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初手犯罪の主人公

拙作でございます。

勢いとノリで書いてます。

一週間かけた設定の霊圧が途絶えました…


 エンドロールが流れるのを俺は子どもみたいにワクワクと眺めていた。心に飛来した達成感も束の間、胸の中で期待がフォークダンスとコサックダンスを融合させたブレイクダンスみたいに躍り狂う。


 「このゲームは終わりから始まる」その言葉がようやく実感となるのだと思うと居ても立っても居られなかった。VR機器もカセット自体も高価すぎて血反吐を吐けども手に出来なかった高校時代……それを乗り越え夢のセットを使って二年越しの憧れの前に立っていると考えると何だか感慨深い気がする。


 【New Travelers RPG】が話題となりゲーム界の話題を総ざらいしたのは約二年前、発売自体は話題となる半年も前の話だった。当初はそこそこ面白いRPGという評価であったのにとあるバグの発見で別ゲーと化した事から一転、過去類を見ない神ゲーと評価されるに至った。


 それを実況動画を見て我慢するしかなかった俺がどんなに……どんなに焦がれて羨んでいたか。受験が控えていなければ泡を吹いてでも親に買ってくれと懇願していた自信がある。


 「っと、浸ってる場合じゃない。全裸にならんと」


 うん、独り言が変態じみているというか、変態そのものだ。しかし、バグを発生させるのには必用なこと。アイテムボックス内部と持ち物を檜の棒1つとリンゴ99個と1個を所持してエンディングを終えることがバグの発生条件、何とはなしに流れ行くスタッフの名前に感謝を込めてこれ迄に手にいれてきたアイテムを投げつけていく。途中からAの文字には必中させるという自分ルールを決め遊んでしまった。


 残す予定だったもの以外を投げつけ終わる頃には何だかよく分からない英語の文章とタイトルがゆったりと浮き上がりBGMが消えかかる直前だった。


 通常ならここから王都に戻されクリア後の世界でゲームを楽しんでいくという流れになるのだけれど、この変態装甲の場合でデバッグ用のシステムの何かしらが引っ掛かるらしくタイトルが縦長に歪みバグの発生を教えてくれた。


 最終的に真っ白なタイトル文字が膨れ上がり視界を優しく包むフラッシュが放たれた。


 「………………ん?」


 随分と長い間白に満たされているというのに何も変わらない。数多の実況動画で確かめたが唐突に始まりの遺跡へと転移させられる筈なのだが。


 何かミスをしたのだろうか?


【夢は叶いますか?】


 今にも崩れそうに儚げな灰色の文字列が真っ白の中に浮かんだ。


 何だろうか、これは?最近ようやっとバグを公式認定してやんよコンニャロー!と叫んでいた開発グループの公式アップデートの影響かな?


 夢は叶いますか……ねぇ?念願のゲームやってるし叶うにしとこうかな。現実で真剣に聞かれてたらNO一択なんだけどね、はぁ、就職とかいう概念消滅してくれないかなぁ……。


 「叶います」


 ちょっとだけ憂鬱な声色が漏れてしまったが今はお楽しみのゲーム最中、哲学染みた思考にたどり着く前に考え事と未来の憂いにバイバイしておきましょう!


 【君に少しだけ期待してもいいですか?】


 「大丈夫だ、問題ない」


 あぁ、やっぱこれアップデートの影響だな。バグ関係はどうこう弄れないくらいmodとか出来てるから導入だけでもどうにかしたって所なのだろう。


 【君が正しさを見つけてくれる事を願います】


 何だか知らないが願われてしまった。灰色の文字列が硝子みたいに砕ける。虹の欠片になって溶けていく姿に暫し目を奪われ、はっと意識が戻った時には薄汚れた石タイルで覆われた空間に立っていた。


 周囲は所々が苔むしており、所々に厳めしい紋章のようなものが描かれている。背後には砕けた階段がありその先には青空が見え、正面には薄暗い奥へ奥へと続く通路がある。間違いない、ここは初期リスポーン地点の邪神の眠る遺跡だ。どう考えても初期位置の名称だとは思えないけどね!


