HENTAI☆GIRLS
恋愛,ホラーに続いて,今回投稿するのはコメディーです!
こんな女子高生もいる思うんだっ!という考えから生み出されたこの作品。
幻想を打ち砕く物語を貴方に・・・
「おかあさん、ぼく今日ね、ゆうくんとあっくんとあそんだの~」
そう言いながら母親と手をつないで横を通り過ぎた三、四才ほどの少年を見て、くりっと大きな目を瞬かせたサイドポニーの女子高生―――一宮ゆきは、隣を歩く二人の友人を振り返った。
「ちょっ今の見た!? 惜しむことなく晒された白くて細い手足にピンク色に色づいたまあるいぷにぷにほっぺ、あの年齢特有の舌っ足らずな言葉と小鳥のように高くて耳に心地いい声を発する小さなおく「はいオーケーストップそこまでです!」
興奮を露わにマシンガントークを繰り広げるゆきを制したのは、艶やかな黒髪をなびかせる美少女―――二羽月乃だ。
「あなたねぇ、初台詞がそれって恥ずかしくないんですか? ショタコンもたいがいにしてください!」
「まあまあ、ふーちゃん落ち着いて。いーちゃんの趣味がおかしいのは前からでしょ?」
そういって月乃をなだめるのは、毛先がふんわりカールしたおっとり少女―――三空ハナである。「ちょっと待って全然フォローになってないよ!?」というゆきの主張を華麗にスルーしたハナは、笑顔を崩さぬまま再び口を開いた。
「小さい子供は確かにかわいいと思うけど、でも所詮はさっきの子だって男の子だよね? どうせなら女の子のほうに視線をもっていきなよ。まあハナはロリコンじゃないから特に興味はないけどね。女の子はやっぱり女性特有の膨らみが出てきてからのほうが私は好きかな。一応ここは路上だし何がとはいわないけど、私の推しはBかもしくはCだね。いーちゃんみたいな慎ましやかなAや、ふーちゃんみたいな大人の魅力あふれるDも、もちろん素敵だと思うよ? 目の前に曝け出されたら迷うことなく手を伸ばしちゃうくらいには惹かれるし。でもやっぱりいかにも発展途上ですって感じのBCが、ハナにとっては最高にそそられるんだよね。発展途上ってことはつまりこれからの可能性が絶大ってことじゃない? それをハナの手でハナ好みに成長させていくって、それはもう考えただけでもドキドキワクワクしちゃうムグッ」
とても流暢に一度も噛むことなく語り続けるハナの口を、顔を真っ赤にした月乃が両手で塞ぐ。
「お願いやめてもう勘弁してください! というかどうしてあなたが私たちのアルファベットを知っているんですか!? そしてどうしてゆきは今の長台詞を聞いても平然としていられるんですか!?」
「いやまあ、私とハナは幼稚園からの仲だから、もう慣れちゃったというか? 幼稚園の先生に抱っこしてもらうとき、無邪気を演じつつ先生の胸に顔うずめて興奮してるハナを見て育ったら、もはや慣れざるをえないというか?」
「それダメです! 慣れちゃダメなやつです!」
苦笑いで答えるゆきの肩を、目を覚ましてとでもいうように月乃が揺さぶった。
「別にいいでしょ。あの柔らかくて弾力のある感触が好きなんだから!」
「えっ、ハナあんた、まさか幼稚園の先生以外の胸にも顔うずめたとか言わないよね?」
頬を膨らませるハナに、引き攣った笑みを浮かべたゆきが声をかける。問いかけに対してきょとんとした様子のハナは、しかし次の瞬間にっこりと天使のような可愛らしい笑みを浮かべた。
「ハナって身長低いでしょ? だからね、背の高い子とハグしたときなんかには、ちょうどハナの顔の位置に相手の胸がくるんだよね。ハナ、自分の低身長を今までずっと呪ってたけど、それに気づいたときは思わず親と神様に感謝しちゃった!」
中身は悪魔だった。
「高身長の女の子今すぐ逃げて!」
「嗚呼神様、あなたはどうしてこの子の背を低くしてしまわれたのですか?」
携帯で知り合いの女子に警告を出そうとするゆきと、天を見上げて涙ぐむ月乃に、「でも」とハナが声をかける。
「いーちゃんだってあんまり人のこと責められないでしょ? ねえ、ショタコンさん? ふーちゃんだって周りに隠したい性癖の一つや二つ、実はあるんじゃない?」
「あなたたちと一緒にしないでください! ありませんよそんなもの。」
「いやいや『あなたたち』って一括りにしないでくれるかな!? 確かに私は小さい男の子が大好きだけど! 好きで好きでたまらなくて、誘拐したいとさえ思うけど! あくまで思うだけであって、ハナみたいに実行に移すことはないからね。」
「いーちゃんったら、いつまでそんなこと言ってられるかなあ? 先にニュースで取り上げられるのは果たしてどっちだろうね。ふーちゃんはまあ、しょうがないっか。なんていったって彼氏もちだもんねえ。」
そう、ハナの言葉の通り、月乃はなんとリア充なのである。
「彼氏もちの美少女に異常性癖なんて、あるわけないでしょ。月乃はちょっとオープンな話しただけで顔真っ赤にしちゃうんだし。」
二人の言葉に、月乃は頬を紅く染めてはにかんだ。
