばった!帰ったら祝杯よ~」
「フリージア!そんなお約束いったら!」
「おいあれを見てみろ!」
大量のスクイッド討伐任務をこなしていた他の冒険者が声を上げる。
「そら見たことか!」
「ええ!これあたしのせい?あたしなにもしてないわよね!?」
冒険者たちの視線の先には体長10mはあるのではないだろうか?そんな大きさのスクイッドが出現した。
白い体に赤い目をしたそいつはドルフィキの海岸、つまり僕たちがいる方へと近づいてくる。
僕たちは今船の上にいる。ここで退いたら街にはCランク以下の冒険者しかいない。
「あの大きさなら大丈夫かな!」
「テオさん何をされるおつもりですか?」
「うん!練習の成果を発揮するときがきたのかな?っと思ってね!」
「いったい何の練習の成果?ですか?」
「それは見てのお楽しみだよ。ただ失敗したらこっちに津波くるかもしれないからそのときはよろしくね!」
「「「えっ!」」」
驚きの声で全員ハモっている。
「フリージアは一緒にきて!相手一匹だから攪乱よろしく」
「な・・なんであたしが・・・。」
「まだまだ元気だよね?さっき空気だったし」
悪だくみを考えているような黒い笑みでフリージアに問いかける僕。
「それ言われると・・・。」
「フリージア!これは君にしかできない、頼めないことなんだ。」
「なんですって!」
「優秀な君だからこそ頼みたい。」
「そ・・・そんなにいうんなら一緒に行ってあげてもいいんだからね!好きで行くんじゃないんだからね。あんたがどうしてもっていうから行くんだからね。」
(勝った!)
僕は心の中でガッツポーズをしている。
「しかしチョロいな」
「チョロいですね。」
「ん!チョロチョロ」
「チョロいっす・・・。」
フリージアはあたしについてきなさいと言わんばかりに息巻いている。
「これからどうするのよ?」
フリージアが聞いてくる。
「攻撃にいくよ!」
「どうやって?あんたの魔法射程短いんでしょ?」
「空を飛んでいく。」
「何を言っているの?」
「空を飛んでいく。」
「そうじゃない。言っている意味がわからないといっているの!」
「言葉通りそのままだけど!?」
そういって僕は、『ファイアーバードアーマー(不死鳥)』を唱える。
フェニックスの形をした炎を纏う僕の独自の魔法。
これを纏うことで炎の翼を動かし飛行移動が可能となるのだ。
そのまま上空へ移動する。
「意味がわからないわ」
僕のその姿を見て驚愕するフリージア。しかしそれと同時に面白い実験体を見つけたと言わんばかりの目つきへと変わっていく。
「ほらいくよ!飛べるのは僕とフリージアだけなんだから。あいつが近づく前に沖で叩こう。」
「戻ったらその魔法の原理を教えなさいよ!」
「僕にしか使えないよ!?」
「それでもよ!」
僕とフリージアは飛行し、大きなスクイッドの元へ向かう。
「近くで見るとより一層でかいな!」
「ええ!まさに化け物ね!」
「フリージア魅了はどのくらいの時間効果がある?」
「あの大きさからすると数秒といったところかしら?よくて5秒。足止め程度よ。」
「それで充分だよ。得体の知れない敵だから『鑑定』をしたい。でも僕一人だと2メートルまで近づくのは難しいからね。あの巨体と触手で近づくのを邪魔されるだろうからね。」
「なるほど。そこであたしの出番ってわけね!よくわかってるじゃない。」
なんだかうれしそうな笑顔のフリージア。
「準備はいい?」
フリージアはそうって、黄色の髪から白い髪へと変わり『魅了』を使う。花粉のような粉が巨大なスクイッドを包み込み魅了をかける。
「いまよ!」
その声に反応し僕は巨大なスクイッドに近づく。2メートルの距離までつめて
「『鑑定!!』」
・・・・。
・・・。
・。
ピコン!