 服装も下着のみを残した半裸状態から質素な麻のようなもので出来た上下の服と革の鎧が着付けられている。美容室で首に巻き付けられるアレ並みの着け心地の悪さ。


 よし、無事に二週目バグルート突入!握り拳に息を吹き掛け指先で宙をドラックし、真っ黒なメニュー画面を呼び出し確認もしたがしっかりとアイテムボックスの表記にLBという文字が追加されていた。


 「よしよーし、良い子だ。」


 以下メニュー画面

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■【ステータス】■■■■■■■■■■■■■■

■【スキル】■■■■■■■■■■■■■■■■

■【アイテムボックスLB】■■■■■■■■■■

■【装備】■■■■■■■■■■■■■■■■■

■【オプション】■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


 ……?違和感があるような。いや、そんな事より今はゲームだ。俺にはお約束をやる義務があるんだ。


 この通路の奥には目覚めかけた邪神が眠っている。場所の名称で察するのは簡単だろうが、開発グループ推奨シナリオとしてはこの邪神が所詮の相手となる。プレイヤーは外に出てアイテムや武器になりそうなものを持って進むことで考えて動くという事の確認出来る。


 勝負に負けても邪神は強者の余裕で見逃してくれるし、シナリオの進行にも関わってくるので無視するのは事前情報が一切ない人か関わらないルートを見てみたい人くらいだろう。

 

 ただ、それとは別に先ほど言ったお約束をする義務が権利がある。


 両手の親指と人差し指を地に着け右足を縮めて左足を伸ばす、そうクラウチングスタートのスタイルだ。獲物がいる方向を捉えて真っ赤な眼光を放つ。呼気は深くなお深く開いた口から漏れ出ていく。


 心音は落ち着いている。この時をずっと待っていた。これはやらねばならない事だ。食事を終えた後に食器を下げるより、脱いだ靴をそろえるより、五分前の行動を心掛けるより当たり前なんだ。


 力を込めた右足が僅かな土埃を舞い上げズズッという音をたてる。フッ、と息を吐いて地面を蹴り飛ばした。耳に自分がつくった風の音が触る。歩幅が段々と小さくなり前へ前へとスピードを高めていく。


 それほど通路は長くなかった。時間にして1分程だったろうか、前方に重々しい扉が鎮座している。飛び付くように取手部分に掴みかかりグッと後ろへと引き、扉が開き出来た隙間に体を捩じ込んだ。


 実感した。俺は今、テンションが高い。走る必要とかギリギリの隙間を通る必要は何一つ無かった。だが、押さえ込めない。なら無理にそうする必要なんてない。心のままに生きていくの何処に罪があろう!


「そう思わないか邪神ちゃん!?」


「え?」


 シルバーアクセサリーみたいに少しくすんだ髪を腰まで垂らしあどけない顔を退屈そうにさせていた幼女が祭壇の様な場所に座り足をぶらつかせていたのだが、何故か知らないが声をかけたら固まってしまった。


「て、事でアイテムボックス【リミットブレイク】!」


 幼女へと掌を向けて『アイテムボックスLB』初発動!幼女は唖然の表情のままスッと消えてしまった。


 「これが【邪神がアイテムボックスに入っちゃったんだけど……いいよね?】事案か……」


 アイテムボックスを確認。持ち物に邪神の分身1が追加されている。【アイテムボックスバグ】やはり強力な魔力を持っている。犯罪行為なんて二十歳の誕生日の三日前に親の酒を飲んだくらいの俺が幼女拉致に手を出してしまうなんてな。


 言ってしまえば【アイテムボックスバグ】の実態は何でも入ってしまう事と、入り口出口が再現なくデカイことのみだ。しかしこれこそが平凡な基本1人用VRRPGを神ゲーへと押し上げた正体でもある。


 既存のゲームは破天荒な事をしようとすれば重くなったりゲーム自体がクラッシュしたりと良識の範囲でしか遊べなかった。


 VR機器は値段と比例してそんな事が起こらないくらいある程度処理能力があったのだが、今までのゲームという根底があったからか自由度がそこまで跳ね上がらなかったのだ。


 その点においてはこの【New Travelers RPG】も同じだった筈だったのだが、このバグのせいで自由度が大気圏を突破してしまった。どうやらバグの形態とVR機器が謎の調和を起こし『何でも出来る』が出来てしまったらしい。


建築やら数多のmodの導入やらでお祭り騒ぎへと発展、故に今でも大人気なのだ。RPG部分はね、うん。普通に面白いって評価です。


 で、その一片がプレイヤーの9.5割が幼女をしまっちゃうという暴挙に駆り立てた。シュールで衝撃的でチート感を体験出来てしまうお手軽邪神ちゃんは人気投票でもトップ3に入ってしまうくらいだ。


 さて、やる事はやったしログアウトして昼食食べてからやりますか。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

■【ステータス】■■■■■■■■■■■■■■

■【スキル】■■■■■■■■■■■■■■■■

■【アイテムボックスLB】■■■■■■■■■■

■【装備】■■■■■■■■■■■■■■■■■

■【オプション】■■■■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


…‥ん?あれ【ログアウト】の項目無くね?



まだ…まだ…大丈夫…。

設定での主人公?ツッコミ役ですね(キリッ)


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