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完璧後輩  作者: 蒼咲 秀
6/9

6P;会いたい

あまりにも久々過ぎて、駿の名前を忘れてしまいました……。

しかし重いですね!!

読んで下さった方は気分が落ちますよね。

すみません。

そして過去最高に長いです。

よくわからない所で2Pに入ってます。

本当に読みにくくてすみません。

それでもこうして読んで下さる方に大感謝です!!!

6月末。

今年は夏が駆け足できたため、一足早く私達の学校は夏セーラーになった。

隣を歩いている弟は暑苦しい学ランを、なるべく涼しくなるよう着崩している。


今日、叔母さんが帰ってくる。

家はすっかり綺麗になって、新しい住人をいつでも迎え入れる体制に。

部屋が綺麗だ。

それだけで鼓動が速くなる。


背中をポンと押される。


「学校行くよ?」

頷いて千歳の後ろに着いて行く。

家を出るまで気が重い。家を出たら足が動く。

頑張れ、あたし。







千歳と別れて教室に向かっていると、校舎の窓から男の子がこちらに向かって大きく手を振っている。

「千尋先ぱぁい!」

周りの人がチラチラ私を見ている。

私は黙って知らんぷり。

でも体は正直で。

顔は赤くなって、異常に早足になる。

早足から、最後は本気で全力疾走をして教室に行く。

ドアを開けて、先程の男の子の名前を呼ぶ。

「っ駿君!!」名前を呼ばれた男の子は、嬉しそうに私の元に走って来る。

「千尋先輩、おはようございます。」

「自分の学校にちゃんと…」

「大丈夫です!僕、足には自信あるので!!」

元気よく自信たっぷり言う彼に、ため息をつきながらも自然に笑顔が零れる。

息を整え、席に着くと駿君が顔をひょいと覗かせる。

「どうしたの?」

「先輩…今日元気ないですね。」

……え?

「あたしそんな分かりやすい?」

「少なくとも僕には。」

うーん……。どう意味だろ。

「毎日先輩を見てる僕には分かるって言う事です。」

「あっ…はい。」

心を見透かされた為か、あるいはいきなりの告白にか急に顔が熱くなる。


「今日は大切な人が家に来るんだ。」

「……叔母さん?」

この子鋭いな!

「…もし、」

「え???」

「もし何かあったらメール下さい。アドレス入れたので。」

目頭が熱くなる。もしかしたらその言葉を待っていたのかもしれない。


ん?

今何て!?