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種族:スクイッドデビル
HP:5907 MP:1208
力:976
耐久:888
敏捷:398
魔力:283
特殊スキル
海の王者の叫び
察知
パンツァー
スキル
墨鉄砲
水耐性
麻痺毒
風魔法
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『鑑定』を見た結果負ける要素はなさそうだ。
魔物ランクでいうとSランク相当。以前倒した『アンデットシュピンネデビル』(アラクネ進化前)と同等あたりだろう。
「それにしても『パンツァー』ってなに?」
「意味のわからないスキルも持っているようだけど、まずは実験だ。」
僕は『スクイッドデビル』の上空へと移動する。そして新しく開発し使えるようになった新魔法。
『ファイアーボールスロー(火球投)』
説明しよう。魔法使いは魔法を放つことができる。しかし射程2メートルのテオにとって放つことができる範囲は2メートルである。
女神メリッサから『腕力強化』のスキルを貰い、魔法を投げればいいじゃないのか?
そう考えたテオは、魔法を投げる為に新たに考えたのがこの『ファイアーボールスロー(火球投)』なのだ。
特徴としては、
ファイアーボールの周囲に、的に当たるとすぐ割れる程度のマジックシールドを展開させファイアーボールを包み込んだもの。そうすることでファイアーボール自体は空気抵抗を受けず遠くの距離になるほど無駄に魔力を使い威力が低いというデメリットをなくしている。
さらにこの場合、ファイアーボールは圧縮され、少ない魔力でさらに高威力となる。
この方法は他の属性でも有効である。
テオはそのまま上空から『ファイアーボールスロー(火球投)』を落とす。
そう元の世界でいう戦闘機による爆弾投下と同じことをしている。
無数の『ファイアーボールスロー(火球投)』を投下。
ドカーン!
スクイッドデビルに直撃!
ギィャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
スクイッドデビルが悲鳴を上げる。さらに投下された『ファイアーボールスロー(火球投)』がスクイッドデビルに当たっていく。
白い体が黒く焦げ、スクイッドデビルはテオに殺意を向ける。
頭を振り回しなにを始めるのか?と凝視していると
ビュン!!!
「な・・・なんだこの圧!」
スクイッドデビルの攻撃に僕はなにやら嫌な予感がし、その圧を避けるように動く。
ザパッ!
「なっ!!」
思わず僕は声を上げる。
『ファイアーバードアーマー(不死鳥)』の炎で作った羽根が断ち切られたのだ!
バランスを崩し落下しはじめる。
「くっ体勢を整えなければ・・・!」
どんどんと落下していき、スクイッドデビルの触手の射程範囲に入る。
ぎゅるるる!
スクイッドデビルは『墨鉄砲』を僕に向けて放つ。
「まずい!」
そういいファイアーバードアーマー(不死鳥)の羽根の再生が間一髪間に合い『墨鉄砲』を回避。
しかし次の瞬間、
スクイッドデビルのラッシュが始まる!
オラオラオラオラ
と言わんばかりの攻撃を始める。8本の足に2本の触腕。これらをふんだんに使い僕に向かってジャブ、ストレートと強弱をつけながらボクサー顔負けのパンチのようなものを放つ。
ただ打つだけではなくフェイントも入れる始末。
「近距離厄介だな!この相手は!早く距離を取らないと・・・」
「!!!!!!!!!」
「パンツァーってまさか・・・パンチのダジャレか?」
このボクサー顔負けのラッシュができるのが『パンツァー』ということなのだろうか?
繰り出されるパンチを上下左右に避ける僕。すると今度はムチのようにしなりながらの攻撃を織り交ぜてきた。
避けることはできるがなかなか距離を取ることができない。
次の瞬間
「し・・・しまった!」
スクイッドデビルの触手に捕まったテオ。
女性ならばここでお決まりの熱い展開になるのかもしれないが、残念なことにテオは男性である。そういった方向の趣味を持つ触手持ちがいることも否定はしない。今回はその展開が・・・。
いつも読んでいただきありがとうございます。