「ふふ、この前はその彼の誕生日だったんですよ。」
「えっ、そうだったんだ。」
「ふーちゃん何かプレゼントしたの? バレンタインのときも随分一生懸命作ったらしいけど。」
「バレンタインのときは、愛情たっぷりのケーキを贈ったんです。今回の誕生日は、くまのぬいぐるみストラップをプレゼントしました。日付が刻まれている限定ものですよ。」
誇らしげに報告する月乃に、二人は呆れつつも祝福の声を上げる。
「ケーキもそうですけど、今回のストラップにもちょっとだけアレンジを加えてみました!」
「アレンジ? へえ、どんなの?」
「ハナも知りたい!」
食い下がる彼女たちに、月乃は嬉しそうに笑いながら、衝撃の事実を告げた。
「ケーキには隠し味として私の血液を、ぬいぐるみの中には盗聴器を入れてみたんです。」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?」」
「愛する彼に私の一部を取り込んでもらえるなんて、最高に幸せですよね。あっ、心配しないでください。血液型は同じなので体に害はほとんどありませんよ。盗聴器は、ちょっと高かったけど、彼のためにと思って奮発しちゃいました! 彼って少し頼りないところがあるでしょう? だから、彼女としては、いつでもどこでも見守ってあげたいんですよね。本当は盗撮カメラを仕込みたかったんですけど、それはさすがに手が届かなかったので・・・。まあ彼にも女の子には見られたくないものくらいあると思いますし、ちょうどよかったのかもしれませんね。もちろん、私は彼がどんなものを持っていようと、彼にどんな趣味があろうと、受け止められる自信がありますけど。あら、二人ともどうかしましたか?」
硬直しているゆきとハナを疑問に思った月乃は二人の顔を覗き込むが、まったく反応がない。一つため息を吐いて、ポケットから端末を取り出した月乃は、その画面を見て「あっ」と小さく叫んで表情を明るくさせた。
「彼に仕込んでおいた発信機が近くにあるみたいです! 最近一緒に過ごせていなかったので、今日は彼と一緒に帰ってもいいでしょうか?」
「えっ? あ、うん。」
先にショックから立ち直ったゆきがこくりと頷くと、月乃は申し訳なさそうに、それでも幸せそうな笑顔いっぱいに「ありがとうございます!」と礼を述べた。
「本当にごめんなさい。それでは今日はこの辺で、さようなら!」
「ま、またあした~」
軽い足取りで走り去っていく友人に、我に返ったハナがぎこちなく手を振る。
それからしばらく、残された二人は黙ってゆっくり帰路を歩いた。
十分ほど歩いたところで、ゆきがぽつりと言葉を落とす。
「さっきの月乃の話さ、彼氏の方は気づいてないのかな。」
独り言ともとれる呟きに、ハナもまた小さく答えた。
「知らないと思う。ふーちゃん、隠すとか仕込むとか言ってたし。」
「そうだよね。」
ゆきの返事を最後に、再び沈黙が舞い降りる。それを破ったのはまたしてもゆきだった。しかし今度は先ほどのような小さな声ではなく、しっかり前を向いて元気のいい声で。
「まあでも、私たちがどうこう言えた義理じゃないよね! いままで散々私たちの暴走に付き合わせちゃったわけだし。月乃が幸せなら、もうそれでいいんじゃないかな?」
ゆきの言葉に、ハナもまた俯いていた顔を上げた。
「そうだね。彼氏さんのほうも、知らぬが仏っていうし。二人が幸せなうちはまあいっか。」
顔を見合わせた二人はクスリと笑いあった。
「刑務所には、ハナたち仲良く三人で入ることになりそうだね。」
「あははっ、ちょっとやめてよね! その未来が容易に想像できて怖い!」
互いの異常ともいえる部分を知り合った彼女たちの絆は深まったに違いない。
互いの秘密を共有する彼女たちはまさに、『HENTAI☆GIRLS』と呼ぶにふさわしい存在だろう。
めでたしめでたし
『HENTAI☆GIRLS』お楽しみいただけたでしょうか?
まとめ的な意味も込めて,ざっと登場人物の説明をしちゃいますね。
一宮 ゆき (いちのみや ゆき)…高校一年。サイドポニーの活発な体育会系女子。ショタコン。
二羽 月乃 (ふたば つきの)…高校一年。黒髪清楚系女子。美人で彼氏持ち。隠れヤンデレ属性。
三原 ハナ (みはら はな)…高校一年。ゆるふわ系女子。興奮すると早口に。女の子が大好き。
の三人ですね。この三人の名前には二つほど統一性を組み込んでみたのですが、あなたは気づきましたか? 一つは簡単、名字が数字になっている点ですね。これはさすがにわかったかと思います。さてさて、問題は二つ目。まあわりとよく聞く言葉ですので、お気づきの方も多いでしょう。そう、かの有名な詩人・白居易の詩に用いられる四季折々を表す言葉、『雪月花』です!
この三人は個人的に気に入っているので,機会があればまた登場させたいなと思っています。
それでは,ここまで目を通していただき,ありがとうございました!