慌てて携帯を開く。

あ行から探して行くと、

『しゅん』

で新しく入っていたアドレス。

誕生日や住所まで丁寧に書かれた個人情報と共に。


「待ってますから。」

その言葉を言うと、彼は教室を出て行った。



チャイムが鳴ったのは、彼が出て行った2分後だった。







生徒の別れの挨拶が飛び交う時、私は1人で屋上にいた。

千歳と待ち合わせの時間まで、あと30分ある。

「あと少し……。」

今日程1日が短く感じられる日はなかった。

目を瞑ると、叔父さんと叔母さんが思い浮かぶ。

叔父さんは、最後に見たときの姿で。

叔母さんは、自分を見た時の驚いた顔で。

叔母さん達をお母さんと呼べなくなったのは何時ぐらいだっただろう。

小さい頃は平気だった事が、ある日ぱったり出来なくなった。

初めて『叔母さん』と呼んだ時の驚いた顔は、あの時と同じ顔だった。

それでも彼女は、にっこり笑いいつもと同じように接した。

千歳も不思議に思い、その内彼も同じように呼んだ。

叔父さんは嫌がったが、叔母さんはただ笑うだけだった。

思えば、彼女が怒った所を見た事がない。

泣いているのは嫌という程見た。

大抵は夜だが、一度だけ忘れ物してお昼学校を抜けて帰ると、叔母さんが私達姉弟の部屋の前で泣いていた事があった。

その姿は、何とも切なく声を掛けられず私は引き返す事しか出来なかった。



「あれからどのくらい経ったのかな。」

独り言を呟くと同時に、千歳から電話がくる。

下を見ると、校門に人だかり。

あれかな。


走って校門に行くと、案の定ぶすっとした顔で千歳が突っ立っていた。

周りには、たくさんの女の子の山。


「遅い!!」


お怒りの千歳。

平謝りの私。

2人で急いで学校を出る。

後ろの歓声が、千歳の苦労を物語っていた。






病室のドアの所に立つと、足がすくむ。

「チロ?」

「……ん、大丈夫。」

私はあなたのお姉ちゃんだからね。


戸を開けると、叔母さんは医者と笑いながら話をしていた。

少ない荷物は、小さなボストンバックにまとめて、下にちょこんと置いてある。


「叔母さん、遅くなってごめんね。こんにちは、先生」

礼儀正しく挨拶をする。

足がガクガクしてる気がする。「こんにちは、待ってたよ。」

先生がニッコリ笑う。

千歳も挨拶をして話しかけながら、叔母さんの荷物をひょいと持ち、叔母さんを立たせる。

「下にタクシー待たせてるから行こうか。」

叔母さんは黙ってついてくる。


ねぇ、叔母さん。

あなたには私達がどう映ってる?












先生との別れは、やけにあっさりとしたものだった。

通院するから最後という訳ではないが、やはり想像と違った為少し拍子抜けをしてしまったくらいだ。タクシーの中では、千歳が道案内をする以外誰も口を開かなかった。

退院したというのに、叔母さんはニコリともしない。

それが私を不安にさせる一方だった。




「叔母さん、ここが今日から住む家だよ。」

千歳が叔母さんに説明をする。


叔母さんは、見渡しながら恐る恐る家に入った。



夜は実に微妙だった。

みんな遠慮しながら話すものだから、会話が続かない。

かといってテレビを付けるほど沈黙が長い訳でもない。

叔母さんは、質問をすれば返してはくれるが自分からは決してしなかった。



叔母さんがお風呂に入ってる間、千歳が背中をポンと叩き私を部屋に入れた。

「寝なよ。後は俺一人で大丈夫だし。」

おやすみ、と言ってドアを閉められる。

その後すぐに、ドアの向こう側で千歳と叔母さんが談笑をしているのが聞こえた。



なんだか無性に切なくなる。

音を立ててはいけない気がした。

静かにベッドに入っても眠れない。

やがて叔母さんと千歳がそれぞれの部屋に入った瞬間、私は携帯を持って走って家を出た。

生暖かい風しか吹かない外は、静まり返った闇以外特にいつもと変わらない夜だった。

変わらない筈なのに、私にはとてつもなく寂しく感じ、無意識に携帯のアドレスを開く。

時間はとっくに夜と呼べる時間帯を過ぎている。

それでもかけた相手は待っていてくれているような気がした。相手は呼び出し音が鳴ったと同時くらいに出る。

それだけで涙が出そうになる。

「千尋先輩?」

声を聞いてそこに崩れ落ちた。

「先輩?どうしたんですか?俺に電話かけたって事は何かあったんですか?」

ダメだ。

涙がとまらない。

「先輩今どこですか?」

「…家の前。」

「え!?ちょっ、待って!そこにいて下さいね!」

慌てた彼は、そう言い残して電話を切る。

待ってよ。

私を一人にしないで。

さっきとはまた別の涙が出そうになった瞬間、






「っ千尋先輩!!」


少し先の曲がり角から、彼が走ってくる。

暗くても分かるよ。

理由なんて一つしかない。




私は立ち上がって、彼の元まで走る。

彼が手を広げた瞬間に飛び込んだ。


「駿君!」

涙が溢れる。

会いたかった。

あなたに。


あなた以外いらない。


今気付いたの。













あなたが必要だって事が。













ここまで読んで下さってありがとうございました。

頑張って次は早めに更新したいです……。



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