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トマコマイReversible~The Game~  作者: 獄炎の魔術師
第一章 CROSS✝CHANNEL
3/9

姫夜と蒼舞 -Clan-

※ 本編の進行とは別で、登場人物のサイドストーリーとなっています。

 私には年齢が一つ上の兄がいる。兄といっても血の繋がりはないし、一つ屋根の下にも最近は住んでいない。世間から見ればただの幼なじみ。私たちから見れば兄と妹。そんな関係だ。


 兄とは物心がついたときから一緒にいる。私のもっとも古い記憶は、兄と一緒にゲームをしているときだ。しかし、我が家にファミコンはない。兄が私の家に持ち込んでいたのだ。兄の両親が家を留守にすることが多いため、兄はよく我が家に居候をしていた。しかし、母も父も兄にたいして付きっきりではいられないから、一人遊びの道具を持ってくることが多かったらしい。

 兄は右往左往して要領を得ない私の操作する配管工を、どうしたらうまくいくのか、その方法を懇切丁寧に教えてくれた。そのおかげか、ゲームにハマってしまった今では、私の方がアクションゲームはうまくなってしまった。兄は今でもその事を悔しがっている。なんとも子供だ。

 幼少のころからそんなものだから、私の趣味は男のソレ、というか兄の影響を強く受けている。幼稚園ではおままごとよりも砂遊びを好み、小学校では少年漫画に憧れた。ゲームセンターであそび、中古本やで立ち読みをする。兄とそんな生活をしたものだから、同学年では男として扱われたりすることも多い。たしかに、胸は少ないからそうは見えるかもしれないが…。問題は、女子にもおかしな目で見られることだ。


 閑話休題


 中学校のとき、告白をされたことがある。こんな私でもだ。相手はクラスの男の子。少しなよなよしててもじもじしてた。いつもクラスの輪のなかで目立たない人で、本当に特徴がない。少し、兄ににている気がした。兄は本当に取り柄の無い人だ。強いて何かを挙げるなら、身内には非常に甘くて優しいことくらいか。だけど、それは人に自慢するものではないと思う。

 兄は決して強くない。成績も中の下、身長も人並み、顔もまぁまぁ。筋肉は貧弱だしスポーツもダメダメ。かと言って文化系というわけではなく、本当に、全て普通な人だ。普通な人だけど、家族に対してはすごい行動力を見せる。小学校の頃、私がインフルエンザにかかって部屋で寝込んでいた時、兄は本当に一日中私の部屋で看病をしてくれた。母や父が病気が伝染るからと説得しても、兄はこう言い返して動かなかった。


 「父さんも母さんも、みんな伝染ったら大変なんだから、だったら僕が看病する」


 いつも居候させてもらっていることへの恩返しだったのか、譲らない兄に対して結局両親が折れた。普段のぼんやりとした兄からは想像もつかないが、更に驚いたのは、その看病を本当にしっかりとやり遂げてしまったことだ。いつもは容量が悪い兄なのに、それもまだまだ子供の時に。何が兄をそうさせたのか、その時の私にはわからなかった。でも、ずっと一緒にいると感じることがある。それは、兄、涼ヶ原 蒼舞にとって、家族と友達、その二つはかけがえのないもので、何かあった時、絶対に優先して全力で助けようとする。ということだ。

 そのせいか、兄はあまりコミュニティを作りたがらない。友達も多い方ではないし、最近だと不二くんといつも一緒にいるくらい。高校に入る前までは、ほとんど私と一緒にいた。中学二年のとき、わずかな反抗期もあって、兄にその事を聞いてみたら、兄は困ったような笑ったような顔をして言った。


「だって、僕のせいで姫夜は話しにくいだろ?女子と」


 どうやら、私の男趣味に責任を感じてたらしい。バカだな。本当にバカ。私、学校にちゃんと友達いるよ?楽しくやってるからさ。だから、そんなに頑張らないでよ。お父さんやお母さんに恩返ししたいなら、また家に来てよ。私だって嫌だなんて思ってないんだから。本当に、変なところで気を回し過ぎちゃうんだから。バカ。

 兄は本当に身内に甘くて優しい。だからこそ、私達家族は、兄にもっと甘えられたい。色々と頼って欲しい。


 結局、告白の件は丁重にお断りしたので、私は未だにお付き合いなんてしたことがない。みぃちゃんにその話をしたら、ニヤニヤしながら兄が好きだからだと言う。ごめんねみぃちゃん。そういうことではないんだよ。私と兄はあくまでも兄妹だから、そんな気はさらさらないの。

 ただ、言うなれば、私は今の環境が気に入っているのかもしれない。両親がいて、兄がいて、みぃちゃんがいて、不二くんがいて。よく遊びにいって。楽しい。他に時間をさくのが勿体無いくらい、今が好きなのかもしれない。やんわりと否定すると、みぃちゃんはふくれてしまった。自分の気持に素直になれ。とか、気づいてないだけだ。と怒られた。私はその説教もやんわりとかわしたものの、なんとなく、自分の気持ちが相手に伝わっているか確かめたくなって、次の日の朝にちょっとだけ試してみることにした。


「早く起きなってば!」

「おはよう。でも今日は寒いから体を温めるためにもう一時間寝るね」

「まったく!バカ!あほ!ノロマ!」

「ふふん、言葉攻めなんて効かないね!」

「大好きだぞ!お兄ちゃん」

「うん。僕もだー」

「そう、ならはやく起きなさい!」


ほらね、私も兄もまったく動じない。お互いわかりあえてるんだよ。へへん。


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