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驚愕の事実 Ⅱ

「──本来、《幻想戯曲》のキャラや武具を召喚するのには、対象である本を全て読み終える事が大前提なのよ。その能力や見た目等も鮮明に想像してから具現化させるモノなの。この系統の魔導書は」


「といっても、出来ちゃったモノは出来ちゃったんだからさ……仕方ないだろう。それに何の説明もなく召喚しろと言ったアイリスにも非はあるんじゃないか?」


「…………あ、破廉恥な貴方が嘘を言っているという可能性も──」



自分の一連の行動を包み隠さず話したにも関わらず、アイリスは未だ目の前で起こっている事象を受け入れられていないらしい。挙句、俺が嘘を吹聴しているとか言い出したのだ。

それは幾らなんでも酷いだろう。思春期の男子に対する冒涜ではないのか。


そう胸中で反発しつつ、隣に座っている赤ずきんちゃんことメイジーを一瞥する。

……やはりあの時と変わらずのロングブロンドの髪と瞳。彼女の武器と思しき紅い刺又はもう持っておらず、誰がどう見ようとフードコートを羽織った少女にしか見えない。

つまり、戦闘時に見られた獰猛さは感じられないという事だ。



「…………?」



俺の視線に気が付いたか、メイジーはこちらに顔を向けてくる。頭上には疑問符が浮かんでいるようで、小動物のような動作で小首を傾げた。

────愛らしい。

そう思いながらも、口には出さない。アイリスに何を言われるか分かったもんじゃないからな。


メイジーには首を横に振って『何でもない』という意を示し、次いで顎に手を当てて考える仕草をしているアイリスを見る。

しかしアイリスはそういった類いに敏感なのか、すぐさま顔を上げてこちらを睨み付けてきた。

そして「よいしょっ」と姿勢を正すと、その瞳で真っ直ぐと俺とメイジーを見据える。


また数瞬だけ考える仕草を見せたが、どうやら彼女の中で答えは導き出せたらしく、



「蒼月。……手の平を見せてくれるかしら?」


「……手の平?」


「うん」



言われるがままに手の平を差し出す。

すると彼女は自身の手を俺の手と重ね、呪文の様な(ことば)を諳んじた。

──刹那。

ボウっと発された淡白い光と共に、手の平サイズほどの魔法陣が双方の間に展開される。

アイリスはそこから何かを感じ取っているらしく、瞳を閉じて精神を集中させていた。


メイジーも不思議そうにこちらを覗き込んでくるが、果たして何の調べなのだろうか。



「……まさか──いや、そんな事は…………」


「……どうした?」



僅かながら眼を見開き、動揺したように呟くアイリス。先程の魔法陣から何を読み取ったのかは知る由もないが、彼女にとって結果が()()であったのは明らかであろう。

──重い雰囲気に耐えきれず、俺は問う。



「……なぁ、アイリス。どうしたんだ?」



俺の問いを聴き留めると、彼女は一拍置いてから答えた。



「さっきの魔法陣は、対象の魔力量──『氣』とも言うんだけれどね。それを調べる術式なの。……人間には生まれ持った『氣』があるんだけれど、それの所有値によって契約できる《幻想戯曲》のランクが変わるのよ」



──そんな《幻想戯曲》のランクは五段階らしい。曰く、下からD、C、B、A、S、だと。

そして、とアイリスは付け加え、饒舌に語っていく。



「貴方の『氣』の量が、少しばかりアレでね……。端的に言うと、()()()()()わ。数値化しただけでも、Sランクの《幻想戯曲》と契約できるほどの『氣』の量を貴方は持っているのよ」


「……俺が、か?」


「えぇ、間違いないわね。『氣』の量が無尽蔵な人は極稀にいるんだけれど、どうやら貴方はその部類に入っているみたい」


「みたい、って…………」



更に、とアイリスは言い、俺とメイジーを交互に指す。



「貴方の『氣』の量がSランクの《幻想戯曲》と契約できるレベルなら──その子も、それ相応の強さはあるわよ。恐らく《幻想司書》である私の眼から見ても、Sランクレベルね」


「メイジーも、か?」


「えぇ、そうね」



アイリスはそう言うと、口の端を僅かに上げた。まるで、思わぬ掘り出し物を見付けたかのように。

…………いや、そうとしても。



「この《幻想戯曲》はアイリスが落としたモノだろ? なら所有権は《幻想司書》であるアイリスにあるんじゃないか?」


「それは既に無効化されたわ。《幻想戯曲》の契約者が判明した時点で、所有権は私から貴方に移行している。本来なら正規の方法で契約破棄させるのだけれど、それが出来ないんじゃ手も足も出ないの。だから──」



とアイリスは立ち上がり、満面の笑みで俺たちを指さして告げる。



「──解決策が出るまで、貴方たちには同棲してもらうわ!」



~to be continued.




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