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それは泡と消える姫のように

それは早熟の桃のように

アルラウネは母親を食すと、


「おいしい…くない。」


そう言って去って行った。

自分の記憶の中で向かうべきだと覚えている場所へ。


どれだけ歩いただろうか?

途中ですれ違った商人や、旅人は美味しかった。


そうやって空腹を満たしながら、

自分が向かうべきだと知っている農村へとようやくアルラウネはたどり着いた。


向かうべき人間の集落の向かうべき家の中に入ろうとしたとき、

アルラウネは迷った(・・・)


何故そんな複雑な思考がアルラウネにできたかはわからない。

しかし彼女は再びその家の前から去ろうとして、

やはりそれをやめることにして家の中に入った。


中には寝ている少女の祖母がいた。

もはや虫の息。少女が辿り着く前に死んでいなかったことが奇跡の様だった。











アルラウネは寝ている老女を養分に変えてその家を去った。

次の日、老女の隣人が老女が行方不明になったことを発見した。







アルラウネはそれからそれ以上その農村で被害を出すことなくその農村を去った。

そして彷徨いながら別の人間たちの集落へとたどり着いた。

その途中でも引越し中の家族を襲ったり、

キャラバンを襲ったりした。


そうしている間にアルラウネは成長し、

アルルーナというモンスターへと進化した。

以前と比べ格段に知性が付いて、

ヒト並みな思考ができるようになった。

その姿は、少女の母親の姿に似ていた。



インペルダンという町に着いたとき、

その町には母親の知り合い、

知り合いと言えば聞こえはいい。

身もふたもない言い方をすると達の悪い弦見方をしていた昔の男達と出会った。


アルルーナはそのうちの一人の家に泊まることにした。

その男の家の中にはいい年になってまだ人前で堂々と言える職にない男たちが大勢いた。


そのうちの一人がアルルーナに言う。


「おお、クルッツァンヌ。お前はいまだに若々しいな。

男の精気でも吸って若返ったか?」


それを聞いたほかの男たちも下卑た笑いで乗っかった。

アルルーナは最初意味を理解していなかったが、

『生気』なら今まで散々吸ってきたのでそれを肯定した。


「? そうね。いっぱい吸ってきたわ。」


それを聞いた男たちの思考は一色に染まっていた。

というよりそもそもそれが目的でクルッツァンヌという女の姿をしたアルルーナを呼んだのだ。


「そうか。だったら俺達のもいっぱい吸ってくれや。」


そういって男たちはズボンを脱ぎ始めた。

ベルトに乗っかっていただらしない腹を揺らしながらアルルーナに迫る。


ここにきてようやくアルルーナは男たちの思考を理解したが、

それならそれで栄養になると考え、男たちに身を任せることにした。

彼女は栄養になるものを受け入れる事ならば問題ないという本能に従ったのだ。


植物の交配なんて、

自分の性器という性器を晒して不特定多数にBUKKAKEるのだ。

人間の性行為なんてまだ慎ましい。

アルルーナにとっては嫌悪感などなく、

その程度の感想だった。

アルルーナには『人』の倫理観など毛頭ない。

あるのは、植物モンスターの感性だけだ。



そして、

アルルーナの身体には一種の精神に効果がある毒がある。

翌朝、男たちは精も根も尽きた後、

生も魂も抜き取られた。



それからしばらくして、

ヴァンクォッチという国のハインダンという町に着いた。

ヴァンクォッチという国にはありとあらゆるものに牙を突き立てるという気風があり、

しかしけれども普段はその片鱗が見えない大人しそうな国民性であった。

高い技術と自然を愛する牧歌的な気風、

某十倍返しさんな気性と、取り敢えずヤギのミルクでも飲んで落ち着けやという気風、

そういったものが自然に調和されているのがこの国の特徴であった。


アルルーナはこの国でものを知らない学のない難民として紛れ込み、

教育を受けることにした。



徐々に知性を増し、人格を完成させてきたアルルーナにはこのヴァンクォッチの気風は心地よかった。

しかし、彼女にはヴァンクォッチの土と水が合わなかった。

恐らく彼女が撒くことになる種たちにとってもそうだろう。


名残惜しくはあったが、アルルーナは彼女の身体を求めていた教師の一人を養分にすると、

ヴァンクォッチを去ることにした。

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