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トマコマイReversible~The Game~  作者: 獄炎の魔術師
第一章 CROSS✝CHANNEL
6/9

木漏れ日と強襲

「あの、どうして外に?」


校門を四人ででたあとに、僕はシドウさんに聞いてみた。カノジョは前を走ったまま答える。


「イカロスのやつらが来たのさ。先手を打たれる前に退散しようと思ってね」


「先手?」


「はっはっは。先ほど言ったかと思うが、我々がイカロスと戦っている、と言うのは決して比喩ではないぞ」


「えっと、どうしてイカロスってのは襲ってくるんですか?」


「ワタシたちがヤツらを嫌うように、ヤツらもワタシたちを嫌うのさ」


「じゃあ、いま向かっている場所ってのは」


「仲間との集合場所。君じゃない方のソーマは陽動に使わせてもらったよ」


すまんな。と謝られたものの、僕じゃない人のことなのだから気にしてすらいなかった。


「本当はワタシもこうやって、前線に出ていたいのだがね」


「馬鹿言わないでくれ。オマエを前線に出すほどオレらは愚かじゃない」


軽快に話すシドウさんに向けて、後ろを走っていたショーリが横槍をいれる。


「そうは言うがねショーリ。ワタシとて椅子に座って結果を待つのは心苦しいのだよ」


「ならばはやく後継のアヤメを育てあげろ」


前を走るカノジョはやれやれと肩を竦めておどける。なるほど、このショーリはすごく真面目なんだな。


「さて、ちょっと面倒な道からいくわよ」


バイパス通りではなく、木々に囲まれた小路に入る。総合病院側を通り行くようだ。

苫小牧は居住地が横に長い。南は海、北は活火山があるためだ。そのため、西から東へと伸びる2本の大通りが交通の生命線となっている。その一つがバイパス通りなのだ。つまり、バイパス通りは目立つと判断して他の道を選んだのかも知れない。


「ニシナ!」


小路を中程まで走った頃にシドウさんが声をあげた。僕らの先には人がうつ伏せに倒れている。あれは確かに仁科 葛(にしな かずら)の姿だ。

駆け寄って状態を起こすと、仁科の口元は布テープ覆われ、傷だらけの姿で気を失っていた。僕はその光景に思わず後ずさる。


「ショーリ!上だ!」


仁科の体を抱えていたカノジョが天を見上げながら叫ぶ。瞬間、ショーリの大きな体が動き、鈍い音が2つ鳴る。その音の方向に振り返ると、先ほどまではいなかった人の姿があった。彼らは低い呻き声をあげて、一人は腹部、もう一人は顔面をおさえてうずくまっている。


「ふん…他愛ない」


ショーリはつまらなそうに言って、二人の顔面を勢いよく踏みつけた。ゴリ。と背筋が凍るような生々しい音がなり、その二人は短い悲鳴をあげて完全に沈黙する。


「いくぞ、余裕はない。フジ、オマエがニシナを担げ」


既に仁科を担ごうとしているシドウさんにショーリが釘を指す。


「いや、大丈夫だ。ショーリ」


「…何故だ?」


「ニシナは本来ならばもっと北側、つまりは球技場あたりを担当していた。それをここまでヤツらは運んできて罠を仕掛けたんだ。この意味がわかるか?」


「…なるほど、それ以外は捕まえられなかった、と言うわけか」


「そう。少なくともここら一帯ではね。ニシナは能力面でも戦闘には向いていない。そういったヤツを釣ろうとしたのだと思う」


「では、オレらの行動が読まれているのか」


「それも薄いわね。ワタシたちを狙う罠ならこんな子供騙しは使わない。あくまでもコイツらの独断と考えるのが妥当だ」


でも、と付け加えてシドウは喋る。


「コイツらをどう処理しようと、ワタシたちがここを通ったことは相手には伝わるわ。集合後の行動にはある程度慎重にならざるを得ないな」


「わかった。いずれにせよオマエがニシナを持つ必要はない。フジにやらせろ」


「いやよ。これはワタシの責任、ワタシの重みよ。ワタシが担ぐ」


「…背負いすぎだよ、オマエは」


ガンとして譲らない態度に折れてか、ショーリは呟いていた。


「いつもすまない。フジ、蒼舞少年はショーリを前にして進め。ワタシもそれに続く」


「えっと、本当に大丈夫なんですか?」


思わず僕は確認する。シドウさんも女性としては背は高いが、ニシナも決して小柄ではない。


「なぁに、気にするな。それなりに鍛えてはいるからな」


本気か冗談かわからない笑みのまま、よいしょ、と仁科を担ぐ。それは女子の力とは思えないほど簡単にやっていた。


「さぁ、いこうか」


再び四人で走り出す。が、途端に僕は力が抜けたように地面に崩れ落ちる。

視界の先では三人が僕に向かって何かを言っているが、すべての感覚にモヤがかかっている気がしてで、なにも聞き取れなかった。

目の前が真っ黒になる。上下も左右もわからない。無重力の世界に迷い混み、僕は気を失った。



――ソシテ、カガミウツシノセカイヘ

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